おひとりさまを否定する。「私をくいとめて」


 こんにちはー
 
 ゴールデンウィーク始まりましたけど、のっけから天気悪いですね。もっとひどくなるみたいですよ。地震が来るという予報?もあります。
 買い物と散歩に行こうと思っていたのですが、おうちでのんびりすることにします。

 さて、時間があるときにすることといえば、おうちmovieですね。
 またかよ、という感じですが、もうコロナ、ひどくなるばかりですからね。死者数、いつの間にか1万人超えていました、驚き。なので、おとなしくおうちmovieです。
 今日は、のんさんが主演の邦画を観ました。

 


 この映画、32歳のお一人様の女性が主人公です。
 「おひとりさま」を満喫しすぎて、脳内に相談役「A」が「爆誕」してしまった、という・・・おひとりさまの孤独や危うさを皮肉った設定なのですが、いやはや。脳内に相談役って、でも普通にいますよね? この映画のように人間の言葉で友達みたいに会話はしてくれないかもしれませんが。
 えっ? いないって?

 ・・・・・・・・。



 「私をくいとめて」

 大九明子監督。綿貫りさ原作。のん、林遣都、臼田あさ美、橋本愛出演。

  【あらすじ】

 30代のミニお局の黒田みつ子はおひとりさまがすっかり板についてきた。休日になると一人でイベントに参加したり、おひとりさまチャレンジと称して一人で入りにくい店に行ってみたりとおひとりさまを満喫している。それもそのはず、彼女には頼もしい相談役がいた。その名も「A」、脳内で彼女に語りかけてくれる男性である。「A」は、私はあなただという。なので、いつでも彼女の味方であり、彼女を傷つけることも孤立させることもしない。このままAとの楽しい生活が続くと思われたが、ある日彼女は自分が年下の取引先の青年に恋をしていることに気がついて・・




 芸能界を干されてから地道に活動しているのんさんの独壇場の映画です。脳内のAとの会話のシーンが多いので、ほとんどが彼女の一人芝居、そんなシーンがずっと続きます。
 アマゾンレビューで「怪演」と書かれていた方がいましたが、ほんとそんな感じ。演技派女優なのだということがよーく伝わりました。芸能界を干されてから一線を退き、この映画も話題にならなかったと思うのですが、返す返すも残念でなりません。いい女優さんですよね。

 主人公は、おひとりさま歴が長いだけあり、感情を表現するのが下手な子なんですよね。なので、いつもは感情を押し殺したような棒台詞でしゃべります。ところが、突然感情が爆発して、豊かな表情で言葉を吐き散らかす。もう変化自在ですよ。すごいわぁ。なのに、存在感に透明感があるから、毒がない。のんさんの魅力がぎっしり詰まった映画でした。





 物語の方は、そんなちょっと不思議系のミニ年増みつ子が、じれったい恋をする物語。年下の「多田くん」は奥手なのかデートに誘ってもくれず、そのくせ図々しくみつ子の家に「夕ご飯」だけをもらいに来る始末。何を考えてるかさっぱり、つかみどころがありません。
 Aは、「多田くんはきっとあなたのことが好きですよ。勇気を出して」と言ってくれます。なので、勇気を出して一歩踏み出そうと決意するみつ子。




 この辺まではハラハラしながら楽しく観れていたんですけどね。
 みつ子と同調してくれる先輩お局のノゾミさん(臼田あさみ)の存在もとてもいいです。みつ子が「おひとりさま」が完成するまでやってこれたのは、この会社内のノゾミさんのおかげだったことが語られます。
 やはり脳内の相談役もいいけれど、会社に味方が一人でもいないと難しいですよね。

 ところが、この映画、じれったい恋愛もの路線を急に離れてしまう。みつ子の過去が語られ始め、その演出のために「温泉旅行」と「イタリア旅行」が(恋愛映画の間に)挟まれるのです。




 この辺りから、共感できずに、ちょっと白けてしまいました。のんの怪演爆発して、ほぼ顔芸の世界になります。
 「おひとりさま」の世界を完結するまでに、辛いことがあったのねぇ・・・というのはわかりますが、「あるある!」「私もねぇ」とはならずに、ほぼ白けて「あらあら大変ねぇ」と割と冷めて見てしまいました。
 あれ共感できる人いるのかなぁ、まぁ、唯一無二の友達がいるイタリアに行ってまで、おひとりさまで観光をする主人公には、思わず身につまされるものがありましたがね・・・




 ちなみに、唯一無二の親友は橋本愛が演じています。この共演には「あまちゃん」を思い出してニンマリ。やっぱりこの二人のツーショットは最高ですね。橋本愛綺麗だった!




