ドーナツ病だと思っていたーーエルヴィスに出会い直した日。
私が子供の頃ー
父が、1977年に急死したロックスター
「エルヴィス・プレスリー」の死について、こう言いました。
「彼はドーナツ病だった。ドーナツを食べすぎて死んだんだ」
それは実際の死因ではありませんでしたが、当時そう噂されていたのです。
父は信じやすい情報弱者で、私も親の言うことが絶対の愚かな子供でした。
エルヴィスの強烈なイメージが植え付けらえてしまったのです。
落ち目になったスターが、その苦悩と孤独からドーナツを食べすぎて
惨めに死んでいった様を。
自己管理のできない、哀れなロック・スター。
それが長い間、私にとってのエルヴィスでした。
かっこいいクラシックロックに憧れた10代、20代の多感な頃、
エルヴィス・プレスリーは、聴きたい音楽リストから自然と淘汰されてしまいました。
※以下は、映画のネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。
「エルヴィス」
監督:バズ・ラーマン
出演:オースティン・バトラー、トム・ハンクス
【あらすじ】
「キング・オブ・ロックンロール」と称されるエルビス・プレスリーの人生を、「ムーラン・ルージュ」「華麗なるギャツビー」のバズ・ラーマン監督のメガホンで映画化。スターとして人気絶頂のなか若くして謎の死を遂げたプレスリーの物語を、「監獄ロック」など誰もが一度は耳にしたことのある名曲の数々にのせて描いていく。
ザ・ビートルズやクイーンなど後に続く多くのアーティストたちに影響を与え、「世界で最も売れたソロアーティスト」としてギネス認定もされているエルビス・プレスリー。腰を小刻みに揺らし、つま先立ちする独特でセクシーなダンスを交えたパフォーマンスでロックを熱唱するエルビスの姿に、女性客を中心とした若者たちは興奮し、小さなライブハウスから始まった熱狂はたちまち全米に広がっていった。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」などに出演したオースティン・バトラーがエルビス・プレスリー役に抜てきされ、マネージャーのトム・パーカーを名優トム・ハンクスが演じる。第95回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞ほか計8部門にノミネートされた。(映画.comより)
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・エルヴィスの音楽のルーツが意外!
週に一度のアマプラ鑑賞会。
今週はスーパースターエルヴィス・プレスリーの自伝的映画「エルヴィス」を観ました。
冒頭に書いたように、私はエルヴィスを知る努力を全くしなかったので、
彼は王道の「白人ロックスター」だと信じ込んでいたのです。
もみあげに、フレアパンツのピタピタの衣装。
それは私の中で、あまりイケていない存在の象徴でした。
ところが、なんとエルヴィスは幼少期黒人の住居地区で育ち、
黒人の音楽をルーツとしたミュージシャンだった!
この映画を観て、初めて知りました。
ゴスペル、R&B(リズムアンドブルース)、そしてブルース。
黒人音楽が融合したロックは、私の大好物とも言えるジャンルで、
エルヴィスだけはノーマークだったことに初めて気がつきました。
エルヴィスが黒人音楽にノックアウトされたシーンのまた素晴らしいこと!
そして、エルヴィスの初期の音楽シーン。(60年代までは俳優のバトラーが歌っている)
かっこ良くて、ゾクゾクと鳥肌がたちました。
なぜ誰も、今まで人生の中で出会った本や人々の誰も、
エルヴィスを聴け!と教えてくれなかったのだろうか。
歯軋りするほど悔しい思いを味わいました。
・悪役のトム・ハンクスが素晴らしい
トム・ハンクスといえば、善人の代名詞。
ところがこの映画では、詐欺師のような敏腕なショービジネスマンを演じます。
エルヴィスを国内に閉じ込めて、彼に寄生し彼から搾取の限りを尽くす嫌なヤツです。
エルヴィスが自分を奴隷のように感じるシーンでは、
思わず彼の切なさを感じて、心が痛みました。
感情移入しすぎて、トム・ハンクスが本当に憎たらしくなって、困りました、笑
しかし、大佐というマネージャー(トム・ハンクス)が
有能であったことは事実のようですので、
たとえ悪人でも、彼がいなかったら
エルヴィスはここまで有名ではなかったかもしれない。
その点では、ある意味奇跡的な出会いではあったのだろうと感じました。
・誰がエルヴィスを殺したのか?
この映画の命題ともなる「誰が(何が)エルヴィスを殺したのか?」
私は「ドーナツ病」のイメージからか、孤独が殺したのかと思いながら見ていました。
ところが最後は、全くその正反対の「愛」が殺したのだという答えが出て来ます。
これには感動して、言葉を失いました。
彼は愛情深い人だった。
ファンのたくさんの愛に応えた。
大勢のスタッフを支えた。
そして、全力で「エルヴィス」であり続けた。
その彼の愛こそが、世界で最も売れた個人のロックスターを生み出したのではないかと思います。
サスペンスの導入部のような命題に、とても美しくも昇華した答えが待っていた。
でもそれは、エルヴィス個人の幸せを代償としていたものであったかもしれません。
清々しくて心に深く響くような、しかし哀れな、
強烈なラストでした。
エルヴィスのルーツを辿って、
彼の音楽をこれから聞いてみようと思います。
60歳近いこの歳になって、やっと本物のエルヴィスを
教えてくれる映画と出会いました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今日も心穏やかな一日となりますように。
願いを込めて。


