忘年会で、鍋将軍を思い出した。鍋奉行というのもいるらしいが、要するに、飲み会の鍋料理の時に火加減を調整したり、取り分けたりと、場を仕切る人のことである。
以前、商社で派遣をしていた時に、65歳の大局様がこの鍋将軍だった。いや、正確に言えば将軍というほどのこともないし、そもそも鍋でも飲み会の話でもない。彼女が仕切るのはただの食事会である。必ず、中華料理の店に、あそこ美味しいからね~と言っては連れて行くのである。
大皿に盛られた中華料理が、人数分やって来る。遠慮がちにそれぞれが自分の皿に取る。当然大皿の中華料理(確か四川だった)はガツンと余る。すると、そろそろ大局様の出番である。鍋将軍よろしく彼女の中の序列に応じて中華料理を再分配していくのである。
派遣の私は当然序列が最下位だったので、いつもひもじい思いをしていた。いや、量は同じだったと思う。分配の時に彼女の頭の中にある序列を感じ取って、その僻みからひもじく感じられただけかもしれない。会計の時に割り勘なのが腑に落ちないくらいである。おかしい。何か違う。
ある時、ホワイトデーのお返しで、同じ部署の男性社員が女性社員(と私計4人)をフランス料理のフルコースに招待してくれた。私はこの西欧の平等な食事の分配にたいそう感動し、大局様の序列もわきまえず、ナイフとフォークを華麗に操ってペロリと平らげた。食事中と帰り道に、彼女からいくつかのイヤミと忌々しげな視線を頂戴したのは言うまでもない。
さて、長い前置きになったが、忘年会が中華料理だったのである。私は嫌な予感がした。テーブルについたときの、あの誰が鍋将軍になるか決まるまでの一瞬の間、もしくは、誰も鍋将軍になりたがらない時の一瞬の間。後者の場合、女性の私は必然的になりたくもない将軍と奉行と悪代官を一人で演じなくてはならない可能性が大きいのである。
ところが、中国名菜翠園(すいえん)さん、予想を裏切って、一人ずつの小皿で料理を配るのである。(これがまたうまかった。油使いがくどくなく絶妙である)各自が好きなものを好きなだけ取るという飲茶ほど一体感が阻害されるわけでもなく、一体感重視の大皿料理の場の空気にあれこれ気を奪われることもなく、まったりと美味しい料理を堪能することだけに全気力を使い果たすことができた。会社の忘年会だというのにこのリラックスぶり。いや、良かった、良かった。
いや、本当はそれではいけないのだろうが、こういうおもてなしも時には嬉しい。(心温まる鍋はもちろん大好きだが、年末は少々疲れているのである)中華料理と融合した日本のスタイルなのだろうか。ただのありがちな飲み会のコース料理だったのだろうか。西洋に負けず劣らぬ平等な分配に中国×日本の明るい未来を感じたというちょっと大げさな忘年会の一夜。
お腹いっぱい過ぎて、動けなくて、帰宅後すぐに就寝。
翌朝起きたら、喉が痛くてたまらない。どうやら風邪をひいたようだ。
(鍋料理と大局様の祟かも知れない)
中国名菜翠園さん
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中国名菜翠園@町田マーボー豆腐ランチセット (次はこれが食べたいです)
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お酒は嗜む程度(甘いものしか飲めない)だが、
カシスオレンジが美味しくてすぐに2杯めを注文 |
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中華料理のフルコース
麻婆豆腐が美味しかった |
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デザートは杏仁豆腐 |
さて、風邪に襲われつつある気配を感じながら土曜日、今年の紅葉に決着をつけなくては、とカメラ片手に行く場所を探す。やはり鎌倉か。それとも東京の六義園か。検討した末に、近所の「泉の森」に行くことにする。電車に乗って遠出する体力が怪しかったし、何より「泉の森」は私の原点なので、久しぶりに行きたくなったのだった。
泉の森というのは神奈川県の引地川の源泉を中心にした公園である。私は写真を撮りにここを何度も訪れた。横浜や東京の有名どころの公園は、人出が多く、特にシーズン中は三脚を使えないことが多い。今なら感度を変えて、もしくは後でフォトショップで加工することを念頭に難なく撮れる写真でも、当時の私はそれを嫌い、ピント合わせはマニュアルフォーカス、三脚を立て、スローシャッターで一枚ずつ丁寧に撮ることが好きだった。それを許してくれるのが唯一、泉の森だったのである。
私は、電車に乗って現地に出かけける時間を全部写真撮影に費やした。写真を撮りながら、森の中をぐるぐると歩き回りながら、いろんなことを考えた。泉の森を題材にした記事と写真は山ほどある。
代表的なものが下記の記事で、こんなことを考えていたのだなぁ、と思わず感慨に浸るほどである。
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ノアの方舟を探して (2010年1月31日)
泉の森は、私の中で一つの宇宙だった。
さて、あの素晴らしさを今度は誰かに教えてあげないといけない。梅や桜がどれだけ見事に咲くか、菖蒲の池の綺麗さに、鳥の囀り、延々と続く森の小路、そして紅葉。まぁ、シーズンオフのところは絵がないのは仕方ないので、とりあえず泉の森のオススメどころを回ってみよう。
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鶴間駅を降りて旧246(厚木街道)を西に進む
15分から20分も歩くと、森の泉入口が現れる |
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泉の森ガイドブック
泉の森(とふれあいの森)は国道246号と東名高速を挟んで広範囲に及んでいる。(泉の森だけで42ha)出かけるには、小田急江ノ島線の鶴間駅か大和駅、もしくは相鉄線の相模大塚駅が近い。今回紹介するのは、その中でも一番王道の鶴間からのコースである。
まずは鶴間駅を西に進んで15分から20分。葬儀会場を過ぎ、どでかい森永の工場まで来ると、左手に泉の森入口の立て看板が見える。左折して泉の森本通り商店街(上の写真)を歩いていく。
小さな商店街なので入口に気付かず通り越してしまうことがよくあるのだが、それでも森永の工場を過ぎたところで、老人ホームの手前の十字路に、もう一度泉の森方向を促す看板がある。
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老人ホーム手前の泉の森散策道標識
鳥がちょこんと乗っているのが個人的にツボ |
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鳥の標識のところを左折してまっすぐ行くとすぐ入口
正面に泉の森と書かれたでかい園名石が見えてくる |
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お気に入りのコースはまずこもれび広場の左の細い道へ |
