不幸の果てに見えた光、「純と愛」が教えてくれたもの。
こんにちはー! ららです。
13年前のNHK朝ドラ、「純と愛」。
私は大好きでしたが、朝ドラ史上最悪との評価もある物語です。今回、完全版DVDを買い、1ヶ月くらいかけて全部再視聴いたしました。今日はその感想を書きたいと思います。
いやぁ、何度見ても面白いドラマでした。
前世で何の悪いことをすれば、ここまで不幸になれるの? と思わず嘆きたくなるような、まるで神に愛されていない人間の愛の物語です。
純と愛
作・脚本:遊川 和彦
出演:夏菜 風間俊介 武田鉄矢 森下愛子 速水もこみち 渡部秀 城田優 志賀廣太郎 矢島健一 や乃えいじ 吉田羊 黒木華 岡本玲 高橋メアリージュン 若村麻由美 堀内正美 平良進 舘ひろし
【あらすじ】
宮古島で育った純(夏菜)は、幼い頃祖父のホテルに行き、すべての訪れた客を笑顔にする「魔法の国」に出会った。大人になり、祖父のホテルを継ぎたいと願うが、父と衝突して大阪へ。彼女は、自分の力で、いつか「魔法の国」を作ろうと決意する。そして運命の相手、愛(いとし・風間俊介)と出会い、二人で夢を分かち合いながら、共に様々な試練を乗り越えていく。
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・感想は・・・異色の朝ドラ?
感想を一言で言えば、このドラマは、NHKの朝ドラの枠を超えた、挑戦だったと思います。
まずWヒロインなんですよね。それから珍しくナレーションがない。そして、主人公の一生を描かず(幼い頃の回想シーンはあり)、若い二人のちょっと過激な物語なんです。
特に、主人公の愛(いとし)が超能力者のような読心術の才能を持った青年という設定からして、爽やかなNHK朝ドラらしくありませんでした。
最後に、ラストが一般的なハッピーエンドではありません。不幸のどん底で終わります。この結末はいまだに、見た方達から、「史上最悪だ」と評価される所以だそうです。
私から見た率直な感想は、「こんなドラマ作っていいの?」というものでした。
多分、当時「女王の教室」や「家政婦のミタ」でヒットを飛ばしていた遊川さんにNHKが脚本を依頼したものだと思います。純と愛の直後にクドカンさんの「あまちゃん」が始まったところを見ると、NHKも朝ドラに力を入れて「攻めていた」時代だから成せた技なのだと思います。
・私がこのドラマで感じたこと。
純は魔法の国を作ろうとして、4度失敗しています。しかもそのどれも、やっと従業員のみんなが一致団結できて、ホテルとしての成功体験を味わい、多幸感に満たされた直後に、地獄へ叩き落とされるように、失敗しているのです。
その度に再起不能に陥る純。その時の純の呟きはこんな感じでした。
「私のホテルはみんな潰れてしまう・・・」
「どうして、私(だけが)こんな目に遭うの?」
悪いこともせずに、真面目に、正直に(※)、一生懸命生きているものが報われない世界。
※純の性格は「女版坊っちゃん」という設定だそうです。
その世界観の恐ろしさに全てを放り出しそうになっても、それでも純は毎回立ち上がります。なぜなら、純には愛がいるから。
どんなピンチの時も、ダメになりかけた時も、いつでも愛が助けて支えてくれました。
私は、これはありがちな、試練に襲われる二人が、「力を合わせて試練を乗り越えていく感動物語」なんだな、と思って見ていました。
悪く言えば冷めてもいました。独り者の自分には関係ないと。
ところが、なんと終盤に、愛が脳腫瘍であることが判明し、手術の後、意識不明の寝たきり状態の存在となってしまいます。
その直前の愛の悲痛なつぶやきはこんな感じでした。
「どうして僕がこんな目に・・・」
「他に、病気になってもいいやつ、いるだろう・・」
ここでも、悪人が蔓延って、善人が報われない世界が訪れるのです。
人々を笑顔にしたい、魔法の国を作りたいと、一心に人々の幸せを願う二人、なのに、自分たちはその笑顔から一番遠いところ、まるで地獄の国へといつでも放り出されてしまいます。
愛は2時間に一度、床ずれしないように体勢を変えたり、世話が必要な相棒となりました。
もう目を覚まして、純を助けたり支えたりもしてくれません。
世間的に見たら、純のお荷物。登山で言えば、人生の荷、重い負荷です。
二人で乗り越えるどころか、一人プラスマイナス一人で、どうやって今以上の試練に耐えていけというのか・・
作者の遊川さんは、「純のような人が頑張っていると思って元気になって欲しい」と思ってこの作品を作ったそうですが、あまりにも主人公を地獄へ突き落としすぎて、もはや見ているのが辛い状態になりました・・
・それでも名作だと思う理由。
それでも、このドラマは素晴らしいんです!
このドラマを通して、人間って素晴らしいと思えた・・・
それは、不幸だらけの純がいつの間にか、直情的な純らしさを潜めて、まるで仏のような顔つきに、いい意味で変わっていくところです。
試練が人を強くした。
人は苦しみの連続の中で成長するんだ、と感じました。
そして、眠り姫となり医者からも見放された愛の存在を、純が生き甲斐として、未来の希望として捉えている、ということに気づいたときです。
人生の荷なんかではない、愛はいないかも知れない。それでも純と愛は二人なんだ、と感じられました。
最後に、純は、たとえ愛がこのまま目を覚まさなくても、魔法の国を諦めず、何度でも立ち上がって生きていこう、と決意します。
何度もホテルが無くなった。しかもそれは自分のせいだったかも知れない。そして愛する人もいなくなった。それも自分のせいかも知れない。
それでも、魔法の国を目指して生きていこう。
神様なんていない。けれど、奇跡は人が起こすんだ。
一人でも多くの人を笑顔にして生きていこう。
そう決意して、自分の足で立ち上がって、物語は終わります。
ああ、人間ってなんて素晴らしいのか、と深く感動してしまいました。
神のいたずら、もしくは、むごい運命に繰り返し翻弄される純と愛という物語は、NHK朝ドラにはあまりそぐわない物語だったかもしれません。
良くも悪くも、ふわっとしていなかった。
評判が悪いのも頷けます。
ですが、ギリギリに追い詰められた人間の尊さを描き、人間讃歌を謳った。涙ながらには見れない、NHK朝ドラ史上最高の名作だと思います。
本当によく作ったと思います。そして、よくぞ作ってくれました。
制作、出演してくれたすべての方に感謝したいです。
というわけで、今日は純と愛のDVDを大人買いして、全部見た、というお話でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
あなたの今日が、心あたたまる1日となりますように。
願いを込めて。