 「女の敵は女」のようにどこかで感じていたみつ子ですが、帰国してからは女の上司にも親近感を覚えるようになります。成長ぶりが描かれます。




 そして物語は恋愛編最終章へとなだれ込むのですが・・・・




 まぁ、おひとりさまで完結していた世界観を手放して、他人を受け入れるには、自己が未完であることが必要だと示唆しているようです。多田くんとの仲が進展するにつれて、脳内の相談役「A」は影を潜め、そして最後には消えてしまいます。




 この「A」との別れがちょっと切ない。
 てか、「A」って何者? 「私はあなただ」と言っていますが、完全に人間の言葉を使ってみつ子とおしゃべりをするんですよ。時には体をハイジャックして、自分の好みの服を買ったり、みつ子がパニックを起こしたときは耳を塞いでくれたり、鍵をなくしたときはそっと鍵束を(棚から)落として教えてくれたり、妄想とは言えない力も示したりするのです。

 私が想像するに・・・守護神が具現化したもの。宇宙的な何かの存在ではないかと思いますが、どうでしょう。太古の昔の人間にはみんなこんな「A」のような存在が身近にいたように思います。進化とともに退化して、なくしてしまった人間本来の能力なんじゃないでしょうかね・・違うかなぁ。

 そんな才能を持った「おひとりさまみつ子」思えばすごい主人公ですよね?

 ですがね・・・・ この映画を見ていて、このままみつ子がずっとおひとりさまだったらどうなるだろう、とつい想像させられたんですよ。想像させてくる映画なんです。もし、ずっとおひとりさまだったら・・・・ それは、恐ろしい孤独だなぁ、と。お局のノゾミさんが寿退社をしてしまったら。一人残されたら。そう思うと、身につまされてゾッとしたというのか。
 みつ子が多田くんと寿退社できなかったときの未来を思うと、あまりの不幸に背筋が凍る思いがしました。

 「人間社会」で幸せを掴むためには、たとえ人間古来の超能力であろうとも「A」と一緒にい続けることはしんどいだろうな、と思ってしまったんです。

 「A」、宇宙的な何か、ごめんなさい。

 いやいや、この映画がおひとりさま賛美ではなくて、おひとりさまを否定しているからそう思えてしまったんですよ。

 私だったら・・・ 自分はずっとおひとりさまの世界を完結していますからね、「人間社会における幸せ」よりも「A」との世界を選ぶとは思いますが。

 いやはや、でもそれは、一般的に考えて、「人間社会」において、かな〜り不幸な選択肢なんだなぁ、という現実はよくよく理解させていただいた映画ではありました。

 あなたは幸せですか?
 脳内に相談役の「A」が欲しいですか? それとも今のパートナーで十分ですか?

 何かモヤモヤしたときに、見てみると面白いかもしれません。
 アマゾンで無料なので、目を通してみてくださいね。


 というわけでまとめです!
 
 脳内に「A」という相談役を持つ不思議系ミニ年増が主人公の物語を見たら、おひとりさま賛美にみせかけて、全おひとりさまを絶望させる映画だったので驚かされた! おひとりさまは見ないほうが賢明! しかし「多田くん」よりも「A」が欲しい人は見てみても良いかも!
 「人間社会」で幸せを掴むためには、何か大切なものを捨て去らないといけないんだなぁと実感した映画でした。
 のんさんの怪演と顔芸が光ります! 脇役陣もお見事でした。



 ではでは、今日も素敵な時間を過ごされますよう。
 願いを込めて。
 



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