四角と丸の融合、失われた自己を求めて。「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」

 
 こんにちは!

 一昨日、誕生日を終えてまた一つ歳をとった私です。中年と言える層にとうに差し掛かり、貫禄さえ出てきた最近ですが、30代は辛かったなぁ。
 なんでも切り替えの時期は辛いですよね。
 中年のなりたて、若者から中年へシフトする時期というのは、人生で一番シンラツな波が襲ってきたように思います。

 今日見たおうちmovieは、そんな中年男子たちの奮闘記。人生どん底の時期に差し掛かった彼らが、シンクロナイズドスイミングを通して、這い上がっていく物語です。

 これ、シンクロで人生の荒波に打ち勝つ様子を描いていますが、シンクロじゃなくてもいいんだろうなぁ。仲間がいること、夢中になれる何かを見つけること、そういったことがどれだけ素晴らしいことなのか思い知らされたような気がします。

 興味を持った中年男子の方、よかったらぜひ見てみてくださいね! アマゾンで無料です!





 「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」

 ジル・ルルーシュ監督。マチュー・アマルリック、ギョーム・カネ、ブノワ・ポールヴールド出演。


 【あらすじ】

 うつ病を患って薬漬けのベルトランは、かれこれ2年間引きこもり生活を続けている。就職活動をするもののうまくいかず、子供達からもバカにされる日々。ある日、市営プールで男子シンクロナイズドスイミングのメンバー募集を目にして、不思議と心を奪われた。思い切ってチームに参加してみると、そこは人生の問題に直面した中年男子ばかりで・・・

 



 フランス映画なんですよね、これ。ハリウッド映画を見慣れていたので、はじめにフランス語のナレーションが飛び出した時はぎょっとしました。

 「これは、曲線が直線になる物語。四角は四角四面に丸を追い出す・・・」

 ビルやデスク、人間社会に象徴されるものは四角が多いんですって。丸い地球に生まれてきた私たちは本来丸い存在らしくて、若者や欲望に象徴されるものには丸が多い。
 人生は丸が直線(四角)になる過程だ、と言いたいらしいんです。
 このナレーションから始まるオープニングがおしゃれでね。
 あらまぁ、フランス映画ってこんなに芸術的だったかな、って初めからもう感動しちゃってましたよ、笑 物語見る前から。




 物語の方も面白いんです。個性的なキャストがいい。まず魅力的なのがシンクロのコーチ、元シンクロの選手ですが、アル中になりリタイアして、現在は煙草をバカバカ吸う詩人。
 愛のおかげで立ち直った、と依存症を克服するサークルで告白するものの、実は愛人からストーカー扱いされているという・・
 こんな煙草の似合う人いないんじゃないかなぁと思うくらいいい。デカダンスです。フランスには未だに煙草バカバカの風習が残っているのかな、と思うくらいよく映画で目にしますね。やっぱり煙草という小道具は映画にとって欠かせないような気がしてしまうくらい最高です。
 
 それから、ダメダメの中年男子たち。




 シワが気になったり、メタボだったり、娘にバカにされていたり、童貞だったり・・
 会社が倒産しそうだったり、妻に逃げられてしまったり、そしてうつ病だったり。

 あー、あるある。的な人生の中盤に差し掛かった時期の問題が山積みなんです。いえ、どちらかというと、あるあると思うのは人生の負け組のところかな? 彼らはみんな負け組、自信がなくて、ただ楽しければいいとシンクロをしている。

 ところが、どん底が見えてきたあたりで、シンクロに情熱を注ぐ決意をするのです。



 フランス代表として、世界選手権にエントリーすることになりました。

 あれですかね。人というのは、仕事や家庭とバランスが取れている時は、趣味は趣味になってしまうんでしょうかね。ところがひとたび仕事や家庭のバランスが崩れて、他には何も無くなった時に、俄然、趣味は生き甲斐と化す。

 これって当たり前のことでした? 逆を言えば、凡人ではなくなるためには、つまり何かを成し遂げる人になるためには、仕事も家庭もダメダメならいいんですよね。何かを手に入れるために何もかも捨て去る人に、神はほほ笑む。

 なんかふとそんなことを思ってしまいましたよ。
 幸せなうちは、成功なんてしないんだなぁ。




 映画から離れてしまいましたが、一念発起したダメダメ中年たち、失恋で引きこもってしまった詩人に変わってコーチになった車椅子の女鬼コーチからシゴかれます。
 「あいつを殺したい」とまで言うものの、めちゃくちゃ頑張ってシゴかれます。




 念願の詩人コーチも復帰して、満を持して、フランス代表として世界選手権に。
 フランス代表というのは自称です。実はとってもローカルな大会。翌日新聞記事の三面欄にも載らなかったくらいの。

 それでも彼ら、頑張るんです。
 四角い人生から、自分たちの丸を奪い取るのです。





 競技が始まる前までは、ダメダメの演技が目に焼き付いていたので、どうせダメだろうと思ってたんですが、いや、これがなんの。
 鬼コーチの練習が功を奏したようで、なかなかの演技で感動しました。
 演出や照明も良かったんでしょうね。上手いだけなら他の国に劣っていたかもしれません。ですが、彼らのダメ人生を賭けた丸パワーで、(ショーとして)成功したという感じの演技だったんです。

 最後にこの満たされた顔(写真下)。



 すっかり自信を取り戻したようで、人生のどん底からも脱出。

 仲間っていいなぁ、とか。夢を持つのってやはり大事だな、と考えさせられた映画でした。


 人生に疲れたとき見るととっても元気になると思います。

 フランス映画のデカダンスぶりも面白いので、良かったらぜひ見てみてくださいね。


 というわけでまとめです。

 四角四面の人生から丸い自己を取り戻すというフランス映画を見たら、そのデカダンスぶりと中年男子の奮闘ぶりがめちゃくちゃ面白くて感動した!

 やはり人生は仲間がいて、夢があって、ナンボ!

 人生で物事がうまくいかなければいかない時ほど、何か別のことで突き抜け、成功する可能性を秘めているのだと実感させられた!

 疲れた時見てみると元気になる映画。オススメです。



 ということで。

 今日も素敵な時間を過ごせますよう。

 願いを込めて。