鉄道に乗って東北へ出かけよう! その② ~白神山地の再会~



 五能線は青森に向かって緩やかに海沿いを走る。
 途中、秋田県山本郡八峰町八森字釜の岩館駅で15分ほど停車した。アナウンスを聞いた乗客は一斉に席を立ち、カメラを抱えてホームへと降りていく。
 乗っているのは男ばかりだった。20代から50代の冴えない風貌。向かい合わせた2人掛けの座席に、それぞれ進行方向を向いて1人ずつ座っている。時折、思い出したように、車窓の景色を撮っている。
 彼らに挟まれて、私は海沿いの座席に座っていた。山側の座席も空いていたので、その方向からシャッターの音が鳴ると、慌てて山側の景色を撮りに移動した。
 岩館駅のホームに降り立って、さて、どうしたものか。車両先頭部の写真でも撮ろうかとホームの先端に歩いていくと、すでに冴えない彼らが3人ほど陣取っている。先頭部を撮る気配もない。仁王立ちして線路の先を眺めている。

 「五能線ですか。」

 彼らの一番外側に並んで、声をかけた。隣の背の高い青年の顔を覗くと、太陽を背中に受けて陰った顔を嬉しそうにくしゃりと歪めて頷いた。
 能代を出たときは今にも降りだしそうな霞がかった空だったが、列車が進むほどに、雲は流れ、気持ちよく晴れ渡っている。
 私は広角レンズを付けていることを思い出して、車中に戻った。カメラのレンズを望遠レンズに替えた。これは生まれて初めての「撮り鉄」になるかもしれない。何度もコンデジで自分が乗る電車を撮っていたが、走っている電車をきちんと撮ったことはなかった。
 カメラに望遠ズームレンズ(EF70-200mm F2.8L IS USM)を装填すると、気合が入った。男たちの端に立って線路の先に標的を合わせる。一瞬にして、彼らと連帯感が生じたようだ。

 後ろにはギャラリー。遠慮して場所取りからあぶれた青年と、年配の夫婦連れが面白そうに見つめている。思い切り格好をつけて、構えたまま電車を待つが、これがなかなか来ないのだった。
 立った男たちの後ろからだと見えず、彼らの一番端からだとホームが邪魔をする。下の隙間から撮ってやろうと座り込んで構えていたが、それでも腕が痛くなってきた。ほんの一瞬の連帯感だったようだ、撮り鉄になるにはまだまだ体力も根性もなさすぎる。




五能線からの景色。海が見えてきた!

山側はススキと田園風景。今回の旅、線路沿いはススキばかりで
東北はススキノの王国かと思うほどだった。

五能線と撮り鉄くんをバックにポーズ。これも撮り鉄氏に撮ってもらう。

キターーーー! 初めての一眼で撮った五能線。ホームが邪魔だった。。



 待つことしばし2、3分、線路の彼方から五能線がやってきた! 一両だともっと良かったが二両編成だ。流し撮りとかしたほうがいいのだろうか、いや、ホームに着く直前なのでそんなスピードも出ていないのである。とりあえず、手当たり次第パシャパシャと撮る。
 ホームは入っているし、ひん曲がっているし、後で見たら、なんだかなぁ・・という感想だったが、とりあえず撮った。一斉にカメラを下ろす男たちと、安堵の間を共にして、すたこら車中に戻っていく。すぐに出発だ。

 五能線は青森に突入する。青森県西津軽郡深浦町の十二湖駅に到着。男たちとここでお別れして、駅を降りた。
 ブログ用に駅の表札とホームの情景を撮る間もなく、ひとりの女性と目があった。私の顔を覗き見て、腰を屈め、両手を差し出して、顔をくしゃくしゃにして近付いてくる。

 直ぐに同じ笑顔になった。同じように両手を差し出し、近付いて、

 「お久しぶりです。」
 「久しぶり~」

 1年半ぶりの再会だった。昨年の5月、新緑の時期にここに初めて来た時に、白神の森のガイドしてもらったF子さんだ。
 手紙と年賀状のやり取りを重ねて、今回再訪する直前に電話をかけたのだった。
 F子さんは目の覚めるような鮮やかなピンク色のプルオーバーを着ていた。明るい笑顔とよく似合っていた。
 前回、新緑のブナ林の中を歩く彼女の後ろ姿を撮った。唯一彼女を撮った1枚だった。私はその写真をとても気に入って、プリントして彼女に送った。私の道案内をする彼女の、颯爽とした後ろ姿が、私にはとても尊く、勇ましく感じられたのだった。その時のウェアも鮮やかな赤のチェックシャツだった。白神の森によく映えていた。
 私は秘かに、今回は彼女の後ろ姿だけではなく、正面からの姿も、明るい笑顔を交えて撮りたいと思っていた。だから彼女の鮮やかなウェアを見て嬉しく思った。
 森の中を行くF子さんは、また素敵に見えることだろう。

 「写真立てに入れて飾ってあるのよ。」

 後でF子さんはそう教えてくれた。めったにそんなことはしないのだけれど、あれは気に入って・・と少し照れくさそうに話してくれた。
 久々の再会を懐かしみ、今日の予定を話し合った。私は午後に田舎館に行くことにしたので、午前中だけ案内して欲しい旨を伝えた。

 「13時のリゾートしらかみね。大丈夫、じゅうぶん時間あるから。」

 F子さんは車を用意してくれたという。白神の森を見たあと、車で近場のおすすめの観光スポットを巡ってくれるという。
 十二湖駅のホームから構内を歩きながら、慌ただしく、女子高生のようにかしましく語り合っていると、ふと後ろから声がする。

 「ガイドさんは、予約しないとダメですか」

 F子さんとふたりで振り向いた。
 




(続く)

※今夜か明日朝にアップします。また見に来てね~^^



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