静かな奇跡と切ない別れ。「ツナグ」を通して戦争と今を想う。
こんばんはー
トランプ大統領(自称アメリカ国王)が日米安保条約への不満を訴えています。
こういう話が出るのは良い機会のような気がします。凄いショック療法だとは思いますが、今までが間違っていた(歪んでいた)と言う事実は理解できるような気がします。
これを機に、日本は、誰かの命を犠牲にして平和を維持するのをやめて、自分の身は自分で守るという自立の方向性にシフトしていったほうが良いのではないでしょうか。そして、高い駐在費を払っている米軍にも出ていってもらう。それならトランプ国王も納得するのではないでしょうか。(逆に困りそうな気もしますが)
そして、それならば、先の戦争で死んでいった日本の軍人も、何百万もの民間人も、安らかな気持ちで見守ってくれるのではないかと思います。
さて、死んでいった者たちともう一度だけ会えるとしたならば・・
彼らは何を言うでしょう。私たちをどこへ導くでしょうか。
今日はそんな不思議な小説をご紹介したいと思います。
この本を読んでふと考えたのは、戦争で亡くなった人たちとも会えたら・・ということでした。
ツナグ(辻村深月)
【あらすじ】
死者は、残された生者のためにいるのだ。 一度だけ、逝った人との再会を叶えてくれるとしたら、何を伝えますか――。死者と生者の邂逅がもたらす奇跡。心に染み入る感動の連作長編小説。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【感想】
アイドルの心得、長男の心得、親友の心得、待ち人の心得、死者の心得、という5つのオムニバス。どれもとても面白かった。
死者との関係性というのは色々あるものだな、と感心しました。
アイドルの死。肉親の死。親友の死。失踪者の恋人の死。それぞれの関係性と死にまつわる逸話が生々しくて。そして、死者ともう一度話がもしできるならばという仮定が面白くて、最後まで飽きずに読んでしまいます。
死者と生者をつなぐ不思議な少年、使者(ツナグ)によって、残されたものが死者と会うたった一度の機会を与えられるのですが、不思議なもので、それが、これほど生きているものの「ためになる」とは思いませんでした。
あらすじのコピーの通りです。「死者は生者のためにいるのだ」。
まさに。まさに。死んでるものとの邂逅がなんという救いとなることか。
死者とはもう会えない。霊ならあり得ても、肉を持った死者との邂逅なんて、考えもしなかったのでしょう。もし会えたら、こんなことが起こるのか。こんなこともできるのか。思いもしなかった作者の発想の豊かさに舌を巻きました。作家というのはなんというアイデアマンなのでしょうかね。
【印象深かった点】
生者は死者によって救われる。
自分の死(自殺)を思いとどまったり、今までの人生を肯定できたり、未来を与えられたりする者たちがいる一方で、「親友の心得」では、死者からの静かな復讐を受けたりもする。それも少し恐ろしいが、こういうこともあるかもしれないと思わされてしまいました。
それでも、死者との邂逅によって、生きている者たちの未来が塗り変えられていくのはどの物語も同じです。そして、読んでいると、自然と胸が熱くなり、涙が溢れてくる。死者との切ない二度目の別れが心に沁みます。前とは違う未来をもたらす二度目の別れだからこそ、尚更切なく感じます。本当によくできた面白い物語だと思いました。
【おすすめポイント】
私が死者と会えるとしたならば誰に会うだろうか。
そうして私の未来はどう変わるのだろうか、などということを考えてみました。皆さんなら誰と逢いますか?そしてどのように未来を変えたいでしょうか。死者は意外とスーパーマンですよ。皆さんの未来を変えてくれる。本当に、会えるものならば会ってみたいですね?
身近な死者のことを想像してはまた切なさを感じてしまう。作者の辻村深月さん、本当に上手いと思います。誰が読んでも、引き込まれて心に染みる物語だと思いますので、良かったらぜひ何かしみじみと感動したい時に読んでみていただきたいと思います。
読書感想文はここまでです。今日も読んでいただきどうもありがとうございます。
【最後に】
冒頭の話に戻ります。
もしも戦争でお亡くなりになられた方々に会えるとしたならば、どうしますかね・・ もう二度と戦争をしない国に作り変えてくれというでしょうか。いえ、その願いはもう叶えました。日本はもう二度と戦争しない反戦国家になりました。しかしそれは新しい犠牲の上に成り立っており、構造は変わらず、そして歪みが生じて破綻しかけています。
彼らは、なんというでしょうね。何のために命をかけて護ったのだったか? 今こそ新しい国を創ろうと、不甲斐ない私たちにハッパをかけてくれるでしょうか。朝ドラではありませんが、「愛と勇気だけが友達さ」なんて教えてくれるかもしれませんね。
さて、今日も読んでいただきどうもありがとうございます。
素敵な時間を過ごされますよう。
願いを込めて。
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