立秋とコメ問題と「希望のゆくえ」。
今年は記録的な猛暑と少雨が続き、コメどころでは深刻な影響が出ているそうです。
ダムは貯水率が下がり、水田はひび割れが・・。(こちらより)
そんな暑さの中でも、暦の上ではあと5日ほどで「立秋」。
もう秋なんですよね・・
現実との乖離に、思わず苦笑してしまいます。
さて今日は、誰からも愛されていた弟が、ある日突然姿を消す、そんな不思議な物話を読みました。
謎に引き込まれて、ついついページを捲ってしまうタイプの作品です。
皆さまも、ふと失踪したくなったことはありませんか?
現実と理想のギャップに押しつぶされそうになるとき、ふと頭をもたげるその気持ちは、立秋と猛暑の関係にも似ているかもしれません。
希望のゆくえ(寺地はるな)
【あらすじ】
誰からも愛された弟には、誰も知らない秘密があった。突然姿を消した弟、希望(のぞむ)。行方を追う兄の誠実(まさみ)は、関係者の語る姿を通し弟の持つ複数の顔を知る。本当の希望はどこにいるのか。記憶を辿るうち、誠実もまた目をそらしてきた感情と向き合うこととなるーー。
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・タイトルも面白い物語の感想は・・
タイトルがとても巧妙です。
「希望(のぞむ)」という名の青年が、突然いなくなる。
その姿を追う物語のなかで、「希望(きぼう)」が消えてしまい、そのものを探すような構造が見えてくるのです。
だから私は、つい「希望(きぼう)のゆくえ」と読んでしまいました。
このタイトルの二重性が、物語全体に深い余韻を与えてくれます。
・弟を探すことで、自分自身に向き合う兄
兄・誠実(まさみ)は、失踪した弟を探すために、知人に話を聞き、探偵を雇います。
調べるほどに浮き上がってくるのは、「誰にでも優しくて、誰でも受け入れる」まるで聖人のような弟の姿。
けれど・・・
実は弟自身が、自分を「核のない、空っぽな箱のような人間」と感じていたことが明らかになるのです。
この部分が、私にはとても印象的でした。もしかすると「空っぽ」というのは、悪いことではないのかもしれない。
私という箱は、自我や欲でいっぱいになっていて、まるで詰め込みすぎた強欲ババアみたいになっているのではないかな、とそんな思いがしました。
人を受け入れる余白を持っていること。
未来の可能性を内包していること。
「空っぽ」には、そんな肯定的な意味もあるのかもしれません。
ラストで希望は、そんな自分を見つめ直し、空の箱に宝物を見つけるための旅に出ていきます。
その風が吹いたような爽快さと、人生の「本当の希望」の美しさに、私は心を奪われました。
「本当の希望」というのはもしかしたら、一度自分の心を空にして、新たな人生に向き合う覚悟や決断ができたときに、ふと訪れてくれるものなのかもしれませんね。
・そして、冒頭に戻ると・・・
胸が締め付けられるような深刻さを感じます。
またコメ不足になって、お米の値段が上がりっていくかもしれません。
心から願います。どうか、雨が降りますように・・・
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
今日もまた皆様にとって素晴らしい1日となりますように。
願いを込めて。