「誰も知らない小さな国」(再読)、心の小山を訪ねて。
鹿児島県霧島市に、大雨特別警報が発表されました。
「いのちの危険が迫っているため、直ちに身の安全を確保してください。最大級の警戒をしてください。」(こちらより引用)
猛暑だったり大雨だったり・・、最近の気象の変化は、かつてないほど激しさを増しています。
人類が長い間、自然を傷つけてきたしっぺ返しのようにも感じられます。
開発と成長の名のもとに、壊されてきた数々の自然。そんななか、今回は「人間の事情から自然を守った少年」の物語を再読しました。
佐藤さとるさんの有名なファンタジー、「誰も知らない小さな国」です。
誰も知らない小さな国(佐藤さとる)
【あらすじ】
私たちが、すっと読み継いでいきたい物語。250万人が愛した、日本の小人(コロボックル)の物語、復刊!
ーーびっくりするほど綺麗なつばきが咲き、美しい泉が湧き出る「ぼくの小山」。ここは、コロボックルと呼ばれる小人の伝説がある山だった。ある日、小川を流れる靴の中で、小指ほどしかない小さな人たちが、ぼくに向かって手を振った。うわあ、この山を守らなきゃ!
日本初・本格的ファンタジーの傑作。
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・懐かしくて、愛しい小山。
自分だけの秘密基地を大人買いする少年の物語。「誰も知らない小さな国」。
子供の頃、この物語が大好きで、大好きで、図書館で借りたり、本屋で立ち読みしたり、かなり大きな少女になるまで、私は、いつも自分の「小山」を夢見たものでした。
小さいとはいえ、山を買ってしまうなんて、当時はありえないことでした。幼い私の目にスーパーマンのように映りました。すごいものだなぁ・・・
もちろん物語では、青年はコロボックルの守護者となるために小山を買うのですが、なぜか子供の私の目には、秘密基地の小山を買うこと自体がものすごく特異なことのように思えたのです。
今回、およそ40年ぶりくらいで、この本を本屋で見つけて、私はあまりの懐かしさに、あっ、と声が出そうになりました。
そして、読んでみて、小山の美しさ、愛おしさに心が締め付けられ、こんな小さな世界を自分は大切にしていたのか、と子供の頃の自分に驚かされました。
・やっぱり欲しい小山
「人は、だれしも心の中に、その人だけの世界を持っています。(中略)そういう自分だけの世界を、正しく、明るく、しんぼうづよく、育てていくことのとうとさを、わたしは書いてみたかったのです。」
これは出版時の佐藤さとるさんの「あとがき」です。
子供の頃の私は、誰も知らない小さな国の小山を持っていなくて、欲しくて、欲しくて、たまらなかったように思います。少年は手に入れて、しかも、大人買いして自分だけのものにまでしてしまうなんて、まるで別世界のお伽話のようでした。
それでも、ただのファンタジー小説とは割り切れなかったのです。
コロボックルという妖精のような小人の存在も素敵でしたが、それを含めての自分の世界を手に入れた主人公に、私は羨ましさを感じていたように思います。
子供の頃の私が自分の世界を持っていなかったのか、それともまがいなりとも何か持っていたから共鳴したのか・・・ 今となると分かりません。
ただし、自分なりの世界を「しんぼうづよく育てていくこと」の難しさは、身に沁みて理解したように思います。
この物語にも出てくるように、「小山」という場所は、例えば国の公共の道路を作るために、あっという間に壊されかねない繊細な場所だからです。
そこに誰も知らない小さな国があろうとは気づかれないまま、あっけなく失われてしまう数々の「小山」たち。
そして、数々の私たち。
今もなお、私の心の中の小山が生きていてくれているのか・・ 自分でも疑問に思いながら、それでも、この本を手に取った偶然に感謝して、誰も知らないその場所に住んでいるコロボックルたちのことに思いを寄せながら生きていきたいなぁ、なんて思ったりしています。
・冒頭のニュースに戻ると・・・
冒頭のニュースに戻りますが、「いのちの危険がある大雨」・・・昔の私には想像もできませんでした。
都市部では日照りが続き、地方では大雨が人々の暮らしを脅かす。
なんという時代になったのでしょう。
どうか皆様、まずは命を守る行動を。
そして、それぞれの心の中にある「誰も知らない小さな国」を、これからも静かに、大切に育てていけますように。
それはきっと、自然を守ることにもつながると信じています。
今日も読んでくださり、どうもありがとうございました。
心あたたまる時を過ごされますように。
願いを込めて。