お箱根様で人生訓をいただく。〜明神ヶ岳、明星ヶ岳登山記〜
箱根外輪山の中でも古いと言われる山に登ってきた。
明神ヶ岳と明星ヶ岳という。
明神ヶ岳は、ヤマトタケルノミコト(日本武尊)の東征の道と伝えられ、明星ヶ岳は、35万年〜27万年前に形成されたという宵の明星が輝く山だ。
両方登っても4時間程の行程なので、例によって始発で出かけて、お昼で山を降りてきた。
「もう登ってきたのですか〜」
と明星ヶ岳の登山口で地元の方に声を掛けられ、元気よく「はい」と答えたら、「まぁ、早いですねー」と褒められた。
「明神ヶ岳も登ってきたんですよ」とよほど言おうかと思ったが、嫌味なのでやめた。
それにしても箱根の山は丹沢とは少し毛色が違う。何とはなしに、お上品だ。登山道は避暑地の別荘と隣り合わせになっていて、誰もいない家の窓から見える屋根裏の寝室などを見ながら進んでいくのだ。
丹沢のように登山道が険しいこともなく、まるで裏庭のお散歩道のように緩やかな坂道が続いていく。
そして、標高1000m 近い登山道の両脇には背の高い笹が生い茂り、芝のような草が青く青く茂り、ホトトギスが歌うように鳴く声が響きわたり、それは優雅なのだった。
お箱根様の山を登りながら、今回も私は色々なことを考えた。
例えば、事前にプランニングするときに、標高何メートルほど登るのか、それが何分かかるのか、ということは考えるのだが、方向についてはあまり頓着していなかったことに今回気がついた。明神ヶ岳を登っている時、自分が西に進んでいるのか、北に進んでいるのか、ふとわからなくなったのだ。少し考えて、西だとわかったのだが、これを事前に頭に叩き込んでおかなかったことがとてつもない失錯のように思われた。
登山と人生はシンクロする。登山の学びは人生の学びととてもよく似ている。
ということは、私は人生の方向性が曖昧なまま進んでいる時があるのだな、と思われたわけだった。
少なくとも、方向は蔑ろにして計画(人生設計)している。
それって、ダメじゃん??
そして、もう一つ大切な教訓をいただいた。
ワタクシ、明星ヶ岳の山頂で自撮りをして、とてもいい気分だったのだが、その後に、お気に入りのグローブを落としてしまったのだ。
明星ヶ岳で置いた場所も覚えている。なので、取りに戻ったのである。少し離れた分岐まで進んでいたが、お高いミレーのお気に入りのグローブだった。
そうしたら、ちょうどその時、団体さんが分岐から現れたのだ。ワイワイ楽しそうに喋りながら道を塞いでいる。急いで戻りたい私は彼らの後から着いていく感じになった。困ったなぁ、と思った私に最後尾の人が気付いてくれた。
それで、「すみません、忘れ物をしちゃって・・」と声をかけたら道を譲ってくれたので、横から追い抜いた。
そうしたら、皆が一斉に振り向いて、そのうちの一人が、
「追い抜きー!!!」と大声で言うのである。
注意喚起、と言うやつなのだろうが、こちらはびっくりして、「すみません、」と言いながら走っていった。余計焦ってしまったのだった。早く行かなくては、と。
団体は正義である。
少なからず、嫌な思いをしてしまい、急いで戻ったものの、山頂には手袋がない!
一人男の人が休憩していたので、後から考えれば、彼が取ったのかもしれなかった。しかし、まさかそんなことをする人がいるとは思えない私は、あちこち探して、絶対あるはずのグローブがないもので、冷や汗が出た。
神隠しにあった・・・みたいだ。
真面目にそう思ったのである。
失くしたものは、何かの代償として天に持って行かれた、つまり、神様にくれてやった、的な・・ そんなふうに思って諦めた方がいいとは思ったが、しかし、これは何の教訓なのだろうかと考えてしまった。
そのうち団体さんがやってきて、探してる私のそばから明星ヶ岳の山頂を満喫し始めて、仲良く皆んなで記念撮影まで始めたのだった。
「はいっ、チーズ!!」
写真上、登山道に見事に咲いていたツツジ。
写真下、西の方角に、ハッキリ見えた富士山。隣が明神ヶ岳の山頂。
そうしたら、さっきまで自撮りで満喫していたのに、急に、自分が寂しい人みたいに思えてしまったから困ったものだった。
「追い抜きー!!」なんて言われて、次は「はいチーズ!!」で、しかも、グローブは見つからない。
山と人生がシンクロしているならば、これは一体何の教訓なんだろう。
失くしたものには執着するな、と言うことだろうか。
私の人生はもう短い。
これからも物を、人を、失う機会はあるだろう。
そのときに、どう捉えるか、どう対処するかを問われているような思いがしてしまった。
時間のロスはもうできないのだ。
帰り道に、私はミレーオンラインストアから、全く同じグローブを購入した。
高い勉強料だなぁ、などと思いながら。
そして、今度もし失くしたら、その時は、取りには戻らないだろう。今日のお箱根様の山のことをきっと思い出すに違いないのだ。(了)
・・・・、
皆様、失くし物したことありますか?
お気に入りのものだと、まぁショックですよね。
私は物をよく失くしやすい性格です。人も時々失います。
今回の旅で、傷つくことを事前に防ぐ方法を見つけられたような気がします。
失ったものには執着しないぞー
今日も最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。
素敵な時間を過ごされますよう。
願いを込めて。