正しい人間はどこにもいない、自分さえも疑ってかかれという超悶絶面白ストーリー、「ミスト」

 

 こんばんはー

 私事ですが、昔からスティーブン・キングが好きなんですよね。物凄いストーリーテラーだと思っていて、彼の原作の映画はどれも面白い! ストーリーに引き込まれます。

 なので、アマゾンプライムおすすめ映画ではなかったのですが、「ミスト」というスティーブン・キング原作の映画を観てみました。

 すると・・驚きました。過去に私が書いていた「ストーリーのセオリー」に反するストーリーが、反しているからこそ最高のオチになっているという、してやられた感の最高のストーリーを見せていただきました。


 過去に私が書いたストーリーのセオリーはこちら↓ ↓

 ノアの方舟を探して

 簡単に説明すると、ハリウッド映画は自然災害や外敵と戦う物語が多い。その際に、必ずストーリの中で通過するセオリーがある。外敵と戦う前に、必ず仲間が狂気に陥り、まずは仲間を倒さないと先に進めないという点だ・・・というような記事です。


 ミストという物語も、霧の中の化け物という外敵が出てきます。この敵と対峙する前に、人間たちが(物語ではスーパーマーケットに閉じ込められた集団です)分裂してしまう。リーダーをめぐって、カルト狂信者軍団が主人公軍団に襲いかかります。

 ここまでは、「ノアの方舟を探して」で書いたセオリーと同じなんですけれど、結末が全く違いました。アマゾンプライムのレビューでも読んだんです。主人公たちこそがカルト集団だ! つまり、狂気に陥った悪役こそは主人公たちであることを。

 それなのに、映画を観てみると、すっかりそのことを忘れてしまうほど、主人公たちに共感してしまうんですね。これは外敵との戦いじゃない、人間どもの戦いだと。リーダーにふさわしいのは誰なのか、と描いた人間社会のバトルの物語であると。

 で、もちろん主人公を正当化してみていた私、ラスト15分で愕然としましたよ。なんじゃこりやー(古いですが)とね・・・・いや、だからアマゾンプライムのレビューで知っていたじゃないか。自分を正当化して生きているとこんなしっぺ返しが待っているんですよ・・・

 いやーこわいですね・・・




 「ミスト」
 フランク・ダラボン監督。 トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローリー・ホールデン主演。

 【あらすじ】
 ある嵐の夜の後、空を覆う霧が現れて街を飲み込んだ。買い物に出かけていたデヴィッドは息子とともにスーパーマーケットに閉じ込められる。なんと霧の中かからは軟体動物や昆虫が巨大化したような化け物が現れて、スーパーマーケットの集団たちに襲いかかるのだった。知恵を結集して戦う人間たち。しかし、いつしかリーダーをめぐっての分裂が起こり・・・



 
 この主人公のデイビッドが絵に描いたような正統派ヒーローなんですよね。謙虚で、頭が良く、他人想いで、正義感がある。ついつい、彼に感情移入してみてしまうんです。

 それに対して、カルト信者集団のカーモディ夫人らが悪役として描かれる。彼女たちは、この禍は天の怒りだとして、生贄を捧げようと言い出すのです。軍人の若者の肉体や、デイビッドの息子を化け物に捧げようとするカーモディ夫人。襲いかかる彼女の信者のゾンビ集団。ついにデイビッド派の一人がカーモディ夫人を殺してしまい・・・・・

 カーモディ夫人を殺しちゃうのは行き過ぎですが、主人公の息子を化け物の生贄にしようと言い出して襲いかかられたら、仕方ないかなぁ、正当防衛ですしね。
 人間社会の争いを見ているようで、さもありなん・・でもデヴィッド集団は概ね正しいとラストまで思い込んで見てしまいました。人間の思い込みって凄いですね。ラストにデヴィッドこそがカルトだと知ったときは、ありゃりゃ・・・・と。

 言い訳をするようですが、スーパーマーケットを出て、街に飛び出してみれば、そこはもう廃墟なんですよ。世紀末のような人間文明が終わりを告げたような世界。それならば仕方ないかなぁ、と思っちゃったわけですよ。



 ほんと人間の思い込みって怖い。そして、主人公に感情移入して、自分を正当化してしまうことの恐ろしさ。

 自分こそが正しいと思って生きていると、こんなしっぺ返しが待っているんだな、とぞっとしました。あの正しそうなデヴィッドさえこんな憂き目にあうのですから、絶えず自分の行動を疑って生きていかないと、凡人は道を誤っても気がつきかねませんね。


 これはスティーブン・キングの原作の妙なんだなぁ、としみじみ思いましたよ。

 してやられた・・・結末がわかっていたのに騙された、といった感じがしました。

 やはりスティーブン・キングの作る物語は最高だわぁ・・

 面白い物語を見たい方、人間社会のバトルをプチ体験したい方にオススメです。

 アマゾンのレビューでは、主人公の方がカルトで悪役だったと結論づけている方が多かったのですが、私的に感想を述べると、全員が間違っていると思います。正しい人間はいないんだなぁ、と改めてぞっとしました。誰かを信奉したり過度に思い入れて追随してもダメ、自分の判断力を過信しすぎてもダメ、全てを疑って選択していかないと、後でとんでもない絶望が待っているという気がしました。

 そう・・・ ラストに、子供を守る母親が出てくるんですよ。伏線なんですね。冒頭に出てきて、デヴィッドらに助けを求めるんですが、デヴィッドは「俺にも守る子供がいるんだ」と彼女を突き放します。そのときはそれが正しいと思って見ていた。しかしラストにその母親が現れる、そして、まるでデヴィッドを審判するような目をじっと見つめるです。

 デヴィッドは息子を殺した直後なんですよね・・・・

 凄い皮肉な・・絶望的なラストでした。救われないわ・・・


 って、ネタバレ感想書いてしまいました。

 でも多分知っていても十分楽しめると思います。私も知っていたのに、まんまと「してやられ」ましたから。お時間ある方にオススメの映画です。


 教訓。他人と己を過信しないよう。全て疑ってかかれ。


 ではでは、今日も素敵な時間を過ごせますよう。

 願いを込めて。