女二人旅・島巡り編② ~太陽を繋いでいく網地島〜鮎川〜金華山の道のり~




 夏休みの女二人旅、石巻市島巡り編第2話。

 前回、田代島の漁師さんのお話をした。写真を整理していたらその漁師さんの写真がもう一枚出てきて、その一枚が、網地島で見たジェットスキーとかぶった。(個人的にツボだったので、ぜひ紹介させて欲しい)




 こちらが網地島のジェットスキー。このあと、網地島ラインの私たちを軽く追い抜いていった。日焼けした青年たちの笑顔もナイス!




 こちらが、田代島の漁師さん。網地島ラインから、ぐんぐん追い上げてくる漁師さんを見つけて、おお!かっこいい、と思った瞬間だ。

 ところが、この後、船は急に失速して、網地島の青年と裏腹に、私たちを追い抜くことなく急カーブ。そのまま沖には出ず、田代島の島に近いところで、そそくさと漁を始めたのだった。

 やっぱりガソリン代か?! と思った切ない瞬間。う~ん、私の思い込みだけだといいが。田代島を受け継ぐ漁師さん、ぜひ頑張っていただきたい!


 さて、私とI氏は、網地島へ!






 島に上陸する前からしつこく岸壁を撮る私。前回、網地島のドワメキ岬という絶景スポットを行き逃しているので、(それを相当悔しがっていたので)方角も確認する前から、おお、あれか! あれがドワメキ岬か、とドワメキ岬っぽい岸壁に食いついて撮りまくっていたのである。(残念ながらあれはドワメキ岬ではなかったが)

 朝の7時5分に網地島の長渡港に到着して、8時14分の出航(鮎川行き)まで1時間11分、石巻百景に寄ると、長渡からドワメキ岬は徒歩30分なので、往復1時間プラス観光時間10分、で、物理的には行けないことはない。はず。

 ところが、これが女二人旅。ほぼ網地島ど素人の二人組。そうそううまくたどり着ける訳もなく、必死にGoogleマップを疾駆して先を急ぐも、道を間違え、ドワメキ岬の方向標識を見逃してしまうと言う一幕さえあった。

 うひ〜 またリベンジならずか。 







 長渡から岬方向へどんどん進む。お狐さま?のような長い石が祀られている。パワースポットか。お祈りもせずに通り越すと、次は沖縄っぽい瓦の住宅が立ち並ぶ住宅街。こちらもどんどん脇目も振らず、ドワメキ岬方面へ。






 「渡波岐岬」(渡波滅生ではない?!)と書かれた標識前にたどり付いたときには、既に入港から25分経っていた。今までの(歩いて来た)スピードと、帰りの時間とを考え換算する私。どう考えても、間に合わない。Googleマップによると、ドワメキ岬までは、今まで歩いて来た距離と同じだけの距離が残されていた。だみだ、こりゃ。

 泣く泣く、引き返す。くそ、またしてもリベンジだ! また島巡りをする理由が出来た。






 途中、海が見渡せるスポットがあったので、ドワメキ岬の代わりに記念撮影。金華山も見渡せて、いいなぁ。ここでさえこんなに素敵なのだから、ドワメキ岬からの景色はもっといいだろう。
 さて、椎名誠に続けるか。
 
 ちなみに私は、若い頃、椎名誠の私小説もどきを散々読んで大感銘を受けて育った。私の青春は、イコール椎名誠の青春時代(を書いた小説の時代)と直結しているのだ。

 なので、椎名誠がその後、旅行家みたいな冒険家みたいな、やけに本格的な旅人となって、映画「LIFE」の世界を回る写真家よろしく、様々な場所を巡るヒトになってしまった時は、ずいぶん遠くへ行ってしまったような深い感慨を覚えたものである。
 
 あれはもう小説家じゃないな、生きる化石みたいな、なんだろうな、もう存在自体が価値の塊。行動自体がオレの魂、オレの生き様、みたいな。その割にあの軽い笑顔もいいな。刻まれた深いしわとか。いいな。軽い笑顔から人生の重みを感じるな。俗人の一線を遥かに超えて彼方側に行ってしまった人みたいだ。共感持てなくなった分、憧れるというのか。多少の複雑な想いがあるものの、椎名誠がドワメキ岬に行ってその自然を誉め称えた、というだけで、ものすごい価値があるような気分がして来るから不思議だった。

 うむ。ぜひ今度は行ってみよう。次は立ち寄りではなくて、ドワメキ岬メインの行程を組まなくては。

 ちなみに、網地島はドワメキ岬のほかにも見所がたくさんある。写真下は前回行ったヨッショとかいう絶景スポット(からの景色)。ここもきれいだったなー もう景色に神々が宿っていそうだった。また行きたいものだ!







