背筋が寒くなる大人の病、「孤虫症」を読んで。

 

 こんにちは!

 昨夜は関東で雪が降り、3月とは思えぬほど寒い夜でしたが、お元気でお過ごしでしょうか。

 例年ではそろそろソメイヨシノが咲き始める頃ですが、今年は寒いですね。このまま初夏と夏も涼しくなってくれるとありがたいですが、そうはうまくはいかないのでしょうね・・


 さて、昨夜は「孤虫症」という小説を読みました。このタイトルを書くたびに、つい「孤独症」と入力してしまい、あとから「独」を「虫」に変換しています。

 そのせいか、新種のメンタル的な病気のように思えて来るから不思議。(※)

 大人特有の病気でなのしょうか。


 (※)実際は人体内における幼虫もしくは成虫寄生の病気です。



 「孤虫症」(真梨幸子)


【あらすじ】 
 「週に3度、他の男とセックスすることを習慣にして」いる主婦・麻美。彼女の不倫相手が、次々と身体全体に瘤のようなものを作って原因不明の死を遂げる。彼女自身の肉体にも異変が起こる。女同士の憎悪や嫉妬、母娘で繰り返される愛憎劇。一見幸せな主婦の誰にも言えない秘密とは……。メフィスト賞受賞作。(講談社文庫)(Amazonより)

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 作家のデビュー作にて、メフィスト賞受賞作です。
 偉大なミステリー作家を世に送り出してきた賞だけあり、この作品も素晴らしく良質なミステリーでした。読み出したら止まらない。時の経つのも忘れて、最後まで一気読みしました。

 舞台は街の象徴ともいえるタワマン、高級住宅の「スカイヘブン多岐森」。1章はそこに住む主婦の麻美が主人公、「病い」の感染源は彼女という設定で、何の疑いもなく読み進めて、恐ろしい病気だなぁ、とゾッとしながら読んでいました。
 
 ところが2章から麻美の妹、奈未の視点から物語が進んでいきます。この辺りから、感染源(誰が悪人なのか、元凶は誰なのか)の犯人が怪しくなってきます。
 
 しかも、奈未が恋する真面目な義兄の正体が明かされ、曰くありげなタワマンの住民たちが怪しい雰囲気で絡んできます。

 次第に明かされていく真相が怖くて、面白くて、目が離せなくなりました。

 そして、憧憬の象徴だったスカイヘブン多岐森の立つ街が、何十年も前に風土病が蔓延する禍々しい場所であったことがついに明かされます。

 二転三転した犯人(感染源)も誰かが明かされ、しかしその時にはもう病気の感染は止められようもなく広がり・・と続いていく。

 じわじわと真相が明かされていく過程がこの作品の魅力ではないかと思います。
 幻想と現実が入り混じり、真相に辿り着くのは難しいかもしれませんが、ミステリー好きならきっと満足のいく醍醐味を味わえると思います。

 頭を空っぽにして、ミステリーを読むことだけに没頭できる。なんとも楽しい時間をすごさていただきました。読了後、物語を作っていただいた作者に深く感謝したくなる一作品でした。

 しかも、読了後のザワザワ感がまたいいですね。終わったようで終わらない。胸騒ぎの余韻がおまけについて来るという・・・良質のミステリー特有の特典(ギフト)もしっかり付いていました。

 20年近く古い作品ですが、タワマン至上主義の現代にこそ、ガツンと衝撃を与えて来る作品だと思います。思わず背筋が寒くなる。面白いミステリーを読みたい方にぜひお勧めしたいと思います。
 

 では、まだまだ寒い3月ですが、桜の花を待ちながらお別れしたいと思います。


 今日も最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。
 素敵な時間を過ごされますよう。
 願いを込めて。




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