ビブラムファイブフィンガーズのお仲間ができました。〜裏岩手山プチ縦走〜
山仲間のお二人がビブラムファイブフィンガーズを買ったというので、そのデビュー戦に行ってきた。
(ビブラムファイブフィンガーズとは=人間が失いつつある機能を回復させることを目標に作られたビブラム社の五本指の靴。ランニングシューズにも使われる。登山家の間で有名なビブラム社の靴底・ビブラムソールを使用していることが特徴。代理店の公式ホームページはこちら)
ところが、この日の天気がイマイチだった。デビュー戦を華々しく飾るどころか、第3リフトに乗る頃には辺りは雲の中、当然ながら登山道の縦走コースも何の展望ない。これでは五里霧中である。将来、もしくは人生の展望がイマイチのような暗示にふいに襲われて、青くなり、景色が悪いなら心で攻めよう、そうだ、我々は(人生の)修行僧ではないか。などと自己暗示をかけながら黙々と道をゆくものの、それでもやはり、もう少し先まで行けば岩手山だなぁ、天気のいい日にまた来て岩手山まで行きたいものだな、なんて妙に欲が出るものだから困った。(どこが修行僧だか)
「今日はトレーニングだべ」
「また来なきゃなぁ」
お二人は私とは違い、まるで修行僧のような前向きな発言だったので助かった。
でということで、今日は黒倉山までの裏岩手山縦走トレッキングコースの写真をお届けします。
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網張温泉(登山口)から網張リフトを3基乗り継いで、一気に標高1300付近まで登る。
まずは、網張温泉元湯の犬倉山(1408m)を目指す。そこから姥倉山(1517m)〜黒倉山(1570m)を縦走する予定だ。
リフト登る前に足の集合写真。ファイブフィンガーズズプラスワンで気合いを入れる。
(ちなみに私たちが履いているのは、KSO EVO と呼ばれるタイプ)
リフト券。ネットでH.I.Sのクーポンを入手すると往復1600円が1200円になる。往復リフト券を見せると網張温泉も100円オフで入れる。
この裏岩手山の山に登るには、昭和初期までは網張温泉から元湯(犬倉山爆裂火口)の犬倉山までの道と、網張温泉から黒倉山のすぐ南東にある「切通し」に至るコースしかなかったらしい。
昭和22年〜裏岩手山岳会が、昭和25年〜岩手県が、縦走登山道の本格的な整備を始めた。まさに道を作ったのだ。
で、今ではリフトまで。便利になったものである。
1基目のリフトを乗り終わると、ススキの茂る草原に出る。スキー用だから道は下り坂。少し降りると、すぐに2基目のリフトが現れる。
3基目からは雲の中に入った。この3機目のリフトが高いところをいくものだからめちゃくちゃ怖い。地面がはるか下である。特に下りの、飛び出す時が怖い。行きにすれ違った(今から降るところの)子供が絶叫していた。絶叫マシン並みである。子供を見ているときは、なんだ、大げさだなぁ、と思っていたが、自分が降りるときはやはり絶叫してしまった。スキーだと白い雪だからいいと思うんだが・・草原は怖いなぁ。。(ただの言い訳・・)
リフトも終わり、まずは裏岩手縦走路とぶつかる犬倉分岐へ。
本来なら展望台から網張元湯の火山口の煙が見えるはずだが、・・ただただ真っ白。
犬倉分岐を岩手山方面の左へ。前日の雨で土が滑っていて、ファイブフィンガーズ2名ほど滑って転んだ。
(これも言い訳だが)昔からあった道ではなく大急ぎで山を削って作った道のせいか、いつもの山の登山道とはかなり違う。人一人分の谷間に、えぐれた赤土がむき出しになり、ぬめっている。(あとで写真あり)
犬倉山山頂。15分ほど歩くと展望の良いところ(絶景ポイントだそう)に出るが、今日は(こんな天気なので)いいか、とすっ飛ばし、そそくさと記念撮影をして、姥倉分岐に向かう。
アオモリトドマツの森を抜けて、姥倉分岐へ。この辺りも展望全くなし、「つまんねー(山だな)」を連発する。さすがの修行僧もテンション落ち始めた模様。
