ネタバレ「天気の子」、このセカイよりも君が大事という仰天映画を見た。



 また台風がやってくるそうですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。「もう水責めはかんべんしてくれ」と嘆く方が多い現代で、水害に苦しむ日本(セカイ)よりもヒロインを選んでしまうというぶっ飛んだ映画、あの新海監督の最新作の「天気の子」を見に行ってまいりました。

 多くの日本人を敵に回しそうな新海作品・・・はてさて、感想はいかに。


 
 その前日に、私は「凪のお暇」を見ていたんですよね。
 まさに、新海作品の真逆の展開、主人公たちは空気を読んで、親や会社に合せて自分を殺していく、これからラストにかけて、そんな主人公たちがどう変化していくのか書かれていくのでしょうが、とりあえず殺しまくりです。そんな不憫な主人公たちが堂々と描かれていました。
 可哀想すぎる・・・・

 この親や会社や国という公のコミュニティに合せて個としての「自分を殺す」というのは、もやは日本人の習性というか、もうDNAだと思っているわけなんです。

 自分を殺して(犠牲にして)世界(セカイ)を救う。

 いえ。。。中二病のアニメの世界の話じゃないですよ。本当にこの国で白虎隊しかり、特攻隊しかり、代々続けられていることなんですよね。

 で、今回の新海作品、(ネタバレになりますので、この先は自己責任でお読みください)そんなセカイを否定しちゃった! 

 もう二度と俺たちを殺させやしねーぞ!という監督の強い意志を感じさせられる、とても良い映画でした。



 なんて言ってますが、はじめはあまりの御都合主義的な展開に舌を巻き、中盤ではあほらしい(失敗を学ばない)未成年の家出騒動に怒りすら覚え、もう少しで映画放棄して寝てしまいそうだったんですけど・・・これ本当に新海作品なの????と。

 なんですかねー前回は素材も味付けも盛り付けも何もかも完璧の会席料理を食べたと思ったら、今回は塩とコショーのみの味付けのチャーハンを出された気分でしたよ。新海作品なの??本当に。

 ところが、最後のラストで、ガツン!!!!ときたんですね。これは物凄いことをテーマにしてるぞ、と。言いたいことだけで判断するなら、前作(大ヒットの)「君の名は」を超えているかもしれない、と鳥肌が立ちました。

 いやー、ただでは終わらせないですね、やはり大監督です。。



 あ、その前に、映画を観る前に小腹がすいたんで、腹ごしらえに行った話を少々。
 今回は、新百合ヶ丘にあるイオンシネマに行きました。近かったから。あと、チケットを予約するシステムも、ワーナーマイカルの名残で慣れているから。新百合ケ丘を降りると、もう直ぐ目の前に、イオンがドーンとあり、イオンシネマが直ぐわかりました。

 

 天気の子のポスターを探したのですが、ない。どこにもない。入場するときまで、最後まで一度もどこにもありませんでした。普通あるよね???
 仕方ないから人間失格のチラシを撮ってきました。
 大好きな太宰を描いた作品なので今度みたいと思います。


 で、1時間前に着いてしまいました。ちょうどお昼時だったので、ランチをすることに。考えていなかったので、グーグルで「新百合ケ丘、ランチ」と検索。出てきたのが、とり一という焼き鳥?鳥料理のお店でした。ランチの鳥料理ってどんな??と行ってみると、なんとまぁ。お蕎麦やさんではありませんか。しかも信州そばです。
 
 あかん、長野に呼ばれてるわーと焦りましたよ。北アルプス行かなきゃですかね。。。



 ちなみに焼き鳥屋はお隣に看板(入り口?)があり、鳥料理も兼ねているようでした。夜だけなのかな?
 1日20食限定の冷やし麻辣そばを食べることに。上高地のような水辺の写真の上に、蕎麦が浮いているポスターに惹かれました。あー呼ばれてるわ・・・



 940円です。ミョウガと山椒?が効いていて、もろ薬味の味でした。お蕎麦はコシがあって(味わからん・・)美味しかったです。せっかく薬味の味が濃いので薬味繋がりで、唐辛子を3杯も入れて食べてしまいました。最近辛いものをあえて取っている私です。
 いや、辛いものを食べると肺が強くなるというので。(五臓と五味の健康法より)タバコも吸うし、肺は心配だよね。今まで辛いものが大嫌いでしたが、現在積極的に取っています。今度は、韓国料理にもチャレンジしようと思います。(今まで嫌いで食べなかったのです)

