夜明け前のビートたけし。
こんにちは、ららです。
今日はビートたけしさんの自叙伝的小説、「フランス座」を読みました。
あの有名なストリップ劇場でエレベーターボーイをしていた話は聞いたことがありましたが、
そこに、「師匠」と呼ばれる芸人さんがいて、たけしさんを引き上げてくれたとは、少し驚きでした。
その師匠は、テレビの世界に出ることなく、最後まで浅草で生きた人。
ちょっぴり切なくて、人情があって、時々はちゃめちゃで、とても楽しい物語でした。
【あらすじ】
大学をドロップアウト、特に夢もなく浅草フランス座でエレベーター番のアルバイトを始めた主人公・北野武を、劇場で働くからにはコメディアン志望だろうと決め付けて「タケ」と呼んで可愛がり、仕事と住居を与えたのは浅草で誰もが〝師匠〟と呼ぶ芸人・深見千三郎。時は七〇年代、お笑いの中心がテレビやラジオに移りつつある中で、舞台でのコントを極める師匠に導かれながらも、「売れてみたい」という気持ちを抑えられないタケはやがて漫才という別の道を選び――。尊敬しながらも超えてゆかねばならない師弟の姿を笑いと切なさで描く傑作青春小説。(Amazonより)
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・映画監督・北野武の小説ってどうなの?
映画は好きでも、小説は未読だった私。
きっと文章もうまいのでは? と興味を持って手に取ったのですが、
結果は、予想以上に良かった!
さすが一芸に秀でた方は違う、そう思わせてくれる一冊でした。
何が良かったかというと、小説の背景描写の丁寧さ。
1960年代末〜1970年代の空気感が、ファッションや音楽、文学などカルチャーを通して、生き生きと描かれていて
当時の浅草芸能の息遣いまで感じられるような、そんな一冊でした。
・青春の浅草、姉弟の物語
新宿で流行にまみれ、何者でもなかった一人の青年が、
浅草に流れ着き、本物の芸人になるべく走り出すーー。
フランス座での仲間、そして師匠・深見千三郎との出会い。
彼に「タケ」と名付け、見込んで、仕事と住まいを与えてくれた師匠の存在。
この過程がなんとも言えず良いのです。
青年が何を賭けて、何に挑んで、何を選んだのか。
そのすべてが自然と胸に入ってきて、読みながら思わず頷いてしまいました。
物語の終盤では、劇場の仲間たちの命が軽く扱われる場面もあり、
少し胸が詰まるような切なさも漂います。
けれど、単なるハッピーエンドでなく、「五里霧中の中にいる状態」で物語が終わるところが、また良かった。
なぜなら、私たちはその後の彼、ーー漫才ブームの頂点に立つビートたけしを知っているからです。
このラストが「夜明け前」のような、静かな余韻を残してくれました。
・口頭記述かもしれないけれど・・
もしかすると、本人が話した内容をライターが書き起こしたのかもしれません。
それでも、背景描写の鮮やかさや、豊なストーリー展開には脱帽。
まるで目の前に舞台が広がるような臨場感がありました。
とても面白く、切なく、そして希望を感じる青春小説でした。
近年は「老害」なんて言われることもあるビートたけしさんですが、
やはりこの人は、大物なのだと再認識させられる一冊です。
夢を持ちたい方、本物の芸人魂に触れてみたい方に、ぜひおすすめしたい作品です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今日も心穏やかな1日となりますように。
願いを込めて。
ららより