 写真上。こちらも、前回の網地島旅行の際に見かけたスポット。というか民家。縁側が広く、ステージ状になっていて、オープンカフェにでもしたら素敵な感じ。ぜひ借りたいな、と思ったのだが(すでに買い手が付いているとか聞いていた)、その後どうなったか見に行ってみた。




 お、まだほかの方に借りられて(買われて)いない様子。




 ステージ状の縁側も健在! うちのにゃんが喜びそうだ。縁側の下の方、石の中に仏様のような人形がいる?! う〜ん、なんかしみじみと古の時代を感じて気持ちが落ち着くようだ。(こんな小さなところにも、自然信仰の時代を感じてしまった。実は最近のものかもしれない・・)

 こんないい場所が廃墟のように放置されている、というのがもったいなくて仕方がない。格安で貸してくれないだろうか。猫カフェを作って大繁盛させてあげるのに。(いや、網地島では猫を飼ってはいけないそうだ・・)もしくは誰か古民家カフェでも作ってくれないだろうか。絶対、自然食を食べに通ってしまいそうだが。


 ふ〜む。考えがまとまらないまま、長渡の港に戻って来た。I氏がつかの間の網地島散策を喜んでくれた風だったのが救いだ。それにしても、網地島は水が澄んでいてきれい! 震災の後はずいぶん濁ってしまったそうだが、復活してよかったなぁ。これだけ水がきれいだと釣りも楽しめそうだ!





 網地島ラインとは違う船がきた。これが海上タクシーか?! じろじろ見て、車で待っていた方々に話しかけてしまう。

 「車に海上タクシーと書いてありますが、海上タクシーの方ですか?」
 「いえ、違うんですよ〜」
 (会話終了)

 というのも、実は、私とI氏は金華島からの帰りの便をまだ手配できていなかった。一応定期船を申し込んではいるものの、定期船の時間(昼頃)だと、帰りの、仙台からの新幹線の時間に間に合わない。定期船の出航時間より早めに船が出ることになったら教えてほしい、ぜひ乗り合わせたい、という希望は伝えてあるが、どうなるかわからない状況で、最悪は海上タクシーに乗ることも考えていた。
 




 これが、手配すると一回(片道)1万5千円以上という海上タクシー。

定期船が往復で2,500円から3,000円だから、それと比べるとかなり割高となる。どうしたものか。






 そんなこんなで、海上タクシーを尻目に網地島ラインの「みゅう」にのって、鮎川に到着した。みゅうの船長さん、見覚えがあると思ったら、前回写真を撮っていただいた方ではないか。こちらのことは覚えていないようだが、(1回乗ったきりだから当たり前だが)こちらは(サービスで)うみねこの群れに突っ込んで行ってくれた運転っぷりが衝撃的で良く覚えている。


写真下、みゅうの前で立ち話をしているらしき男性が船長さん、船の中でも長渡島から乗った青年と親しげに話されていて、島の生活を垣間みたような想いがしたものだ。そりゃそうだ、島から通勤したり、通院したり、そういう島民の姿をいつも見ているのだろうから。誰でも顔見知りなことだろう。


 もしも、私も島に住んだら。

 船長さんどころか、島民全員と顔見知りになるんだろうなぁ、やっぱり。いや〜 悪いこととかできないな。(しないけどね)とか。そんなことを考えながら、前回のみゅうでの写真を再アップ。






 今猫の島の「青島」がツイッターで火がついて、ツアーの予約殺到と聞いたけれど、猫の島なら田代島も網地島も負けていない。それに現代は楽園の象徴である島を巡る旅はやはり面白い。猫も可愛いし! ぜひ青島に負けず、多くの方に訪れていただきたい場所である。



