阿修羅たちは微笑まなかった。向田邦子「阿修羅のごとく」感想。

 

 こんにちは! ららです。

 向田邦子さんの名作、「阿修羅のごとく」を読みました。

 1979年にNHKでドラマ化された作品で、2025年には是枝裕和監督によってNetflixで再ドラマ化されるとのこと。

 そんな話題の一冊に、期待を膨らませながらページをめくりました。 





 阿修羅のごとく(向田邦子原著)


 【あらすじ】

 2025年、是枝裕和監督により再ドラマ化。Netflixにて配信! 

 年老いた父に愛人がいた――。 

 四人の娘は対策に大わらわ。 

 だが、彼女たちもそれぞれ問題を抱えていた。 

 未亡人の長女は不倫中、次女は夫の浮気を疑い、 三女は独身の寂しさに心がすさみ、 四女はボクサーの卵と同棲、そして母は……。 

  肉親のエゴと愛憎を赤裸々に描き、家族の在り方を追求してきた著者の 到達点ともいうべき傑作。

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 ・感想:読み進めながら複雑な思いが浮かびました。

 正直に言うと、物語の空気感や登場人物の言動に、現代の感覚とは少しずれた距離を感じてしまいました。

 例えば、姉妹同士の激しい言い争いや、感情のぶつけ合いのシーンでは、昭和のドラマを彷彿とさせる「演出としての過激さ」が前面に出ていて、感情移入がしにくい部分もありました。

 姉妹同士の確執や、愛情とエゴが交錯する場面は多く描かれているのですが、全体的に人物造形がデフォルメされているようにも思え、どこか現実感が希薄に感じられてしまったのです。


 ・阿修羅とはいったい誰だったのか。

 タイトル「阿修羅」が意味するものーー

 それを探しながら読み進めましたが、物語の中でその言葉が出てくる場面はわずか。

 情念の激しさや女の業といったものが、描写の奥深くから滲み出る・・と言うよりは、むしろ軽やかにドタバタと進行していく印象が残りました。

 もちろん、それは脚本が原作という特性ゆえのテンポの良さでもあり、ドラマ的な面白さとも言えるのですが、文学作品としての情念の深さを期待していた私には、やや多足りなさを感じたのも事実です。

 ・ノベライズゆえの限界?

 もしかすると、これは原作が脚本という構成の宿命かもしれません。

 言葉の行間や心理描写の細かさよりも、テンポとセリフで物語が進むため、登場人物たちの内面にじっくり寄り添うことが難しかったのかもしれません。

 とはいえ、場面展開はテンポ良く、映像が浮かぶような構成で、まるでドラマを観ているような読書体験でした。

 女たちの心模様に惹かれる方、昭和の空気感に懐かしさを覚える方には、特に楽しめる一冊だと思います。


 Netflixでのリメイク版は、現代解釈が加わることで、また違った魅力が生まれるのでは・・と期待もしています。




 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 今日も穏やかなひと時を過ごされますように。

 ささやかな願いを込めて。



 

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