女の幸せと心の闇「鍵のない夢を見る」を読んで。

 
 こんにちは!
 
 旭川の女子高生殺人事件、当時19歳の被告に、懲役23年の判決が出たそうです。裁判長は「命や人格を全く尊重しない残酷な犯行だ」と述べ、くむべき点が何もないと告げたそうです。
 私もその通りだと思います。23年でもまだ軽いのではないかと思いました。
 発端はSNSのトラブルだそうですが、なぜこんなことが起きてしまったのか。女の心の闇は深い、恐ろしい、と改めて思わされました。

 こうした女性の心の奥に潜む闇は、現実だけでなく小説にも描かれています。今日はそんな女性の心理を鋭く描いた短編集を読んだので紹介します。
 




 「鍵のない夢を見る」(辻村深月)


 【あらすじ】
 直木賞受賞! 私たちの心の奥底を静かに覗く傑作集
 どこにでもある町に住む、盗癖のあるよそ者の女、婚期を逃した女の焦り、育児に悩む若い母親……彼女たちの疲れた心を待つ落とし穴。(Amazonより)

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 どこにでもいそうな5人の女性たちが、日常の中でふとしたことで転落していく、そんな短編集です。


 辻村深月さんといえば、有名な作家さんですが、私は作品を読むのが初めてでした。5話の短編、どれも面白かった。いや、面白いというよりは上手いなぁ、と感心してしまいました。

 作者は、物語を、どこにでもある普通のことのように書き出します。ですが、読んでいる側から胸がザワザワして、女のどろどろした心理描写にいつの間にか心を奪われ、彼女らが打ちのめされる場面では、こちらも一緒にノックアウトされてしまいました。

 ありきたりなはずの、普通の主人公の普通のお話は、読了後にじわじわと恐ろしさが込み上げて来るという静かな余韻を残します。

 最近色々な作家の物語を読みますが、頭一つ抜きん出ている、と感じてしまったのは気のせいでしょうか。特に印象深かったのは、「芹葉大学の夢と殺人」というダメ男と別れられない女性教師の物語です。

 夢を追う男と現実を受け入れ夢を諦める女主人公。自分では成長したと思っていましたが、優越感を感じていたはずの元恋人(いつまでも夢を捨てないー)に、実は自分の方が負けていたことを気付かされる。そんな残酷な現実を突きつけられる物語でした。打ちのめされる女性は、最後に男に復讐をして物語は静かに終わります。

 巻末で林真理子と対談していましたが、それも印象的でした。林真理子が作家デビューした時の、女性の心理をあからさまに書き出し、深くえぐる作風で話題になったことを思い出します。あの当時の林真理子の怪物感と、類似点を多々感じさせられてしまいました。


 女の心の闇は深い。それをぬけぬけとしれっと書き出す才能が空恐ろしい。

 読了後はどれもゾッとする物語ばかりです。

 普通の「どこにでも居るあなた」の仮面をかぶっているから尚更、怖い。


 しばらくこの作家さんを追いかけてみたい。他の作品を読みたいな、と思わされました。よほどインパクトがあったようですね・・笑


 女性の怖さを垣間見たい時にはいいのではないでしょうか。

 綺麗事では終わらない深い心理描写を楽しんでいただければと思います。



 今日紹介した小説の登場人物の闇は、あくまでも日常の中で生まれるもの。

 しかし、旭川女子高生殺人事件の話はそれとは比べ物にならないほど救いようがない闇でした。死刑にならなかったことを感謝し、残りの人生を自己反省に費やしていただきたいと思います。



 今日も最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。

 素敵な時間を過ごせますよう。

 願いを込めて。







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