映画「国宝」感想。よくできた名作、でも、魂は震えなかった。
こんにちは、ららです。
邦画実写映画歴代第2位の大ヒット映画、「国宝」を観て来ました。
実は、今まで足が遠のいていた映画です。
というのも、実際の歌舞伎役者の方が「あれは作り物の世界」と冷めたコメントをしていたこと、監督が日本人では無いことなどが、本物の日本歌舞伎の世界とは全く違うフィクションなのではないか、と残念に感じていたからです。
ハリウッドが作った芸の世界の「SAYURI」みたいな感じではないかと・・・
でも、あまりに多くの方が観ていられるので、この時代を共有するためにも観なくては・・、と意を決して行ってまいりました。
これで、やっと歴史の証人になることができます、笑。
さて、そんな私は、話題の国宝を面白いと感じることができたのでしょうか?
※この先は、ネタバレを含みます。未見の方、ご注意ください。
国宝
監督:李相日
出演:吉沢亮、横浜流星、渡辺謙、寺嶋しのぶ、高畑充希
【あらすじ】
李相日監督が「悪人」「怒り」に続いて吉田修一の小説を映画化。任侠の家に生まれながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた男の激動の人生を描いた人間ドラマ。
任侠の一門に生まれた喜久雄(吉沢亮)は15歳の時に抗争で父を亡くし、天涯孤独となってしまう。喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺謙)は彼を引き取り、喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことに。喜久雄は半二郎の跡取り息子・俊介(横浜流星)と兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていく。そんなある日、事故で入院した半二郎が自身の代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、2人の運命は大きく揺るがされる。(映画.comより)
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・肝心の歌舞伎シーンが大衆演劇に見えてしまった。
感想は、結論から言うと、魂が震えるほどの体験ではありませんでした。
とてもよくできた、素晴らしい映画だと思いました。
役者さんも吉沢亮さん、横浜流星さん、どちらも素晴らしかったです。
ところがあまりにも素晴らしく演じ過ぎていて、肝心の歌舞伎シーンが感情的に描かれているように感じました。
あそこまで情感たっぷりだと、大衆演劇にしか見えなかった。
あれを歌舞伎として見るには、あまりにも違和感を感じずにはいられませんでした。
私も歌舞伎を良く知る人間ではありませんが、それでも、歌舞伎とはもう少し、形や様式美から滲み出るような感情表現を大切にするものであり、理性や冷厳ささえ感じられるものではないでしょうか。
そんなふうに思うのです。
なので、肝心の歌舞伎シーンで感動できなかったことが、とても残念でした。
・現実的ではない設定やストーリー(原作のせい?)
私は原作を読んでいないので、原作のせいか脚本が悪いのか分かりかねるのですが・・
俊介と春江が二人で逃げ出すところが、ありえないと思ってしまいました。
いくらなんでも、ライバルの男と逃げますか?
喜久雄の才能に打ちのめされた二人が、魂を共鳴させてしまったとしても、あまりにも残酷すぎるような気がします。
そして、糖尿病にかかった俊介が壊死した足で、曽根崎心中を演じるところが、出来過ぎていて・・ 壊死した足で、ドンドンと合図を送るのですが、ちょっと脚本的過ぎて、こちらもありえないと思ってしまいました。
舞台の上で、糖尿病で血を吐いて倒れる渡辺謙も・・出来過ぎです・・
演出感が強かったところが、多々、目立ちました。
・それでも、最後の国宝の意義は素晴らしい。
と、散々書きましたが、それでも、最後は良かったです。
天上と俗世を繋ぐものとして、最後に、神の領域を見るシーン。
あそこはとても良かったと思います。
ただ、それと引き換えに、芸者の娘に「どれだけの犠牲を払ったのか」と罵られるわけですが・・。
神の領域を見るには、それほどまでに犠牲が必要なのか、と少しやるせない思いはありましたが、凡人には辿り着けない領域だな、と・・
それでも、綺麗だなぁ・・と感嘆してのエンドマークは素晴らしかったと思います。
あの景色を見るためならば、国宝になる意味があったのだろうと思わされてしまいます。
感動しなかったと言いながら、心に残った一幕。
よく出来た名作との距離感と向き合った記録として、良かったらご一読ください。
ということで、今日は映画・国宝を見て、とても素晴らしい映画だと思ったけれど、心が震える体験ではなかった、という個人的な感想でした。
しかし、たくさんの方々を魅了した、とても人気のある映画です。
ぜひ、ご自身で体感していただければ幸いです。
来週はまた、別の名作についても書きます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今日も素敵な時間を過ごされますように。
願いを込めて。