捏造という名の愛。「ベートーヴェン捏造」

 

 こんばんは! ららです。

 先週に引き続き、今日は映画のお話を・・・

 山田裕貴さん、古田新太さん主演の「ベートーヴェン捏造」を観てきました!

 いやぁ、面白かったですね!

 バカリズムさんの脚本も初めてだったのですが、評判よりも全然良いと感じました!


 ※この先は、ネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。





 ベートーヴェン捏造

 

 監督:関和亮 脚本:バカリズム 原作:かげはら志帆

 出演:山田裕貴、古田新太、染谷将太


 【あらすじ】

 19世紀ウィーンで起きた音楽史上最大のスキャンダルの真相に迫ったノンフィクション書籍「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」を、バカリズムが脚本を手がけ日本で映画化。 

 難聴というハンディキャップを抱えながらも、数々の歴史的名曲を遺した天才音楽家ベートーベン。しかし、後世に伝わる崇高なイメージは秘書シンドラーが捏造したもので、実際のベートーベンは下品で小汚いおじさんだった。かつてどん底の自分を救ってくれたベートーベンを熱烈に敬愛するシンドラーは、彼の死後、そのイメージを“聖なる天才音楽家”へと仕立て上げる。そんなシンドラーの行動は周囲に波紋を広げ、「自分こそが真実のベートーベンを知っている」という男たちの熾烈な情報戦が巻き起こる。さらに、シンドラーの嘘に気づきはじめたアメリカ人ジャーナリストのセイヤーが、真実を追及しようとする。(映画.comより)


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 ・レビューより断然良かった!

 数多くのレビューを読んで、もっと会話劇的な、悪く言えばお遊戯的な、少し退屈なドラマを想像していた。

 ところが、これが想像よりずっと良かった!

 意外にもシリアスで、しっかり作られている。ストーリーも骨太で、思いのほか深かった。

 まず、導入部が良かった! レビューでは「日本人の平たい顔によるウィーン捏造」と面白可笑しく書かれていたが、中学生の想像の世界から日本人(中学教師)によるウィーンのドラマが始まる、という自然な流れがいい。いつの間にか、ウィーン捏造の世界観に引き込まれてしまった。


 ・コメディかと思ったらどんどん深くなる。

 初めはコメディ的な要素もあり、ベートヴェンに邪険にされても、されても、子犬のように無邪気なシンドラーに思わず笑ってしまう。

 ところが、「ベートヴェンを悪くいう奴がいたら殺しかねない」と友人に指摘され、シンドラーの覚悟が決まったあたりから、物語は一気にシリアスへと転じていく。

 ベートーヴェンの暴露本を見て、慌てるシンドラーがまた良い。

 「英雄にエロオヤジだの、DV疑惑などはいらないのだ」と真剣に思い詰める件に、現代の卑劣な報道の問題と重なって、つい共感してしまう自分がいた。

 また、ベートーヴェンの第九をはじめとする挿入曲が素晴らしいのである。

 これだけ数多くの名曲を世に出した天才という前提に立つと、ベートーヴェンのイメージを守りたいというシンドラーの愛も、あながち異常とは思えずに、自然と説得力があるよもののように思えた。

 ついにはシンドラーは叫ぶのである。

 「現実なんてどうだっていい! 理想こそが真実だ!」 

 そして、資料の改ざん(=犯罪)へと手を染めていく。


 ・染谷将太のセイヤーがいいと大評判

 そんな止るところを知らぬシンドラーに、神が待ったをかけるように、アメリカ人ジャーナリストのセイヤーを送り込む。

 セイヤーはシンドラーに疑惑を持ち、資料を徹底的に6年がかりで調べる。

 そして、自分が抱いたベートーヴェンは偽物だったと怒りを爆発させるのである。

 このシーンが良い、セイヤーがすごい、と散々レビューで聞いていた。

 確かにとても良かった。けれど、私が感動したのは、あれだけのセイヤーの怒りも、シンドラーの覚悟の前には、全く及ばなかったという事実。

 また、ベートーヴェンがシンドラーに寄り添っている姿(幻影)を見たときである。

 心が震えるような思いがした。

 山田裕貴の愛とベートーヴェンとの絆を思い知った。打ちのめされそうだった。

 そういう意味では、山田裕貴が染谷将太を上回っていたと感じてしまった。

  

 ・そして最後の中学生のセリフが痛い。

 最後にドラマは中学校の舞台に戻る。

 この深い物語を知り尽くし、話して聞かせて、慈悲を持った意見を語った音楽教師は、しかし、中学の生徒にものの見事にペシャンコにされるのである。

 この中学生の意見が痛かった。

 まるで不注意で無慈悲な世間の象徴(=マジョリティ)の意見のようではないか。

 一瞬泣きそうな顔になる山田裕貴。

 おそらくシンドラーの愛は異常であり、世間には理解されないものなのかもしれない。

 けれど、あんなふうに、中学生のような無邪気で無慈悲な世間にはなりたくないと、心の底から思ってしまった。

 (この最後のセリフが狙った演出ならば、素晴らしい!)



 

 あなたもぜひ、捏造の愛の世界をのぞいてみてはいかがでしょうか。


 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 素敵な時間を過ごされますうに。

 願いを込めて。






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