 腹ごしらえも済んだし、時間もちょうど良くなったので、イオンシネマに戻って、一番大きい劇場に入りました。いやー、もう予告編が長い、長い。まだかー!と発狂しそうになってしまった。なんであんなに広告を見させるんだ。ほんと飽きましたよ。。

 で、お待ちかねの映画がやっとスタートです。
 出だしは、母親の看病をするヒロイン。窓の外の東京は異常気象により雨続き、水攻めの日本の情景が映し出されます。陰気臭い景色に思わず心も沈みます。ふと、雨の東京のどんよりした空から、まばゆい光の柱が射しているのを見つけて、(まるで一筋の虹のように、黒い空から神々しい光が現れたのです)その光を追いかけて廃墟の雑居ビルの屋上に駆け上がっていく。
 すると、そこには小さな稲荷明神があり・・・ 強く願いながら鳥居をくぐると・・

 (主人公は危篤の母親に最後にもう一度だけ天気の良い1日をプレゼントしたかったのです)

 すると、そこには異形の世界が。

 神の世界というよりは異形の世界ですね。パカッとそれが開いてしまった。
 ヒロインは、あっち側に行ってしまったのです。
 それからというもの、彼女は、「雨を晴れにできる」という異形の力を身につけることになりました。

 いやー、神から授かった力、と言ってもいいんですが、そうするとラストがね。神の世界までもを否定した、と描きたかったのかな、と思うとそれは違うだろう、と思うので、異形の世界ということにしておきたいです。

 そのあとストーリーは御都合主義的に・・もとい、偶然が重なって必然となるように、ヒロインとヒーローが出会い、(結婚式やイベントのハレの日の)雨を晴れにするというビジネスパートナーとなって、ヒロインは人々を助けることにカタルシスを覚え・・・
 そんな矢先に、異形の世界からヒロインは代償を求められます。その肌にはうろこのような水滴が浮かび上がり、いつしか体が溶けてまるで消えていくように・・・突如、空に舞い上がり、まるで連れ去られるように・・・

 伝説によると、天気を操るようになった「巫女」は人柱となるそうです。世界を救ったことの代償として、その身を生贄とされるのです。晴れの神は稲荷系、対して雨の神は龍神系です。稲荷系の神の使者(気が弱い)が龍神系の神(こちらは荒神)の世界に引きずり込まれていく、といった感じで描かれています。

 雨の東京の描写はあまりにも暗いものでした。憂鬱な世界でした。
「これを救えるなら、人一人の命くらいどうってことないよ」というようなことを中年世代の主人公の一人(小栗旬さんが声を担当)とつぶやいていたと思います。

 そう、それが、中年世代以降の「常識」なんですよね。凪のお暇のかわいそうな主人公たちを肯定する世代ですよ。映画のヒーローも、この世界を救うためなら仕方ないのか、とヒロインをあきらめかけます。
 ところが最後の最後に、「冷静になれよ」と止める小栗旬を振り切って、ブチ切れてしまいます。

 「俺は彼女にもう一度会いたいだけなんだ!」

 はっとする小栗旬。この世界を救うよりも、彼女を救いたいと少年は、「強く願う」のです。そして、オープニングと同じ稲荷系の鳥居をくぐると、彼は異形の世界にいた・・・

 このセカイがどうなろうとも、君にいてほしい。そう訴える主人公。

 なんだこりゃ、こんな物語がかつてあったか。日本人のDNA馬鹿にしとるのか。なんて自分勝手なんじゃ。義務よりも、個人の幸せを優先するのか?
 なんて、常識的なことが頭をよぎりましたが、もう私もその頃には感動して頭がぶっ飛んでしまっていましたので、新海よく言った!!!!!とね。笑


