温泉はなぜ楽しいのか。~ひと時の安らぎに願いを込めて~
番外編その5です。
今回は女二人旅、箱根の温泉に出かけました。
場所は箱根湯本駅から徒歩12分、須雲川沿いに佇む老舗、天成園さんです。
稲葉氏(小田原城主の家系)の別邸跡に、約60年前に開業しました。
俳人・荻原井泉水(おぎわら・せいせんすい)と歌人・与謝野晶子も愛した自然豊かな温泉旅館です。
庭園には、「玉簾の瀧」(たまだれのたき)と「飛烟の瀧」(ひえんのたき)という二つの瀧が流れています。その源流の湧水は、古くから「延命の水」として親しまれ、箱根越えをする旅人たちにうるおいと活力を与えたといいます。
この天成園さん、屋上に大きな露天風呂があります。
いわゆる「天空大露天風呂」
四方を箱根の山に囲まれた、真上には虚空の空が広がる、絶景の露天風呂でした。
どうも近頃、悪い気に憑かれているような冴えない心持ちだったのですが、
この天空園さんの歴史ある温泉に浸かって青空を眺めていたら、
すっかりいい気持ちになりました。
温泉パワーはやっぱりすごいですね^^
・天成園ホームページ 玉簾の瀧・庭園
順を追ってお話します。箱根湯本からスタートです。
駅を降りると、ちょうど登山鉄道が到着しました。モハ1形です。
「箱根スイーツコレクション」のオブジェ。乗り物の飾りが可愛いです。 |
通り過ぎて振り向くと、反対側の先頭車両はモハ2形でした。
友人が到着するまで、駅ナカをぶらぶらします。
売店で、登山バス100周年記念のアニバーサリー弁当を発見。
バスの形のお弁当の箱が可愛いです。
改札前にはプラレール(タカラトミーの定番の鉄道おもちゃ)と、登山鉄道の連結登山電車など、登山電車グッズが展示販売されています。
見ていて飽きませんでした。
これ、スイッチバックをしながらずっと走っています。 |
・箱根登山鉄道オリジナルグッズ
改札前の案内所。乗り放題のお得な1日乗車券が売ってます。 |
友人と合流後、バスに乗って天成園さんへ。
箱根湯本駅からホテルまで旅館協同組合のバスが利用できます。(1人100円です)
旅館協同組合のバス 小さくて可愛いです^^ |
バスに揺られて5分程、到着しました!
天成園さんです。 |
ロビーから庭園が見えます。(写真下)
窓奥の、池の向こうに見えている鳥居は、縁結びのご利益があるという玉簾神社さんです。
天成園さんは老舗の旅館ですが、私たちは日帰り温泉で利用させていただきました。
冒頭に記したとおり、それはそれはいい湯で楽しめたのですが、それとは別に、個人的に嬉しかったのは、天成園さんオリジナルの「貸浴衣」です。(写真下)
フロントで浴衣を選びます。 |
タオルと浴衣を受け取って館内へ。 |
ゆり美人、ばら、なでしこ、こざくら、あじさい。女性は5種類の中から浴衣を選びます。(男性は紺色の1種類だけです)
すべて花の模様です。この浴衣を着て、午前10時から翌朝午前9時まで、天空大露天風呂をはじめ、無料休憩所やリラックスルーム、貸部屋、貸切の家族風呂など充実の施設館内を行き来できます。
色とりどりの女性たちの浴衣姿は、あちこちで花が咲いたように華やいで見えました。
それにしても、なんでゆりだけ「美人」がつくのでしょうね? ひとつだけ残念だったのは、この唯一かんむりに「美人」をつけたゆり模様の紺色の浴衣です。若い女性に人気があるようで、館内を歩いているゆり美人をたびたび見かけました。
男性と並んでいるとお互い紺色ですので、妙に地味なカップルです。
若い女の子はもっと明るい色の浴衣を着たほうがいいのではないでしょうか。
余計なお世話でしょうが、傍から見ていると、あれでは隣の男性がお気の毒のような思いがしました。
館内の庭園風の廊下です。良い雰囲気でした。 |
エレベーターの中も畳です。和の風情が楽しめます。 |
秋の味覚御膳をいただきました。栗や柿や松茸を使った料理が美味しかったです。 |
食事の後はリラックスルームでまったり過ごして、それからお待たせの温泉へ。
