霞露嶽バージョン「森を歩こう」
霞露嶽の森に出かけた。
霞露嶽というのは、山田町の船越半島にある小さな山で(標高500m程)、私は好きで何度も登っている。なぜかこの山を登るとヤンコフスキーの「森を歩こう」という古い名曲が頭の中をぐるぐると巡るのである。
儚い名前の由来通り、霞露嶽は夏場、三陸海岸特有の濃霧に覆われることが多い。リアス式海岸の断崖絶壁を背に佇んでいる。そのせいか、小さな山だというのに、山頂付近にはブナの原生林が幻想的に広がる不思議な(美しい)山である。山頂には霞露嶽神社の奥宮が鎮座している。
いつもは大浦漁港方面の大浦登山口(参道)から登る。大浦登山道は標高200メートルほどの位置にあり、一度自転車で行ったらアップダウンの多さに死にそうになったが、それでも行けない道ではない。道の駅やまだからマウンテンバイクで向かっても楽しいと思う。大浦登山道は、新しくできた比較的楽な登山道なのだそうだ。楽じゃない方は、昔はこっちしかなかったという漉磯海岸からの登山道。いつか大浦地区にある霞露嶽神社で教えてもらった。小谷鳥海岸方面の新道→漉磯方面→分岐→漉磯海岸に出て、漉磯海岸の漉磯登山口から、断崖絶壁の赤平(船越半島には赤平金剛という300メートルの断崖絶壁がある)の急登を一気に登って山頂へと向かう道だ。赤平が登山道のちょうど中間地点辺りである。その先はゆるやかな自然道が続いている。噂だけは聞いていて、いつかは登ってみたいと思っていたが、たまたま今回機会を得て、登ることができた。
その漉磯海岸からの登山がかなり楽しかったので、ご紹介します。
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漉磯海岸。誰もいない。霞露嶽の入り口は立ち枯れの赤松がそびえ、荒涼とした雰囲気。東日本大震災の影響か、と思ったら、そうではないようで、この先、登山道で何度も立ち枯れ赤松に遭遇する。
この(当日の天気も手伝って)荒涼とした漉磯海岸の、まずは川を渡って登山道へと進むのだが、思わずこちら側とあちら側とを意識して、何やら象徴的なもののように思えて来る。
山道はしっとりした赤茶の土。背の高い赤松が多い。太い根が立派である。網目の模様が美しい。が、目線を上に上げると木肌がむき出しになり無残にツルツル。豪快に倒れているものもあり。
急登・・・と言っても小さな山なので、ほぼ息切れしない楽なレベル。
海が低くなり重茂半島が垣間見えた。半島の先端(右端)は魹ヶ崎灯台・・だが、灯台は天候のせいでよく見えず。
赤平を過ぎると楽な登山道になる。赤松ばかりが目立っていたが、そろそろとブナが現れる。
キノコに白い花、足元も可愛らしい。鶯が啼いている。見下ろせば海原の眺めはいいし、空はミズナラやブナが扇のように空を覆う。時折巨石、大きな石や岩の断面の中を進んでいく。なかなか飽きさせない登山道である。
お二人の楽しい会話を聞きながら楽しく歩いていると、ふと霧が出てきて、(雨もチラホラ)霞露嶽らしい雰囲気に。
お二人の楽しい会話を聞きながら楽しく歩いていると、ふと霧が出てきて、(雨もチラホラ)霞露嶽らしい雰囲気に。
大きいブナも目立つようになる。登山道の尾根の側面から巨木がそびえている。
「そろそろだよ」と声をかけられて、顔を上げると大浦登山口から登ったときにいつも目にしていた分岐の標があった。この先を行くと、すぐ山頂だ。いや、山頂の標のある開けた場所があるのだが、「先に山頂に行ってこよう」と促されて、大浦登山道を少し戻って二等三角点のあるポイントへ向かう。そう言われれば、こちらの方が高いような気もするが。いつもどちらが山頂なのか、また、山頂の正確な標高はいくつなのか、よくわからない霞露嶽である。
二等三角点から戻ってきて、霞露嶽神社奥宮をお参り。おかろさま、と親しまれている巨石がある。例により、巨石が御神体である。(いつ見ても立派でうっとりする)
実はこの日、いつものように大浦登山口から登るつもりで、軽装のうえ、昼ごはんも飲み物もほぼ持っていなかった。一緒に登った山仲間の二人に、キュウリの浅漬けにスイカ、ゴボウのお漬物、玉葱の酢の物、豚肉・・等々、豆の入ったパンまで! ・・を分けていただいた。大変美味しかったです。どうもありがとうございました。
肝心の山頂からの景色は・・・というと、これも初体験。霧に曇り、露のような雨に打たれて、たなびく雲の連なる山田の町に山田湾。神秘の趣がある。霞露嶽からの展望らしいではないか。
(こちらが天気のいい時の山頂からの眺め)
健康的な山の眺めも良いけれど、こういうのもいいものだ。
ヤンコフスキーの「森を歩こう」が高らかに聞こえてきた。