奥入瀬ならぬ関口川渓流を散策する。〜関口神社例大祭といっぷくさんでひとりごちる〜
お金と時間の余裕があれば何がしたいか、と聞かれればこう答える。奥入瀬渓流沿いの宿に連泊したい。できればずっと生活したい。続く緑豊かな道、溢れる陽光、きらめく清流の水面。そして奥入瀬渓流の響きを聞きながら、穏やかな時を過ごしたいものだ。ずっとそう思っていた。いつかもらった奥入瀬渓流ホテルのうちわを眺めては(しょぼいけれど部屋の目立つところに飾っていたのだ)、ため息をついたものである。
が、不思議なことに、今日は自分が夢を叶えていることに気がついた。
関口神社の例大祭に出かけたのである。
山田町の中心部からおよそ1時間半、驚くほどに緑豊かな渓流沿いの道が続いているではないか。関口川渓流だ。かつて修験者の修行場だった奥宮まで続いている。関口神社から奥宮まではその渓流沿いを4キロである。これはメタボ気味の私の散歩にちょうどいいのである。熊が出るとのことだが、もっと歩く人が増えれば安全性も増すかもしれない。
例大祭に参加した氏子代表の方に聞いた話では、昔は奥宮の例大祭の儀式に参加するために、300人という人々が山を越えて集まったそうだ。東は山田町から関口川沿いに、西南は大槌町から山母の森を越えて歩いてきた。彼らは奥宮のそばの小屋に泊まって例大祭を祝ったそうである。
歴史がある。渓流沿いの道もさることながら、この奥宮の不動尊もまた苔むしていい雰囲気である。石垣も、清流沿いに立つ桂の木のうごめくような根も、苔、苔、苔・・ めちゃくちゃ渋い。「なかなか素敵なところでしょう」と例祭のために奥宮の飾り付けを始めた地元の方が声をかける。「ほんとすばらしいですね」と私。本殿の背後に岩が鎮座している、というより、どでかい岩のその岩肌の正前に本宮(祭壇)があるというべきか。岩肌には剣が何本も飾られ(突き刺さり)、目線を上げれば、岩の中央の大きめなくぼみがあって何やら飾られているのである。岩の洞窟の入り口もちゃんと祀られているではないか。これは・・またか、と思って総代に聞いてみたら、やはり岩が御神体なのだそうだ。いや、はっきりとは言わなかったが、
「岩が御神体ですか?」と願望も込めて、私。
「そうですねぇ」と関口神社の総代。
「ところで、あなた、あれ(どでかい岩のくぼみの飾り)をどこから撮りました?」
「あそこ(祭壇)の背後に回り込んで、見上げて撮りましたが」
「そうですか。いや、全体が見えるといいでしょうねぇ」
それで、関口川渓流の上の道まで登って、全体の写真を撮り始めた。上から見てもいい岩である。岩好きの私らしく、何やら導かれた感がふいに襲ってきた。関口川渓流の帰り道では、幸福感で涙が溢れそうになった。この道を、車ではなくて、観光の人が歩いているところを見てみたいものだ。余暇のできたご老人も良いが、こんな自然豊かな場所は、子供たちが過ごすには格好の場所ではないか。
まぁ、私のセンチメンタルな話はどうでもいいのだが、ということで、今日は関口神社の例大祭の写真を紹介します。
巻末に、山田町の魚料理で定評のある「いっぷく」さんで、お食事を食べた話をざっくりご紹介。うにや山田町で取れたという魚が美味しかったし、器の彩りや、店内の造りのセンスの良さに至るまで、やっぱり山田町では群を抜いているなぁ、と実感させられたお店でした。
関口神社。例祭の幟が上がっている。
一週間前に撮った写真。祭事の準備中。
大神楽の獅子頭が奉納されている。
田んぼの横を歩いて奥宮へ。
デンジャー文字を見て、引き返した。(熊鈴を持っていなかった)
気を取り直して、宵宮祭の日に奥宮お参りを決行。途中に関口川渓流から流れる水路が続き、こちらがまた水が綺麗。アヤメも咲いていて楽しめた。
清流のせせらぐ音もたまらない。
緑に降り注ぐ陽光が美しい。
ところどころに大きな岩がある。
関口不動尊(奥宮)到着。
お向かいの氏子を祀る神社。杉の大樹に護られている。
しばらくすると、祭事の飾り付けが始まった。「飾ったあとに撮るといいよ」と準備の方。「時間がかかるんでしょうか?」と私。1時間くらいかなぁ。2時半から奥宮での式事が始まる(見てもいい)のとのことなので、また来ることに。
1時半頃戻ってくると、すっかり祭事の準備が終わっていた。
氏子の方々がいろいろ教えてくれる。昔は関口川渓流で身を清めてから、女人は参拝したという。「信じられないよねぇ。寒いでしょ」と氏子の方。せめてもと、手を清めさせていただいた。
岩肌にくぼみがあり、祀られている。(御神体?)
