「朽ちないサクラ」と登山者たちの選択。



 こんにちは! 
 GWも終盤ですね、いかがお過ごしでしょうか。

 
 この休暇中に、長野県や山梨県で山岳遭難が相次いでいます。

 どちらも遺体が見つかって、深刻な事態となっているようです。

 私も登山が好きですので人のことは言えませんが、これだけ国民的なスポーツとなったせいか、皆が難しい山に、多少無理をしてでも登ろうと苦心しているように思われます。

 そして、これだけ事故が増えた背景には、人との競争意識や、優越の判断に利用されている一面があるのかと思えてなりません。
 もう少し、他者や世間に影響されない、自分だけの道を、慎重に見つめた方がいいように思います。

 己の道を知ることはとても大切です。

 さて、今日は、そのような自分の道を、改めて考えさせられるような物語を読みました。
 柚月裕子さんの渾身の一作、「朽ちないサクラ」です。






 朽ちないサクラ (柚月裕子)


【あらすじ】

 警察のあきれた怠慢のせいで ストーカー被害者は殺された!? 
 警察不祥事のスクープ記事。新聞記者である親友に裏切られた……口止めした森口泉は愕然とする。情報漏洩の犯人探しで県警内部が揺れる中、親友が遺体となって発見された。警察広報職員の泉は、警察学校の同期・磯川刑事と独自に調査を始める。
 次第に核心に迫る二人の前にちらつく新たな不審の影。
 事件の裏には思いも寄らぬ醜い闇が潜んでいた……。(Amazonより)

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 ・感想は・・

 面白い。柚月裕子さんの筆力のなせる技だと思いますが、真相に辿り着くまでの闇がいつも深い。真犯人や黒幕の存在が、一見すると陰謀論ようでありながら、リアルな説得力をもって浮かび上がってきます。本作品も警察組織の裏側を描いて、本格的ミステリとして堪能できました。

 ただし、柚木作品の前提として、主人公の一番の味方(事件を共に解明する相棒)だけは絶対に裏切らない。そういう姿勢が一貫してあるので、安心して読めるし、読んだ後に人間不信になったり不快な気持ちになったりすることはない。むしろ人と人との関係性のあたたかみを感じて、読後感がいいです。


 ・印象に残った点

 主人公が満開の桜の幻想を見るシーンです。果てしない時を経てきた老木の桜が、景色を埋め尽くし、主人公を息苦しくさせる刹那がたまりません。

 これは、警察組織の真犯人(黒幕)が桜をこの国になぞらえて、国体の大切さを若い主人公に教え諭しているシーンでの幻想なのですが、まるで一面の桜が、マジョリティの象徴であったり、同調圧力や、正義の強制とも映ります。

 あまりにも美しくて、不気味な老木の桜が魔物のようにも感じられます。

 

 ・最後に・・

 朽ちない桜のように、前を向いて生きていこうとする主人公が逞しく、好ましく感じられました。気高い日本の心を持って、朽ちずに生きていこうと思わされました。

 なんとも言えず、この国で生きていくことの大切さを教えられる一冊だと思います。

 ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。


 ・最初の登山ニュースに戻ると・・

 登山は人生勉強を兼ねているというのが私の持論です。

 しかし最近は、SNSによる背比べかマウント取りのような「幸せ自慢」に疲れてしまって、山に登りにいく気が失せているのも事実です。

 まるで一面の桜に息苦しくなる一方で、「朽ちないサクラ」のような私だけの登山を見つけたいと思う気持ちも生まれてきています。

 復帰する暁には、無理のない、死亡事故のない登山を目指したいですね。



 では、今日も最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。


 あなたの時間が温かいものとなりますように。

 心を込めて。










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