醜さの中の愛を描いた傑作「彼女がその名を知らない鳥たち」。

 

 安倍元総理の妻、昭恵夫人がロシアのプーチンと会ったとのこと。

 ロシアのメディアが報じて話題となりました。そのことについて、日本政府は関与していない、とのコメントを林官房長官が出したことも驚きをもって報じられました。

 昭恵夫人は昨年末、就任間近のトランプ大統領とも会談しています。

 トランプさんと、プーチンさん。二人が昭恵夫人と会いたがることに関して、個人的に思うことは、死んでもなお、他国の恣意のために利用される安倍元首相・・そして、その忌々しさ。

 まるで他人に利用される我が身のように、情けなく感じられてしまいました。


 さて、今日はそんな現実世界とまるでリンクするかのような物語を読みました。男に利用されるばかりのダメ女を描いた、大人の恋愛小説です。

 彼女を救うヒーローは、冴えない、不潔な中年男。人生の底辺の男です。

 なんともまぁ、こんな醜くも美しい純愛を描いたものか・・。





 彼女がその名を知らない鳥たち(沼田まほかる)


 【あらすじ】

 十和子は淋しさから、飲み会で出会ったうだつの上がらない中年男・陣治と関係を持ち、なんとなく一緒に暮らすようになる。ある日、陣治の部屋で、昔の男から贈られたピアスを発見する。何故ここに・・・。十和子が選んだ驚くべき行動とは!

 壊れかけた女、人生をあきらめた男、ダメな大人が繰り広げる100%ピュアな純愛サスペンス。(幻冬舎版の本の帯より)

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 ・読後の感想。

 何十年も昔に、沼田まほかるブームが起こったと聞きました。新刊を読書ファンの皆が待ち侘びて、「ユリゴコロ」が発売された時は、熱狂を持って迎え入れられたというエピソードを知って、嘘ではないか、と思ったものです。

 でも、今日、沼田まほかるさんの二作目の「彼女がその名を知らない鳥たち」を読んで、その逸話が事実であることを確信しました。これは読書マニアが熱狂するのも無理はない。

 そう思わせるほど、印象的な物語でした。


 ・愛は、魔物かもしれない。

 ジャンルはミステリとされながらも、本作はむしろ純愛小説と呼びたくなります。私は谷崎潤一郎の「痴人の愛」を思い出しました。

 愛だけが心を支配する日々。そんな日々の記憶がよみがえって、少し詰まりそうになりました。愛はときに、理性を奪い、私たちを奈落に引きずり込む魔物です。

 しかし、ミステリ的要素もかなりあり、謎でぐいぐい読者を引っ張るところは読み応え抜群でした。一部ではイヤミスとも言われているようですが、まぁ、読者を選ぶところではあるかもしれません・・


 ・陣治という奇跡。

 この物語の最大の魅力は、なんといっても主人公十和子の同居人・陣治の存在。

 不潔、下劣なトラブルメーカー。しかし、深く、一途な愛を持つ、白痴的な心の美しい男。なんの矛盾もなく成立する陰と陽が裏腹な男。

 このキャラクター造形は圧巻でした。ご飯3杯はいけそうなくらい濃厚で、読み応えがありすぎる!

 この純真な男(十和子の男)と対比するように、狡猾でゲスな男たち(十和子の愛人)が描かれます。彼らのおかげで、より陣治のいい面も悪い面も際立つという・・

 ミステリ要素と、ラストの種明かしも素晴らしかったですが、それさえも、まるで全ては陣治のキャラに帰結するかのように描かれています。

 ・誰におすすめしたい?

 これは「大人になってしまった、ダメな大人たち」にこそ読んでほしい物語です。何かを諦めてしまった人、自分を嫌いになりかけている人。そんな人がこの物語に出会えば、きっと胸の奥に突き刺さる何かがあるはず。

 そして思うのです。
 ああ、大人になっても、こういう切ない恋をしてしまうのかと。


 それにしても、最後はハッピーエンドにして欲しかった。絶対。陣治のために。

 切実にそう思わされる一作でした。


 ・現実の「利用される構図」と重ねて・・

 最後に冒頭の話題に戻ります。

 昭恵夫人の外交的な振る舞いに、誰かに利用されているのではないかという疑念を感じました。

 昭恵夫人を救おうとしてくださっているのが、トランプ氏であったり、プーチン氏であったりするのかもしれません。そこには愛があるのかもしれません。

 それでも国と国の間の紛争に、利用されているという印象は拭えません。本人の意思であっても、結果的に駒とされてしまう構造。

 昭恵さん、それがわかっていて、出向いているのでしょうか。なんとなく、政治家になるつもりなのかと驚かされました。(そのような野心がおありなのではないかと・・)

  もし、そんな気持ちがないならば、もう各国の要人のお誘いにはそう簡単に乗らない方がいいような気がしますが、皆さんはどう思われますか?




 今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

 どうか皆さんに、心おだやかな時が訪れますように。

 願いを込めて。




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