「旅をする木」を読んで、偶然性という神について思う。

 

 こんにちはー

 神奈川相模原市の登山道で女性が熊に襲われ、手に怪我をしたというニュースを聞いて、また登山の恐ろしさを再確認している著者です。お元気でお過ごしでしょうか。


 アレですね、最近は、熊なんてどうせ出ないよー的なマインドになりつつありましたが、やっぱり怖いですね。どんな人間くさい里山であろうとも、出る時は出るんだな、と熊スプレーを持ち歩こうと決意した次第です。


 さて、今日は星野道夫さんの「旅をする木」という本を読みました。




 随分前に買っていたのですが、前書きを読んで読むのをやめていた一冊です。

 かなりのベストセラーらしいのですが、なぜ読むのをやめたのか。誰しもが共感している本ですよね・・

 いやぁ、あまりにも世界が違いすぎて、自分の生きている世界が矮小に感じられてしまいました。それくらいプロローグから壮大なんですよね・・

 

 しかし、今日は、AIのチャッピーからこの本を勧められたので、意を決して読みました!

 感想は、面白かったですが、やはり世界が違いすぎました!


 壮大すぎるアラスカの自然、その印象的な単語を書き出してみます。

 ・野生動物 カリブー ハクトウワシ、ヒグマ、オオカミ。

 ・海洋生物 ザトウクジラ、セミクジラ、ゴマフアザラシ、トド、サケ、オヒョウ。

 ・植物 ワスレナグサ、クランベリーとブルーベリー、ワタスゲの海。

 ・人々 エスキモー、インディアン

 ・土地 東南アラスカの海、ツンドラの荒地、ジュノーやシトカの街。


 これらの自然にまつわる生々しいエピソードが、静かで力強い文章と共に綴られます。アラスカの風景や動物たちの姿が目に浮かぶように・・

 こんなことを若い頃から夢見て、それを実現させて、一人で体験した青年がいるとは驚きです。あまりに世界が違いすぎて、これはもう人生何回転目の人の話だな・・とね。途中から本気で、次元が違う世界の話かと思いましたよ。

 つまり、何度も転生を繰り返して、人間が成熟し尽くしている人のみが理解できる世界観というのかね・・

 人間に生まれて1回か2回目であろう私はね、人の手が入り尽くしている丹沢だけでも怖いんです。いつか大雪山で夜を明かした時に自然に飲み込まれそうに感じたほどです。それがアラスカとは・・


 しかしね、中盤から面白くなってくるんです。特に涙したエピソードが、信州の山で友人が亡くなってしまう話のくだりです。友人の持ち物は一つ残らず壊れていたのに(死の壮絶さを連想します)主人公が貸したカメラだけは無事だった。

 「壊さないでくれよ」と冗談めかして言った、その一つだけが壊れずに残ったというのです。

 主人公は友人の死をきっかけにアラスカの地と本格的に取り組むことになるのですが、こういった「偶然性」がこの本には溢れている。

 たとえば、こんなことを言っています。

 「僕は狩猟民の心とは一体何なのだろうかと、ずっと考え続けていた。(中略)自然保護とか動物愛護という言葉には何も魅かれたことはなかったが、狩猟民族の持つ自然との関わりの中には、ひとつの大切な答えがあるような気がしていた」

 主人公は狩猟民族たちが殺す鯨に対する神聖な気持ちに打たれたというのです。ただの食料調達ではなくて、自然の中の営みとして深い意味を持っているのが伝わってくる・・

 そして、そこには「偶然性」があると。

 「狩猟生活が内包する偶然性が人間に培うある種の精神世界がある。それは、人間の生かされているという想いである」

 つまり、狩猟が成功するか否かは限りなく偶然性が支配していて、人間は自然の中で生きる存在で、全てが計画通りにはいかない。その偶然性の中で人間は生かされているという事実。

 偶然性は神と置き換えてもいいかも知れないと思いましたね・・だから神聖な気持ちになり、儀式を伴った漁をしているという・・


 人間が生かされているのも偶然である。

 主人公が「旅をする木」となったのも、偶然である。


 自然はなるようにしかならない。そんなことがこの本のベースにあり、そのレットイットビー感が読んでいて心穏やかになるというのか。なおさら壮大なものを感じるというのか。


 自然と生きることについて、深く考えさせられる本でしたね。


 しかしね、やっぱり読んでいて怖い気持ちはあるんですよね。深い自然に近づきすぎていると感じるいうのか。大丈夫なんかな、と。恐怖のようなものを感じるのです。

 そして、読後。まるでその気持ちを裏打ちするかのように、文末の解説で池澤夏樹が教えてくれます。「今年の夏が来ると、星野道夫が死んで三年の歳月が過ぎたことになる」。


 えー?! 死んだの? とびっくりしましたよ。前情報なしで読んでいたのでね・・

 作者の星野道夫氏は、ヒグマに襲われて43歳の若さでお亡くなりになったそうです。1996年8月8日にロシアのカムチャッカ半島湖畔で。

 

 偶然にアラスカと縁を持ち、偶然に生かされて来た著者が、偶然にヒグマに襲われてお亡くなりになった。


 いやぁ、何とも言えないですね・・


 普通の人々よりも深い体験をしたものは、その代償に命を差し出さなければいけないのか。


 矮小な私なんぞはさぞや長生きするんでしょうね・・

 なんて、この本を読むまで早死にする気満々でしたが、偉業も偉大な体験もできていなければ、深い自然を怖いとか言っている私に命を奪うものが訪れるはずもなく・・

 ああ、そうか、だから登山にせっせと行って、熊に襲われとということか・・

 って、おい!



 それにしてもアレですね、こんなに美しい大自然(しかも気候変動や自然環境の変化で失いつつあるもの)を体験して、撮り続けて、生き証人となり、本にまで残された星野道夫さん。

 多くの人に感動を伝えた著者に敬意が溢れます。

 人生何回転目か知りませんが、本当に素晴らしい生き方だと思います。


 私も来世はこのような、自然と寄り添うような生き方をしたいですね・・

 たとえ神に命を早く召されてもね。



 ではでは、今日も最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。

 素敵な時間を過ごされますよう。

 願いを込めて。


 




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