展望がない分、楽しめたのは足元の景色。青いミヤマリンドウから紫のガンジュアザミ、白いシシウドにウメバチソウ、黄色の・・なんだろう、可愛いらしい高山植物に苔にトンボ。
特にトンボがすごい。うじゃうじゃいる。指の上にとまってくる。縦走コースはうるさいくらいにトンボだらけだった。(秋やね・・)
お花畑、とはいかないが、可愛い花に見守られて進む御一行。
姥倉分岐。西に行けばもう少しで姥倉山山頂だが、分岐に出て荒涼とした稜線に出た途端、強風が襲ってきた。本当なら、この辺りから黒倉山に向かう稜線は最高の眺めのはず。うひょーと叫びながら歩いていたはず。が、現在は霧と強風に襲われて立ちすくむのみ。岩手山も見えない。早池峰も八幡平も岩木山も鳥海山も何も見えない。欠片も見えない。雨まで降り出して、ヤッケを着込む。時間も行動予定の目標タイムから1時間半遅れていたし、絶景ポイントどころか、目的の姥倉山まではしょって、黒倉山へと向かう。
ケルン(石積)がいっぱい。誰かを悼んでいるのか・・石好きとはいえ、こんな時なので不吉な感じに見えてくる。
五里霧中? 荒涼とした道を進むファイブフィンガーズ。天気が良ければ最高の眺めだったはずだが・・ 黙々と行く姿はやはり修行僧のよう。
最後の期待は黒倉山。大倉分岐ぐらいだったか、大倉山から戻ってきた登山者たちが、大倉山は雲の上に出て晴れてたとか何とか言っていた。
が、期待も虚しく、やはり展望はイマイチのまま。
黒倉山山頂付近では、10人近い作業員さんが昼ご飯中。この辺りは地盤変動が続いていて、亀裂が確認されたり、活発な噴火活動も続いているそうだ。現在はだいぶ落ち着いているようだが、気象台の火口監視カメラを置いて、土地形質の変更などを調べるとのこと。それにより、土砂の流出を防ぎ、私たち登山者や住民を守ることが目的らしい。監視カメラを設置しに全国を回っているという方のお話を聞けて、ちょっと面白かった。そんな仕事してみたいものだ全国の山に行けるんだなぁ。
重い機材(監視カメラ)の入っていた什器(すでに出した後)。監視カメラ施設の設置中。
あまり風が強いので、少し降りてから休むことに。
またしてもケルンを見ながら霧の中を進む御一行。この辺りになると、もう誰も言い訳も愚痴も言わなくなる。苦行?も慣れて、精神的なある限界ラインを越えた、という感じ。プチハイテンション。なかなか楽しくなってくるから不思議だ。風が強いと手を広げて鳥のようなポーズになる(飛べそう)ものあり。また前向き発言の王者になるものあり。
「今日はトレーニングだべ」
「また来なきゃなぁ」
期待していた景色は全く拝めなかったが、なんだかんだで10キロ越えの、雲の上の空中散歩を楽しめた。ファイブフィンガーズの仲間ができた登山となったのも楽しかった。いいトレーニングになった。網張温泉も最高だった。人生はこんな日もあるよね、と納得して帰ってきた。
※姥倉山〜黒倉山登山道は高温注意箇所です。ところにより立ち入り禁止箇所がありますのでご注意ください。
最後に、肝心なファイブフィンガーズの履き心地は・・ 聞いてみるとなかなか良かったようで。
良かった。普通の登山靴のように硬くないので足が痛まないし(サイズは慎重に選ぶ必要があるが・・)、疲れない。
やはりあの裸足で土を踏んでいるような気持ち良さ、地面とフィットする感覚が良いのだと思う。長い年月をかけて、細い靴、もしくは硬い靴に閉じ込められて変形したり傷ついたりした足も、徐々に治っていくと思う。私の外反母趾も全く痛まなくった。ファイブフィンガーズを履いてからというもの、自分がいかに(痛くて、もしくは歩き方が悪くて)指を使わずに、歩いていたかがよくわかった。今は5本の指でぎゅっと大地を確認しながら歩くのが最高の気分だ。
これ靴の話だが、意外とそれだけではないかもしれない。山の大地からエネルギーをいただいて、人間が新しい文明により忘れかけていた、人間本来の機能とやらを、もっとたくさん思い出すといいな、と思ったりしている。今はトレーニングだべ。
※最後のおまけ
ぬめっていて転んだ登山道はこんな感じ。道を切り開いた人の苦労がうかがえる。
ありがとうございます。