 凪のお暇の凪に、もう自分を殺さなくていいんだよ、と言いたかったんですよ。
 幸い、天気の子のヒロインとヒーローが自分たちのために犠牲にしたセカイは、日本以外の国がどうなったかは描かれていません。東京以外の場所がどうなったかは描かれていません。つまり、彼らのために犠牲になったのは、肥大化した、もはや必要のないほど文明が進みすぎた東京のみ。犠牲になって水害で都市が沈んでも、昔の江戸の頃に戻るだけ、神や自然を裏切ってはいない、というような優しい描かれ方をしています。もちろん水害で死んだ人のことは一人も出てきません。犠牲者ゼロです。

 だからね、君たちが守ろうとして、犠牲になろうとしてるものなんて、そんなものなんだよ。だからね、そんなに自分を殺さなくていいんだよ。

 新海監督のメッセージが伝わってくるようでした。


 


 ああ、いい映画だなぁ。と思ったんですけど、ここまでは、生き方の処方箋みたいなストーリーの解釈です。
 この映画の真髄は、それだけでは終わらない。実はこの映画は、それだけを言いたいのではなくて、実は。「反戦映画」なのではないかなぁ、ということですね。私なりの解釈ですが・・・

 考えてもみてください。公のために個を殺すの代表格といえば、戦争です。そして現代では、水害の他に戦争の危機も迫っています。(水害は気象兵器なのではないかという考えさえあるほどです)

 この国の総理大臣は平和憲法を変えたがっている。解釈を変えて、自国の自衛のための戦争だけではなく、集団的自衛権を公にして、他国の戦争にも首をつっこもうとしています。それはこの国の方針であり、戦後ずっとこの国を牛耳っているアメリカ様の方針です。

 つまり、小栗旬世代ではなくて、この映画のヒロインヒーロー世代が戦争の犠牲者となる日は近づいているのです。

 そんな今だからこそ、天気の子を描いた。
 「冷静になれよ」と諭す小栗旬を振り切ってブチ切れる少年を描いて見せた。

 このセカイがどうなってもいい、君がいてくれればいいんだ!


 対する小栗旬は失った奥さんを思って前に進めないうじうじした人生を送っています。諦めたのに諦めきれない。戦争世代から続いてきた私たちの象徴ですね。

 少年に怒鳴られて、小栗旬ははっとします。自分が失った奥さんを諦めきれていないことに気がつきます。冷静な大人になっただけの気分でいたのです。
 戦争で失った人たちのことを、仕方なかったんだ、と思う私達。犠牲となり、人柱になった人たちを悼んできた私達。

 そんな私達が失ったものは、決して諦めてはいけないものだったんだ、と新海監督は言い切ります。

 俺たちは、この世界で生きていく。大丈夫だ!と最後に少年は少女に誓うように言うのです。
 たとえ水攻めにされたって、君を犠牲になどしやしない。
 守らなければならないセカイなんて、肥大化した無駄なものばかりの東京の街のようなものさ。ずきりとします。日本のこともそう皮肉られているようですね。少年が言うように、そんなものは、元に戻ったほうがいいのかもしれない。

 たとえ水攻めにされたって・・・くどいけど、水攻めは気象兵器という噂があり、日本を意のままに操るために大国がやってるとか、笑 ここまでいうと、映画の中のムーみたいな話になってしまうのでやめておきますが。

 それにしても。。。 最後に感想です。

 「強く願えば叶う」

 この映画が一番訴えたかったのはそこではないかな、と。

 オープニングで少女が異世界に行き、空を飛ぶシーンも、少年が異世界に少女を助けに行き、二人で空を飛ぶシーンも、誰かを助けることを「強く願ったから」起こった奇跡なんですよね。願えば叶う。
 一人一人が誰かを助けるために、映画のように自己チューになれば・・・

 いえいえ、映画のように、個を大切にすれば、それが人口全員になれば、結局は、誰かは誰かに助けられて、全員が救えるのかもしれないなぁ、なんてユートピアのようなことを考えます。

 とりあえず、少年と少女を犠牲にして、「東京」(に象徴されるもの)を守ることはもうやめにしましょ・・・


 天気を子を見た感想でした。良作でしたねー。いい映画でした。途中眠くなったけど、寝ないで最後まで見ることをお勧めします。
 凪のお暇も、自分を取り戻して欲しいなぁ。


 ではでは、また映画を見たら感想書きますね。

 が、映画とは違い、実際の社会では水害で大勢の方が犠牲になっています。一人一人が強く願いましょう。

 このセカイが救われますように。






 


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