「夜が明ける」が映し出す、希望のない夜を生き抜くということ。
誰もが「大丈夫なふり」をして生きている。
そんな時代に、真っ向から痛みと向き合った小説に出会いました。
こんにちは!
TOKIOの国分太一さんが、写真おねだりハラスメント疑惑を受けて引退しました。詳細について、日テレ側は「お答えできない」の一点張り。
内部告発をきっかけに、一発退場という流れになりました。フジテレビの件もあり、TV局側が厳しい対応を取るのも無理はないのかもしれません。
何があったのかはわかりませんが、過去の行動を問われる時代。芸能界に身を置く人たちも、どこかしら心当たりがあるかもしれません。
そんな混沌とした今の時代に読むと、まるで予言の書のように思える小説に出会いました。西加奈子さんの「夜が明ける」です。2021年の作品ですが、TV業界の構造問題や、奨学金、貧困、子供のネグレクトといった社会の闇を鋭く描き出しており、今読むと一層リアルに響きます。
夜が明ける(西加奈子)
【あらすじ】
15歳のとき、俺はアキに出会った。191センチの巨体で、フィンランドの異形の俳優にそっくりなアキと俺は、急速に親しくなった。やがてアキは演劇を志し、大学を卒業した俺はテレビ業界に就職した。親を亡くしても、仕事は過酷でも、若い俺たちは希望に満ち溢れていた。それなのに――。この夜は、本当に明けるのだろうか。苛烈すぎる時代に放り出された傷だらけの男二人、その友情と救済の物語。(Amazonより)
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・感想は・・
初めて読む西加奈子さんの作品でした。
夜が明ける気配もない、永遠に続くような闇の中にいるような感覚。途中、読むのがつらくなるほど重い描写の連続でしたが、それでも二人の行く末が気になり、謎を追うようにページをめくりました。
貧困で苦しみながら役者を目指す「アキ」と、テレビ業界で過重労働に耐える「僕」。二人を支えるのは、高校時代の輝かしい記憶だけ。その灯りを頼りに、闇夜を耐え抜こうとします。
アキはようやく役者としての道が開けそうになりますが、演出家に恐れられ、家族のように思っていた劇団を追われてしまう。僕もまた、リストカットを繰り返しながら、寝る間もなく働き、心身を削られていきます。
知っていたはずの問題ーー、でも、ここまで過酷とは思いませんでした。正直、恐ろしさすら感じました。
・印象的なところは・・・
この作品には、日本が直面している問題がぎっしり詰まっています。
貧困、奨学金、過重労働、パワハラ、どれも現実に起きていることで、「これはフィクションだけれど、私たちのすぐそばにあることだ」と突きつけられました。
読んでいて、他人事とは思えませんでした。「自分にもいつか起こるかもしれない」と底しれぬ恐怖感に襲われる感覚。
物語は長めですが、その怖さに惹きつけられて、最後まで読んでしまいました。
ラストでは、二人が「人に頼ること」を覚え、わずかな救いが差し込むように見えます。けれど、それは決して明るい夜明けではなく、人生の闘いはまだまだ続く、と余韻を残して物語は終わります。
救いとも思えず、作者は救いを書いたはずなのですが、夜はまだまだ深まるのがこの現代の日本なのではないか、とつい思わされてしまいます。
その救いのなさが、逆にリアルで、胸にざわざわしたものが残りました。ある意味、ホラーチックな小説でした。
本当に怖かった! それが一番の印象です。
・日本のこれからについて思うこと。
最近の芸能界の動きを意味ていると、コンプライアンスの名のもとに過去の清算が進んでいます。それは芸能界やTV業界に限らず、私たちの社会全体に突きつけられている課題ではないでしょうか。
日本は今、過去の延長戦ではなくて、新しいあり方を問われているような気がします。
たとえば、平和を維持するための現実的な外交や安全保障の見直し、食料自給率といった生活基盤の強化もその一つかもしれません。
国分太一さんの問題ばかりに目を向けるのではなく、この国が本当に立て直すべきものを、そろそろ私たちが見つめ直す時期なのではないかと思いました。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
みなさんのご意見も、よかったら聞かせてくださいね。
今日があたたかい1日となりますように。
心を込めて。