「それが人間だ」ーー映画「宝島」が突き刺す静かな叫び。
こんにちは、ららです。
公開前から楽しみにしていた、沖縄を舞台にした物語「宝島」を観てきました。
結果から言うと、役者陣が本当に皆さん熱演で素晴らしかった!
特に、妻夫木聡さんと永山瑛太さん。ひと昔前は、同世代ということもあって「なんだか似た雰囲気の役者さんだなぁ」と思っていたのですがーー
今となっては、これほどまでに個性が分かれるものかと驚かされるほど。
どちらも唯一無二の俳優として、それぞれの色をしっかりと放っていました。
役者魂、圧巻でした!
※この先はネタバレを含みます。未見の方、ご注意ください。
宝島
監督:大友啓史
出演:妻夫木聡、永山瑛太、広瀬すず、窪田正孝
【あらすじ】
戦後の沖縄を舞台に時代に抗う若者たちの姿を描き、第160回直木賞を受賞した真藤順丈の小説「宝島」を映画化。妻夫木聡が主演を務め、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら豪華キャストが共演。「るろうに剣心」シリーズの大友啓史監督がメガホンをとった。
1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民らに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。そんな戦果アギヤーとして、いつか「でっかい戦果」をあげることを夢見るグスク、ヤマコ、レイの幼なじみの若者3人と、彼らにとって英雄的存在であるリーダー格のオン。しかしある夜の襲撃で“予定外の戦果”を手に入れたオンは、そのまま消息を絶ってしまう。残された3人はオンの影を追いながら生き、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、それぞれの道を歩んでいくが、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境で、思い通りにならない現実にやり場のない怒りを募らせていく。そして、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・社会派でありながら、しっかりエンタメ!
これは観に行って本当に良かったと思える作品でした。
米軍基地問題という繊細なテーマに正面から切り込んだ、社会派の映画。
戦時中、そして戦後もずっと、本土から見捨てられ、米軍の都合で扱われてきた沖縄の現実が、痛いほど描かれます。
「こんなこともあったのか」と驚く場面もありました。
正直、この映画は無かったことにされるかもしれないーー。
打ち切りになる前に観ておいて良かったと、心から思いました。
とはいえ、重すぎるだけではありません。
本格的な社会派作品でありながら、「エンタメとして面白い」という大切な側面も持っています。
主人公グスクが失踪した英雄オンちゃんの行方を追うという筋立てで進むため、観客も自然と物語に引き込まれていく構造。
置いてけぼりにされる感じは一切なく、心配していた「方言(言葉が理解できない)問題」も、前後の流れと俳優さんの熱演により、想像力に補われて何とか理解できて、
気づけばグスクの視点で物語を生きていました。
そのおかげで、3時間があっという間。興味深く、深く観ることができました。
・切なくて、そしてラストはゾッとする。
最も印象的だったのは、暴動の後、グスクとレイが米軍基地に乗り込む場面。
ここでのやり取りは、性善説と性悪説の真っ向勝負というような対話です。
「こんなことが続くならば、それはもう人間じゃない」
「いや、それが人間なんだ」
妻夫木さんと窪田さんの魂をぶつけるような熱演が胸に迫り、思わず息をのみました。
けれど、本当にゾッとしたのは、その後です。
オンの弟のレイが涙ながらに叫びます。
「だから武器を持てば良いんだ!」
俺たちも武器を持てば勝てる(平和になる)ーー その言葉があまりにリアルで、まるで日本のことを言われているような錯覚に陥りました。
「もしかしてこの物語は・・」
最初は、「沖縄の話」として観ていたはずなのに、
これは日本そのものの話なのではないか、という疑念が生まれ、
「宝島」は、日本という国の別名なのかもしれない、とすら思えてきたのです。
そして、ふと見えてくるーー
今なお、アメリカに占領されているかのような、日本の姿。
胸が苦しくなるようなラストでした。
・観るべき理由がある作品。
沖縄の歴史がわかるだけでなく、私たちの国の姿が赤裸々に浮かび上がってくるような映画。
「宝島」は、空恐ろしくも力強い作品でした。
だからこそ、打ち切られて「無かったこと」にされる前に、ぜひ映画館で観ていただきたい。そう強く願います。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございます。
素敵な時間を過ごされますよう。
願いを込めて。



