笑えないブラックコメディ、タイトルそのまんまの「さよなら、人類」。

 

 こんばんはー

 ここ数日秋の天気ですね、涼しくて過ごしやすくなりました。冷房がいらないって、(今日は昼間少しつけましたけどね)ほんといい季節。

 

 さて、今日のおうちmovieは、第71回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した「さよなら、人類」というコメディ映画を見ました。

 「哲学的で詩的、それでいて人間的作品だ」(映画祭の審査員長のセリフ)

 シュールな笑い、ということで、楽しみにしてみはじめたんですが、これが・・・



 「さよなら、人類」
 ロイ・アンダーソン監督。ホルガー・アンダーソン、ニルス・ウェストブロム出演。

 【あらすじ】
 サムとヨナタンは、簡易宿泊所に泊まりながらおもしろグッズを売り歩く冴えないセールスマン。グッズは売れず、店主は仕入れ代を払ってくれない。借金だけが膨らんでいく。そんな二人はあらゆる人々の人生を目撃して、人生の深淵に引きずり込まれ、いつしか現代と過去が交錯していく。
 



 この映画、シュールなショートコントの連続みたいな感じで進むんですよ。全シーン定点カメラでワンカットのみ、野外撮影、CG一切なし。背景はミニチュアの建物にマットペイント。アナログ一大巨編なんです。

 撮影に4年もかけたそうですよ。写真上は、死にに行く若い兵隊たちに足の悪い女性店主がお酒を振舞うミュージカル?シーン。かなりグッときます。
 写真下のシーンなんて、真横を貨物列車まで走っているの。スタジオ撮影のみで、どうやって撮ったんだろう、と不思議になりました。




 なぜかサムとヨナタンのいる現代のバーに、戦場に向かう途中のカール12世(国王)が出てきます。(写真下)カール12世って、300年以上前の方ですね。騎兵隊、歩兵たちとロシアの戦場に向かう途中で、バーの青年に言い寄ります。うーん、シュールです。
 このシーンの馬たちもスタジオ撮影と思うと驚かされますね。




 いろんな人々の人生の切り取り、時代の切り取り、シュールなシュチュエーションの連続。
 初めは笑って見ていたんですが、次第に笑えなくなってしまいました。
 この映画、コメディって言ったの誰よ。とね、恐ろしいのなんの。

 特に、何度も出てくる電話のシーン。登場人物たちはみんな言うんです。「元気そうで何よりだ」「元気そうで良かった」。

 初めは、このコメディの「おきまりのセリフ」だと思って気に留めてなかったんですが。次第にだんだんと薄気味が悪くなってきて。

 というのも、昔、人生の中で一番辛い時期に、よくこのセリフを使ったんですよね。夜な夜な、話してくれる人を見つけては、誰かに電話をかけるんですが、何も言えなくて、バカのように繰り返すんです。「元気そうで良かった」。

 映画の登場人物たちも、馬鹿みたいに繰り返している。「元気そうで・・・」

 最後に出てくるおじいさんは、手に拳銃まで持っているんです。この電話の後に、死んじゃうんだろうなぁ。




 哲学的で、詩的で、人間的。映画業界の方々の評価はよくわかりませんが、私的には、コメディと思って見たら、足をすくわれる映画だ、ということは確かだと思います。

 サムとヨナタンは「人々を楽しませたい」からと、おもしろグッズを売り歩いていたのですが、最後の最後にヨナタンは叫ぶんです。「人を利用して、欲望を満たすのか」。

 サムには「哲学者気取りなんだ」と一蹴されますがね・・

 まぁー 空恐ろしくなったり、笑えなくて鬱になったり、それでも、人間の人生って端から見たらこんな風に喜劇に見えるんだろうなぁ、と妙に納得してしまったり。

 決して面白いとは言えませんが、かなーり印象的な映画でした。
 ぎょっとさせられるところがあります。


 (「元気そうで何よりだよ・・」さっきのセリフですが、そういえば、このセリフを聞いたことも何度もあったように思い出されてきました。
 何で忘れてたんだろう・・・)



 で、冒頭のヴェネチア国際映画祭の審査委員長の絶賛の言葉に戻ると、
 「驚き、感動、衝撃。私たちが求めていたこれら全てを与えてくれたのは『さよなら、人類』だけだった」。

 なるほどー。難しい評価はわからないけど、確かに驚かされるわね・・と。

 
 ありきたりの映画に飽きた方は見てみると面白いと思います。
 かなーり、普通じゃないです。でも、人生の深淵を突いています。



 
 それでは、
 今日も素敵な時間が訪れますよう。
 願いを込めて。






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