 8時半過ぎに鮎川に到着した。
 ここで船を乗り換える。今度は網島ラインではなくて、金華山行きの「ホエール」、前回と同じ金華山観光クルーズさん。ここは女性のスタッフがいて、電話の対応も感じが良くてとても気に入っている。今回も鮎川の発着所で手荷物を預かってくれたり、また、早い時間の(金華山からの)帰りの便が出ることになったらすぐに連絡をくれることを条件に定期船を予約させてくれたり、(ほかの会社では、海上タクシーを呼べ、とけんもほろろの言い草だった)何かと便宜を尽くしてくれた。
 ホエールが出るのは10時30分。出航までちょっと時間があるので、遅めの朝食を食べることにした。





 と言ってもこの辺、震災の爪痕がまだまだ残っていて、港の周りはがらんとしている。家があったらしき場所は宅地の区画だけが残されている。少し先に行くと民宿がちらほらあるようだが。(写真下、民宿の看板が2つ程続いているところと、がらんとした鮎川港付近)







 5分程歩くと、おしかのれん街と唯一のコンビニ、ヤマザキストアの東洋館という店がある。コンビニというよりは地域の何でも屋さん、開店時間が早く、品揃えが豊富で、野菜、医薬品、化粧品と、広い店内を回ればほぼ必要なものが何でも揃う。別館の雑貨屋さんでは日用品を販売し、また移動販売車もあるという貴重な店だ。その東洋館の前で、品のいい夫人が車から降りて来た。黒いドレスのような洋服にきれいに巻かれた髪。昔の女優さんみたいだ。目があったのでにこりと挨拶をする。地元の方が買い物に来た、という様子。私も前回の島巡り旅行の際に、ここが開いていてずいぶん救われた。地域の人はさぞ助けられている店なんだろう。

 ・雑貨 おしかのれん街 東洋館


 前回ここにきた際に、おしかのれん街の海鮮丼を食べそこなった。出来ればそれもリベンジしたかったが、店が開くのが10時を過ぎるようなので、東洋館さんでお弁当を購入。普通に鳥の唐揚げ弁当をいただいた。旅先らしくないコンビニご飯が朝食となったが、コンビニもここまで地域色に染まっていると、何だか貴重な旅行食体験っぽい気分がして来る。

 で、出航にはまだ時間がある。I氏と二人で、おしかのれん街の前のベンチに座って、まったりしていると、犬とお散歩中の男の方が現れて何やら話しかけて来る。


 お近くにお住まいなのだそうだ。私たちがこれから金華山に行くと知ると、詳しいそうであれこれ教えてくれた。愛宕神社の場所はわからないが、金華山ホテルへ行くなら道が険しいから気をつけた方がいい。夏は雑草が多くて蛭もいるからやめた方がいいのではないか・・・エトセトラ・・・

 旅の計画を根底から覆されるようなアドバイスもあったが、深く気にしないことにした。まずは行ってみよう!

 また、氏は震災でバラバラになった七福神をボランティアの方々と一緒に拾い集めたのだそうだ。泥まみれで放置されていた仏様を揃えて供養した。そのための施設もお金をかけて(結構な額だったが申し訳ない、忘れてしまった)ご自宅に作ったのだという。
 へぇ! 貴徳な方もいるものだ! あと、後で知ったのだが、先ほどの品のいいご夫人は、氏の奥様だった! へぇ!! 驚いた。








 氏は民謡歌手で、民謡カラオケ講師の伊藤さん。
 お話をしていたら、金華山行きのホエールの出る港まで送ってくれると言う。荷物が多少あった私たちはありがたく好意を頂戴した。その車の中で聞いた伊藤氏の歌のうまかったこと! 女性の声かと思う程の高音の、何ともいえない中世的な歌声が車内に響き渡った。もっと聞いていたい! と思ったが残念ながらすぐに港に到着。すると伊藤氏は何を思ったのか、鹿の角を私に差し出すではないか。

 鹿の角!

