「アフター・ザ・ハント」映画感想。倫理と愛が試されるとき。
こんにちは、ららです。
Amazon プライムのオリジナル配信映画の「アフター・ザ・ハント」を観ました。
心理スリラーということで、あの美しい微笑みの代名詞ジュリア・ロバーツが、ほとんど笑顔を見せず、シリアスな表情を貫くという意欲作。
「笑わないジュリア・ロバーツってどうなの?」と不安に思いながら観はじめましたが・・
いざ観てみると、思っていたより良作でした!
欲望と倫理観がせめぎ合う緊迫感。
人間の内なる戦いが静かに、でも深く描かれており、目が離せませんでした。
※これより先はネタバレを含みます。未見のかた、ご注意ください。
アフター・ザ・ハント
監督:ルカ・グァダニーノ
出演:ジュリア・ロバーツ、アヨ・エデビリ、アンドリュー・ガーフィールド
【あらすじ】
「君の名前で僕を呼んで」「チャレンジャーズ」のルカ・グァダニーノ監督が、主演にジュリア・ロバーツを迎えて描いた心理スリラー。
アルマは名門大学の哲学教授として多忙な日々を送りながら、精神科医の夫フレデリックと2人で暮らしている。ある日、アルマの同僚で友人でもある助教授ハンクが、アルマを慕う優秀な学生マギーから告発される。助けを求めるマギーと無実を訴えるハンクとの間で板挟みになるアルマだったが、やがてアルマ自身の過去の暗い秘密が明るみに出そうになり、人生とキャリアの岐路に立たされる。
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・倫理と欲望のはざまで ー人間として大切なことを教えてくれる作品ー
ジュリア・ロバーツ演じるアルマは、終身在職権を切欲するイェール大学の哲学教授。
彼女の中にある「権力への欲望」と、「倫理観」という専門家としての信念が激しく対立します。
正義と信頼、過去と未来が複雑に絡み合い、観る者の心も試されます。
当初は、「この物語、倫理を踏みにじってでも、権力(への欲望)が上位に立つ物語なのか?」と思って観ていたのですが・・・
ラストで明かされるのは、アルマ自身の過去の過ちと、教え子から仕掛けられた破滅への罠。
全てを失ったどん底の中で、彼女を支えたのは「倫理観」そのものでした。
人間は欲望だけでは決して勝てない。
本当に人を救うのは、人としての道徳であり、良心である。
そんなメッセージが静かに、けれども力強く胸に響きました。
・微笑まないジュリア・ロバーツー女優としての新境地。
いつも大きく笑い、明るさと包容力を届けてくれるジュリア・ロバーツ。
そんな彼女が本作では、始終、苦悩と緊張に満ちた表情を浮かべ、冷たささえ感じる人物を演じます。
最初は違和感を抱いたものの、物語が進むにつれて、その演技に引き込まれていきました。
仮面のような表情、肉体の苦しみ・・ それらを通して彼女は内なる葛藤を体現していました。
笑わないジュリア・ロバーツ、こんなにも素晴らしいなんて。
まさに女優としての新境地を感じさせる一作でした。
・愛とは、相手を裁かないこと。
終盤、アルマの若き日の過ちが明かされます。
そして彼女は、自分を深く傷つけたその相手を、今でも「愛している」と夫に告白します。
衝撃的な告白に対して、夫は彼女の全て受け止めて、
「君を愛している」と伝えます。
彼は、過去の彼女を責めず、全身全霊で味方であり続けるのです。
このシーンには胸が締めつけられました。
過去の罪も苦しみも全て引き受け、それを超えて相手を愛し抜くということ。
愛とは、相手を決して裁かないことだと気づかされました。
愛、愛、と気軽に口にしてしまいがちな時代だからこそ、
本作が描く愛の深さは、私たちの心に残るのではないでしょうか。
・終わりに
アフター・ザ・ハントは倫理とは何か、愛とは何かを問い直させてくれる映画でした。
人間の本質に深く切り込む、まさに心をえぐる心理戦。
「愛ってなんだろう」と思うときに、そっと観てほしい一作です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
今日も、心穏やかな一日となりますように。
願いを込めて。



