推しと結婚、そしてジョゼへーー田辺聖子の魔法。
こんにちは!
カズレーサーさんと二階堂ふみさんが電撃結婚されたそうです。
数年前に二階堂ふみさんが、「顔が好きです」とカズレーサーさんに公開告白したことがきっかけだったとか。
推しと結婚!なんて、いいですよね?
さて、最近また「愛と男女の関係」を書いた作品に心惹かれることが多くなり、かつて私が子供の時分から、大活躍していた作家、田辺聖子さんの本を手に取りました。
ハイミスが年下の男の子と結婚する、という新ジャンルを築き上げ、それらの作品群は一世を風靡した記憶があります。
みなさん覚えておられますか・・・?
「ジョゼと虎と魚たち」(田辺聖子)
【あらすじ】
車椅子がないと動けない人形のようなジョゼと、管理人の恒夫。どこかあやうく、不思議にエロティックな関係を描く表題作のほか、さまざまな愛と別れを描いた短篇八篇を収録した、珠玉の作品集。
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・打ちのめされる作品群
田辺聖子さんといえば、昭和47年の芥川賞作「感傷旅行(センチメンタルジャーニー)」が思い浮かびます。
私はこの作品がとても好きでした。ずいぶん大人になってから読んだ、古い作品ではありましたが、それでも、その男女の機微の豊かさと激しさに衝撃的な新しさを感じて、打ちのめされた記憶があります。
「たとえ人生何度生まれ変わっても、こんなものは一生書けない」ーーそう思って、自分の才能のなさに打ちひしがれました。それくらい、すごい才能だと感じたのです。
田辺聖子さんの作品はかなり多く読んできました。TVのメロドラマ風のライトなものから、男女の関係を官能的に描いた鋭い作品まで、幅広い世界を楽しませていただきました。
そんな中、今回初めて読んだのが「ジョゼと虎と魚たち」です。
この作品はあまりに有名で、多くの人に知られているがゆえに、昔からの田辺ファンを自認していた私は、少し敬遠していました。
ですが今回、初めて読んでみて、何十年ぶりかにまた打ちひしがれてしまったのです。
・クレバーに人生を謳歌する主人公が魅力的
田辺さんの描く女性主人公たちは、とてもクレバーです。とにかく賢い。
そして、家庭への義務感や社会的な道徳感といったモラルがほんの少しだけ足りない気がします。
だからこそ、彼女たちは貪欲に、徹底的に賢く、人生を楽しむことだけに集中しているのです。
食事とお酒と旅、そして恋愛。
人生を楽しむために欠かせない重大な要素のひとつとして、恋愛が描かれます。
賢い主人公は、家庭や子供と引き換えにしてでも、恋愛を楽しむことを選びます。
その潔さ、そして人生を謳歌する姿勢には、感嘆せずにはいられません。
男女間の機微(きび)、まるで共犯関係のような懐の深い描き方には、やはり田辺作品らしい味わいがあります。
こんなふうに人生を楽しむことは、なかなか真似できない、老女になってもなお、私はまだまだお子様だ、とついうっかり思わされてしまいます。
それがきっと、田辺聖子ワールドの魔法なのだと思います。
この、楽しくて賢くて、そして深い男女関係・・エロティシズムも含めて・・に到達するためには、いったい何度輪廻を繰り返せばいいのか、想像するだけでげっそりしてしまいます。
それでも意外なのは、田辺聖子さん自身が「醜女」(本人談)だったという点です。
まさか想像だけでここまで書いたのか?・・・
そんなことに思いを馳せると、またしても田辺聖子作品に対して、私は新たな驚異を感じずにはいられないのです。