最上階の天空大露天風呂を楽しませていただきました。
「景色を楽しもうね」
と友人が言っていただけのことはあります。
流し場から露天風呂へと一歩出たとたん、思わず「おお!」と声が出ました。
天成園さんの南北両側に箱根の山が広がっています。その山をぐるりと見回して、山に沿うように17メートルの大スケールの浴槽が二つ並んでいます。真ん中には源泉かけ流しの石風呂がやはり二つ、どこの浴槽に入っても箱根の山を見渡せます。大自然を独り占め、という気分でした。
翌日は台風の予報でしたが、そんな不安定な天候を微塵も感じさせない突き抜けるような青空、浴槽の湯は陽に透けてきらきらと輝いていました。
写真がお店できないのが残念です。興味のある方は下の天成園さんのサイトから写真が見れます。
・屋上天空大露天風呂
さて、お風呂のあとは、浴衣に着替えて庭園をお散歩です。「たまだれ庵」さんで甘味をいただきました。
庭園に佇む茶屋「たまだれ庵」。流しそうめんや甘味を楽しめます。 |
風がまったくない一日でしたが、風鈴がいい風情でした。 |
クリームあんみつをいただきました。黒蜜が美味しい~ |
歌人・与謝野晶子が庭園の瀧の風情を歌に詠みました。 |
「玉簾の滝」です。丸い岩が二つ飛び出ています。 |
天成園建築に協力した自由律の俳人・荻原井泉水の歌もあります。 |
庭園から玉簾神社に続いています。縁結びのご利益があるだけあって、 何組かの男女がおみくじを引いていました。 |
やはり庭園内の「飛烟の瀧」です。こちらは普通の滝でした。 |
庭園から天成園さんを望んだ風景です。 |
一度目に入った時とは打って変わって、台風前夜らしい曇り空です。明日のことを思うと、いえ、それ以前に、今頃はもう上陸しているところもあると思うと、なおさらこの一時の時間が貴重なものだと感じます。
こうして安らいでいることが、申し訳ないような、かけがえのない一時をいただいているような、複雑な思いに駆られながら、それでもありがたくて、感謝の気持ちに包まれます。
17メートルの浴槽の縁に若い女性が裸のまま寝転んで、目を瞑り、口を開いて、静かな寝息を立てています。私と友人がおしゃべりしているあいだに、女性はぶるりと身を震わせて、素早く半身を起こし、浴槽の中にそのまま腰から飛び込みました。
中央の石風呂には年配の女性が3、4人、丸い浴槽を囲んで座って、ときおり笑い声を立てながら楽しそうな会話を続けています。
私と友人はいつまでも浴槽に入っています。ほんの数分でのぼせてしまった以前とは少し違ってきたようです。「いい加減」で、お湯を楽しむ方法を彼女から教えてもらったのです。
太陽は西に向かって傾き始めています。ぐるり箱根の山を見上げた時と同じように、天空露天風呂を見回すと、寝転がり、足湯をし、肩まで深く浸りながら、あちらこちらで湯を楽しむ人々。
その様子が印象的で、ふと思いました。
ああ、お風呂というのは、コミュニケーションをするところなのだなぁ。
湯を楽しむだけではなくて、本来、それが第一の目的なんだろうなぁ。古い昔の、湯治場の宿の湯での物語に思いを馳せながら、ずっと忘れていたことをあらためて思い出したような思いがしました。
人々が集う場所、お風呂はやはりいいですね。
この一時の安らぎが続きますように。
すべての人の上にもたらされますように。
願いを込めて、台風前夜の温泉旅行はひとまずこれで終了です。
帰りは箱根湯本駅ナカの箱根カフェさんでお茶をします。 |
モハ1形です。カフェのカウンターの前に模型が飾ってあります。 |
こちらはチキ1形です。 |
プラットフォームを見つめながら・・ |
箱根の山が、すべてのこの国の自然が、
いつまでも私たちの、一時の安らぎと共にありますように。
願いを込めて。
それでは、またお会いしましょう!
るるぶ 箱根’15〜16 週末トリップ |
るるぶ 温泉&宿 関東信州新潟伊豆箱根’16 |