 私は金華山の神鹿の角が欲しくて、それも今回の金華山の旅で叶うならばリベンジしたいと目論んでいた。二人旅のI氏も幸運の持ち主なので、二人ならば叶うのではないかと思っていたのである。

 それが、金華山へ行く前から棚からぼたもち状態で、向こうから降って来た! 聞くと、金華山の鹿や牡鹿半島の鹿の角を使って作ったものだそうで、厳密にいえば神鹿の角ではないかもしれないが、それにしてもなんという偶然、鹿の角を使ったというまるで一昔前の携帯ストラップのようなアクセサリーを惜しげもなくくれたのである。

 民謡の美声といい、鹿の角のアクササリーといい、なんとお礼を言っていいのやら、出会いに感謝してあたふたしていると、氏が(まだ出航前に時間があるということで)自宅(七福神の館)を案内してあげよう、と言い出した。それは願ったり叶ったり。ぜひ見てみたいと思っていた。汽船手続きを済ませた後、車でさくっと5分程、その間また民謡の中世的な美声を聞いて、たどり着いたのが、こちら。






 じゃ〜〜ん。





 これ、私の撮り方が寄り過ぎてまずいだけで、本当はもっとすごいことになっているのだ。隅から隅まで七福神と鹿と蛇とだるまに観音様? 金の延べ棒? それは違うか、でもそんな感じにキンキラキン。






 自宅の敷地内にある「復興を願う福幸館」には、運気がアップしそうな七福神に縁起物の置物がいっぱいだった。鹿の角まで飾れていた。(しかも七福神らの一番上に、神棚に置かれるように。まるで神鹿のそれのように)すべてこれが放置されていたというからもったいない話である。自宅はちょうどお盆の飾りが飾られていて、「こっちの地方はこんな風にお盆をするんですよ〜」と高音で語られて、まじまじと自宅のお盆飾りに見入ってしまった。魚模様の旗に大きなブルーの提灯に、なかなかの見事なものだった。(写真にはすべて収まりきれなかった)


 福幸館は運気上昇アイテムだが、自宅の中には伊藤氏と奥様が作ったという貝の絵皿、手鞠、竹細工の家具、バックに小物入れ、人形らがところせましと飾られている。部屋の奥から持って来てくれたのは、鯨の歯で作ったという象牙のようなストラップ付きアクセサリー。





 鯨の歯と鹿の角で作ったという手作りの品々だ。


 

 こちらは帆立の貝に絵を描いて金粉を塗った飾り物。





 おまけに牡鹿半島で拾ったと言う鹿の角(一本丸ごと)まで私たちにくれるという太っ腹ぶり。う〜ん、本当にもらっていいのだろうか。帰宅してから調べたところ、鯨の歯のアクセサリーは意外といいお値段だった。鹿の角しかり。

 ちなみにこれらはすべて非売品だそうで、「もし買いたいという人がいたらどうしますか?」と聞いたところ、「知り合いと物々交換でないと譲らない」とのことだった。非売品を手に入れられるとは貴重だ。何だか一気に運が付いたような気分になる。(運気上昇のパワースポット金華山へ行く前からそんなに運を付けちゃっていいのか)

 自宅にはあの例の東洋館で出会った女優さんのような夫人もいらした。自宅2階は夫人の仕事部屋になっていて、部屋と階段のところに、夫人の手作りコレクションが並んでいるのだ。で、自宅裏にはこれまた伊藤氏の趣味の手作りだという盆栽が並び、・・・夫婦揃ってどこまで多趣味なのか。または、趣味の作品(というには本格的すぎるが)を作り続けるのか。まるでどこもかしこも工房のようだ。(もしくは展示場のようだ)





 前回、おしかのれん街で鹿の角が販売されているのを見て、衝撃を受けた私だが、これは神鹿ではない。牡鹿半島では鹿の角は簡単に手に入るのだそうだ。生え変わる時期になると道に落ちている。もしくは、誰かが譲ってくれる。

 「それは(誰かが)殺した鹿の角ですか?」

 「うん、そういうのもあるよ(それだけではないけれど)」

 3ヶ月前だったら、不快に思ったかもしれない。だが、福幸の館で、まるで神鹿のように飾られた鹿の角を見て、私は救われたような想いを感じていた。打ち捨てられた七福神たちと同じように、これらの鹿の角も伊藤氏が神棚のような処に飾り、祀って、まるで穢れを祓って昇華させてくれたように。本来の姿を見つけて、崇めてくれた。角を商品として写真に撮り、サイズや規格をこまごまと記載して、販売しているwebサイトもあるくらいだ。その非情さを思うと、私があのとき感じた、伊藤氏に対するありがたいような想い、鹿の角をいただくことに抵抗を感じなかったこと、などは、正当な想いだったのではないかと思う。

 たくさん貴重なものを頂戴して、お腹いっぱいになるほど素晴らしい作品を見せていただいて、出航近くなってまたホエールの乗り場まで送っていただいた。その節はありがとうございました。写真を送るので今しばらくお待ちくださいね!