こちらが洞窟の入り口。中にも入れるのだという。
山田神楽の面々が集まってきて、提灯が灯される。
大神楽(獅子頭)が奉納される。
祭事が始まった。宮司が詔を読み上げる。
迫力の山田大神楽の獅子舞。
関口神社の宮司様。神楽の最中も詔を上げている。
どこから写真を撮るといいのか、氏子の方々が親切に教えてくださった。また撮っている最中も、こっちこっち、と誘ってくださったり。皆様どうもありがとうございました。
関口神社の総代。最後に一枚撮らせていただきました。ありがとうございました。
式事が終わって、お礼を言って帰ってきた。
また夢の帰り道。渓流沿いの道では、紫色の小灰蝶や、真白い紋白蝶がペアでダンスするように飛んでいる。赤い羽根の糸蜻蛉が時折道を塞ぐ。そして、きらめく緑と渓流の穏やかなせせらぎ。
いいものだなぁ。
とひとりごちて。
かつて300人の人々がこの式事に泊りがけでやって来た。東は山田町から関口川沿いに。西や南の大槌町からは山母の森を越えて。今でも彼ら泊まったという小屋は残されており、人々が墨で記した参拝の日付やその名前が、柱や壁に見ることができる。
「なかなか素敵なところでしょう?」
「ええ。素敵ですねぇ」
小灰蝶のダンスする関口川渓流沿いの道を、人々がゆるやかに歩くところを見てみたいものだ。
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さて、いっぷくさんでお食事したお話。
と言っても、写真だけざっくり。コース料理のように、一品ずつ出てきた。地元三陸山田の新鮮な海鮮ばかり。これで一人4千円(お酒は別)だから安すぎます。
前菜(お通し)?があったのだけれど、撮り忘れました。すみません。
ウニとお刺身の盛り合わせ。
山田町でとれた沖アブラメ。
よしつぐと呼んでしまった(キチジというらしい)、
吉次の煮付け。
ホヤの酢の物。あまり好きではなかったけれど、臭みがなくて美味しかった。
和牛。サラダ風で美味しいです。
牡蠣の天ぷら。山田産の牡蠣、身が大きくて食べ応えがありました。
吟醸(純米)。飲んでないけれど、美味しそうでした。
ウニがどっさり乗ったかっぱ巻き。
それから、めかぶの温かいお蕎麦がお椀で出てきました。
最後は、デザートのトマトのレモン煮。
大変美味しくいただきました。
ありがとうございます。
いっぷくさんは、山田町中心部に新しくできた「新生やまだ」にあります。セブンイレブンのお隣さんです。移転した新店は、大変雰囲気がよろしくて綺麗です。ドライブの最中に是非お立ち寄りください。区切られた(良い雰囲気の)カウンター席も充実しているので、お一人さまも入りやすいと思います。
・いっぷく