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鬱蒼とした森を進んでいくと |
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紅葉がお出迎え |
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いや、綺麗に染まってます |
この楓の向かいに立派なエゴノキが数本あって、5月になると綺麗な花を咲かせたものだが、いつの間にかなくなっていた。台風で倒れたといったところだろうか。寂しい限りだ。
森のはらっぱは名前負けしているというか、実際は檜ばかりの林だが、その森の中に2本、ヤマボウシの木があり、エゴノキ同様5月に純白の美しい花を咲かせる。こちらもいつからか美しいあの純白の花を見ていない。もしかしたら立ち枯れたか。花の時期を逃しただけか。
5月に訪れる方々いたら、ぜひ森のはらっぱのヤマボウシを探してあげて欲しい。
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右手の「森のはらっぱ」へ |
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ヤマボウシの木 こちらも花の時期美しいが
今日は僅かな葉っぱが残っていただけだ |
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森のはらっぱ |
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檜(ヒノキ)は火の木 古くから役立つ木なのだ |
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山野草の小径(写真前方)に進む |
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山野草の小径へ進む階段 |
「森のはらっぱ」から「山野草の小径」へ向かう。この「山野草の小径」が泉の森の一番の見所である。
いや、公式ガイドブックの地図にも名前が載っていない小さな道だが、ここは引地川の水源の真横を、水源と並行して通っている山道なのである。
道の手すりから身を乗り出すと、亀甲山の木々と水源地の水が微かに見える。もしくは、何も見えず、その(水源があるだろうと思われる)辺りから木々がダイナミックに突出しているのが見える。私はその神秘的な雰囲気と光景が好きで何度も写真に撮った。(ノアの方舟の記事の一枚目の写真もここ)
コナラやシラカシ、ケヤキにエノキ、ヒサカキ、ムクノキといった落葉樹と常緑樹が入り混じったシンプルな雑木林だが、野鳥が一番多いのもこの山野草の小径で、歩いていると鳥の囀りがうるさいほどである。オススメの道だ。
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森の泉といえばのコナラ
(私がここで好んで撮っていただけだが) |
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紅葉がわずかに残っていた |
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こちらはヒサカキ |
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小径というだけあって狭い道 |
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ここから亀甲山の木々を見る |
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随分間引かれたよう
ノアの方舟を探して、と同じ場所だが木が少なくなった |
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こちらはエノキとムクノキ |
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エノキも建築や器具によく使われた木 |
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ムクノキはエゴノキと対照的な名前 いつも不思議に思う |
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水源がちらりと見える これが引地川になるのか |
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山野草の小径の終点
右折してアセビの森に行くのも楽しいが今日は左折 |
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マユミ この木で弓が作られた
秋になると葉を染めるらしいが、緑のまま・・ |
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こちらは泉の森といえばのシラカシ |
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泉の森はシラカシの美林が多い シラカシは道具の柄を
作るのに使われる |
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野鳥観察デッキ |
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国道246の真下のせせらぎ広場
子供が遊べるようになっている |
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246の下からの景色 ここ(せせらぎ広場)から正面の道を行くと
山野草園と、園名石のあるこもれび広場へと向かうあじさいの道に繋がる |
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森の泉売店 土日祝日のみ営業 案内図ももらえる
ソフトクリームに冬はあんまん肉まんがおすすめ |
お決まりの森の泉売店前で休憩。この売店を通り過ぎると、ついに公園の中心部である。森が開けて、一番人々が集うところ、子供の遊び場が現れる。しらかしの池、遊びの小川だ。それらを囲むように、水車小屋に緑のかけ橋、湿性植物園、ふれあいデッキ、しらかし広場と、自然の散策道と、泉の森公認の見所が続いている。
写真好きの人たちが多く集まるのもこの辺りだ。カワセミを撮ろうと、大砲のようなレンズをつけたカメラがしらかしの池の周りにずらりと並ぶ。
ちなみにカワセミは水源地の大池にも現れるそうだ。(大池は野外教室の裏手の遊歩道から近付ける)
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売店から道を隔ててすぐ前の林
ここもお気に入りの場所
ん? ベンチに猫発見 |