 ところで、帰宅してから、あの民謡の高音の美声が忘れられず、ようつべで探したが、残念ながら見つけられなかった。今度会う機会があったら、ぜひ録音したものをいただきたいと思う。

 写真下はホエール。鮎川から金華山までの定期船だ。1日1便ではなくて、もう少し増やしてもらえるとありがたいが。








 I氏はホエールでうみねこの餌やりにチャレンジ。ばっちりのタイミングでカッパえびせんを奪いに来るうみねこ。ホエールのスピードが結構出ていたので、うみねこたちはついてくるのがやっとだった。よく食べられたなぁ、頑張ったうみねこ!

 で、ホエールはどんどん進み、金華山が近付いて。

 おや、あれは。




 金華山ホテルだ! (今回の旅で行ってみたいと思っているところ)

 中央左寄りの赤い屋根の建物。伊藤氏よると、特に夏は道が塞がれてしまい行くのは無理ではないかという話だったが、遠目で見る限り、浜側の道はそう草に覆われていない様子だ。緑の芝のような道が続いている。あれなら(浜側から)行けるのではないか、と見当をつける。






 金華山到着。海の男が港にロープを投げるところを撮ろうとスタンばっていたのに、撮り逃してしまった。



 金華山はやはり工事現場のアクセ?も鹿だった。

 すぐ目の前を見ると、山の中腹で鹿が草を食べていた。
 写真下。2枚目はズームしたところ。




 

 黄金山神社へはホエールの着いた桟橋から参道を歩いて10分程だ。前回は歩いたが、今回は荷物もあったし、女二人旅なので、優雅に?! 神社所有車の送迎車に乗ることにした。送迎車が2往復程するのを待った。桟橋に観光客が誰もいなくなり、最後にI氏と私が残された。送迎車到着。お待たせしました、と明るい挨拶をしてくれる神職の運転手さん。気さくな感じがしたので、ここでも伊藤氏にした質問と同じ質問をしてみる。

 「あの〜 愛宕神社の場所はどこでしょう」

 実は私、I氏と金華山の愛宕神社に行く計画を立てていた、・・くせに、未だになんと愛宕神社の場所が分からなかったのである。金華山に訪れたと言う誰に聞いてもわからない。webにも詳細は乗っていない。伊藤氏は現地の神職の方に訊いたらいいと言った。
 運転手さんは、アタゴ神社、と何度も繰り返して、

 「さぁ、わかりません。実は私8月から来たばかりなのです」

 受付の人に聞くといいですよ、とのことだった。




 黄金山神社の境内に着いた。さっそく神鹿がお出迎えだ。



 おお、立派な角のある牡鹿もいるではないか。



 なんと参籠(おこもり=宿泊のこと)受付の祈祷受付所まで付いて来た。

 「めずらしいね〜よほどいいものあげたんだね」と神職の方。
 
 「(東洋館の)菓子パンを少々・・」と私。







 受付には、前回丁寧に金華山までの道程を教えてくれた神職の方がいらした。このかたならば、と思って、また同じ質問をぶつけてみる。「愛宕神社ってどこにありますか?」
 ところが、今度ばかりは丁寧には教えてくれないのだ、ほんの少しばかり不愉快そうな表情になり、分かりづらいので行かない方がいいとのこと。

 「社務所から近い道があると聞いた(というより社務所にある登山コースの標識にそう書いてあるのだ)のですが」

 「ふん、たいていみんなそれで近道をしようとして、(道を誤り)とんでもないところへ行ってしまうんですが・・」

 やめが方がいいと言われて、言葉を返せなくなった。伊藤氏の時のように気にしないわけにはいかなかった。この神域の地のプロが言うのだから。そんなに分かりづらくて危ないならば、I氏を連れて行く訳にも行かない。愛宕神社は諦めようか。縁がなかったか。受付も終了して、参拝へ向かう前に参籠(おこもり)の場所となる参集殿に向かった。とりあえず山へ向かう前に荷物だけ置かせもらうことにした。






 参集殿の部屋の前まで来てびっくり。なんと扉に、歓迎「石巻市」◯◯様、と書かれた紙が貼ってあった。申し込んだときに、職場が石巻だとか言ったのかな? 経緯を覚えていないが、大感動だ。まるで石巻市の市民になれたようで嬉しかった! (確か前は神奈川大和市の杉山様だったと思う)





 荷物を置いて、ご拝殿へ参拝へ向かう。おや、手水舎の手水の使い方の女の子の絵、いつかまっちゃ青年が送ってくれた浅草神社と同じではないか。気がつかなかった。東京と宮城と離れていても、さすが神社は共通しているんだなぁ〜

 (まっちゃ青年は元気かなぁ〜また写真送ってほしいなぁ)






 こちらは、黄金山神社で一番目立っている随神門。大正14年、昭和天皇のご成婚記念として建立。天孫降臨の時、(瓊瓊杵命・ニニギノミコトに)ご奉仕した天忍日命・天津久米命の姿を、ご神像として左右に安置している。すべて欅(けやき)で作られているそうだ。

 



 5月に見たとき倒壊したままだった箇所も、少しずつ復旧が進んでいた。嬉しい限り!
 





 ご拝殿の鈴を慣らそうとしたら、その先端に小銭がたくさん付けられていた。それを見て、I氏がさっそく小銭を巻き付ける。「ご利益ありそう」







 確かに。黄金山神社は神仏習合時代は弁財天を守護神としていた。金運、財運がアップすると言われているお金の神様を古から大切にしていた。また13世紀には日本で初めて黄金を産金をして朝廷に献上、その貢献を喜ばれたという実績も残っている。(だから弁財天なのね)金運が付く、と未だに呼ばれているパワースポットなので、うん、確かにここに小銭を残して行ったらご利益がありそうだ。

 ちなみに弁才天堂(辯財天奉安殿)と銭洗弁天もちゃんとある。随神門の右手、ご拝殿へ向かう階段に登らずに右の金椿神社へ向かうと、すぐ真横を流れている川の橋のたもとでお金を洗えるようになっている。こちらも金運を付けたい方は要チェックだ!



パワースポットと言われている巨木の前で休憩



 さて、I氏と私は山頂目指して金華山を登り始めた。I氏は金華山がこれほどの山だと思わなかったそうで(ちゃんと説明しなかった私が悪かった。。)、なんとサンダル履きで来てしまった。それで登るのは大変だよ、と出かけに参集殿受付の神職の方に声をかけられた程である。また山頂までの道程は夏草がのびて、草ぼうぼう。5月に登ったときより遥かに視界が悪く、歩きづらい道になっていた。

 「杉ちゃん。私だめかも。8合目の海が見渡せるところまで行くから(山頂は一人で行っていいよ)」

 I氏が小さな声でそう言うので、思わず切なくなってしまった。


草ぼうぼうの登山道

来た道を振り返る

こっちはこれから登る道


 8合目から一緒に帰ろう。別に山頂が目的ではなかった。女二人で石巻市の島巡りを楽しむことが目的である。そうだ。そうしよう。
 そのとき、ふと頭に閃いたのが、「愛宕神社」だった。

 こちらも行くのを諦めようと思っていた愛宕神社、ところがよく考えれば、愛宕神社は8合目から社務所へと向かう登山道に建立されており、社務所へ帰るには最短の近道なのである。その近道が分からなくて、(前回の登山のときに探せなくて)わざわざ遠回りをして8合目からまた来た道を戻って来たのではなかったか。もし道が分かるならば、8合目から愛宕神社を通って帰れば、逆に楽なんじゃないか?

 受付の神職の方に、「愛宕神社は分かりづらいところにあってお勧めできない」と言われたばかりである。しかし、登山に出かける直前、私は最後の頼みの綱とも言うべき想いで、参集殿の受付の方に訊ねたのだ。「愛宕神社はどこですか?」

 「山神社からの道程がよく分からないのです」

 すると、その神職の男の方は、こともなげに言った。「山神社から尾根沿いにまっすぐ進むとすぐですよ」

 「尾根沿いにまっすぐ・・」

 「西へ西へと進むんです」

 もしかしたら行けるかもしれない、と明るい希望が射した瞬間だった。尾根をまっすぐならば。ただ西へ行けばいいなら。そうだ。行けるかもしれない。サンダルでは山頂は無理だ。8合目から来た道を引き返すのも大変である。(もし道が分かれば)近道の愛宕神社を通って行けば、楽&リベンジで一石二鳥ではないか。

 「じゃあ8合目から山神社と愛宕神社へ行って帰ろう」

 不審そうな顔をするI氏。

 「大丈夫。最短距離だよ」と私は胸を張って答えた。 

 



 
 写真上は水神社。金華山の水神様(水を司る天水分神國水分神)を祀っている。金華山の水が涸れないのは、この水神様のおかげだ。

 水神社を通り過ぎると、すぐに8合目である。視界が開けて、尾根にたどり着く。尾根沿いを東に行けば山頂へ。西に行けば山神社へ。分かれ道である。





ここから最短コースの山神社、愛宕神社を通って社務所へ向かう

 ところで、私たちは運がよかった。蛭にも刺されず、足をくじいたり大きな怪我をすることもなく、帰ってこられた。サンダル履きでもよくわからない道でも無事に帰ってこられた。今思うと、神のご加護だとしか思えない。

 写真下、山神社への尾根道を進む。この辺りはまだ道が分かりやすいのだ。(ちゃんと道が残っている)





 北側の木々の間からちらりと仁王先が見えた。





 尾根をひたすら進む。(と言っても大した距離ではない。標識によると、僅か520mである)






 山神社が見えた。無事到着だ。よしよしここまではOK、問題はこの先だ。お参りも記念撮影もしたのだが、私は無事に愛宕神社を見つけて、社務所に戻れるかどうかで意識がいっぱい、気もそぞろだった。(金華山山神社の山神様、ごめんなさい。前回たくさんお祈りしたのでお許しください。その割に助けてくれてありがとうございました)





山神社から北側の景色 牡鹿半島に江の島らが見える



 それにしても、山神社は本当に小さな祠なのだが、最高にかっこいい。あのぐるり海に囲まれた稜線に、孤高にたたずむ姿が何とも言えない。金華山に訪れたら、ぜひ行っていただきたい場所の一つだ。

 (決してサンダルでは行かないように。サンダルであの道を行けたのは、パラグライダーで鍛えたI氏だからのことだと思う。氏の強運にも助けられた)

 山神社を通り超して、大した距離ではないというのに、ここからが未知のゾーン。結果次第で大変なことになる領域。尾根沿い、尾根沿い・・とつぶやきながら、慎重に進んで行く。写真下は尾根沿いを進む私たち。(その景観)







 尾根と言っても、高い山と違って、尾根が曖昧なのだ。途中尾根を見失って、斜面をトラバースする迷路に迷い込みそうになった。長渡のときと同じように、ここでもGoogleマップを疾駆。本当に頼りになる。GoogleとAppleがなかったら、私は生きて行けないな、と痛感。あ、あとAmazonも。

 うん、そう思うと、もう国という概念は崩壊しているのかもしれない。既に。住む国が例え変わっても、(例えばどの地にいても同じセブンイレブンが一軒あれば同じように生活ができるように)どの国にいても、同じ企業があればやっていける。それでも、この国を愛しているし。(GoogleとAppleとAmazonのお世話になりながらも)こうやって愛しいこの国の神域、金華山を楽しく散策させていただいている。田代島で漁師さんと青年を見て感じた何かが間違っている想い。妙だと感じた循環。同じような気持ちをまた抱いたが、でもそれは後の話。この時は、Googleマップを見ながら、尾根を見つけるのに必死である。Googleは本当に役に立った。助けていただいた。

 誤解のないように行っておくが、それでも、迷った時の最終判断はGoogle様ではなかった。私はすんでのところで、Googleマップを信じてトラバースへ進みそうになったのだった。それを引き返して、尾根を歩けたのは、金華山の神職の方の言葉をふと思い出したから。

 「尾根をまっすぐ進むんです」

 「西へね」


 単純な話だった。(ふむ、やっぱり循環は間違っていないのかな?)




 (間違っているのは私の方かもしれない)



尾根から西側を見たところ あっちにも稜線があるなー

尾根の急斜面を下る

 

 勝手にGoogleを頼り、勝手に打っちゃって、金華山の言葉を頼りに、西へと尾根を進んだ私たち。愛宕神社から最短距離で社務所へ戻れたのか。その模様は次回にお届けしたい。お時間があったらまたぜひお付き合いください。

 では良い休日を! もしくは、仕事の方は良い午後をお過ごしください。
 貴方の一日が今日も素晴らしいものとなりますように。
 願いを込めて。

 




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