風邪をひいて果物のありがたみを知る。
風邪をひいて寝込んだ。発熱をするのが久しぶりの体験だったので、あの高山病にかかったようなしんどいだるい感じも、胃がムカムカする吐き気も、全てが懐かしく感じれられた。
幸い、熱は3日で治ったのだが、通常なら1週間から10日は完治するのに要するという。なぜ、3日という異例の速さでことなきを得たのか、と言えば、あれだ。
果物を食べたのである。
(写真はお散歩風景です)
果物。その熟れた果肉に、滴る蜜のような果汁。鮮やかな彩りに、丸みを帯びた優しい造形。そして、ずしりとした果てのない重さ。どれを取っても王者の貫禄の食べ物である。
2日間、水やアクエリアスを飲んでは吐いて、を繰り返した私は、そうだ、果物を食べてみよう、とふと思ったのである。
脳裏に浮かんだのはこんな言葉だ。
「食べる点滴」
そうだ。きっといける。果物なら吐いたりしないだろう。きっと胃に馴染むに違いない。
案の定、果物は胃に収まってびくりともしなかった。タップんタップん、ゴロんゴロん、なんてしないのである。乾いた喉を潤してくれて、熱で火照った体を冷ましてくれた。
初めに食べたのは桃である。それから梨を買ってきた。(一番近いコンビニは果物が売っていた)すると、38度6分あった熱は、一気に36度9分まで落ちたのである! なんということか。これが果物のおかげでなくていったいなんだというのだろう。
調子に乗った私は、重い体を引きずってスーパーまで行き、今度はスイカを買ってきた。8分の1のカットスイカである。
このスイカが効いた。何せ、水分が多いのがよろしかった。熱は下がってもまたすぐ悪魔のように38度5分前後に上昇するのだが、スイカを投入したら、またしても36度7分まで落ちたのである。スイカで熱を冷ましてからは、徐々に熱は上昇しなくなっていった。
風邪が治ったのもさることながら、果物を食べて何が良かったかと言って、あれだけ水分をとっているのに、全く太らなかったことである。そして、ものすごいお通じが出た。
宿便まで出尽くしたのではないかと思うくらい、便が出た。
果物というものが胃腸を綺麗にする力があるのだということを思い知ったのである。
以前、果物しか食べない男の方がいらして、その方の特集記事を熱心に読んだことがあった。中野瑞樹氏、(紹介記事はこちら)今彼はどうしているのだろう。やはり今でも果物しか口にしていないのだろうか。
そんなことに思いを馳せたのは、私も果物しか食べない生活をしたらどれだけ健康になるだろうか、と思ったからである。
おそらく、根本から体の作りを変えてくれるようなそんな予感すらする。
しかし、それを思いとどまらせるのが、果物の値段だ。
3日間で私の出費は9千円をゆうに超えている。いつもの5倍以上である。一回に980円の小玉スイカを食べ尽くしたり。280円の香水を朝のコーヒー代わりにいただいたり。
貴族だな・・・
思わずそんな言葉が口から漏れてしまう。「これは貴族だ」。
果物というのはどうしてああも高額なのだろう。体にいいものは高いということなのだろうか。果物のおいしさを知ってしまったら、いつもの食生活に戻るなんて、まるで体に悪いゴミや残飯を食べているような気分になってしまうから不思議である。
庶民なんだから、貴族じゃないんだから。そうそう桃だの梨だの食べてられないよ!
と言い聞かせてみるものの・・・
思えば果物は、神から与えられた食べ物である。古くは聖書にも出てくるではないか。
楽園をアダムとイブが追われる前に、それはそれは素晴らしい果実がたくさんの園であったと・・・人間はやはり果物を食べるのが本来の姿なのかもしれない。そうだ。中野瑞樹さんは正しかったのだ・・・
そう思うと、果物の効能は納得がいくというのか、値段も納得がいくというのか。
そうは思うものの、やはりもう少し庶民に優しい値段だったら嬉しいものを。
風邪をひいて、寝込んだのである。そして、果物の素晴らしさを再確認したのである。
熱が下がった今、貴族にはなれないが、庶民でもできる範囲の果物との付き合い方を探してみようかと思い始めている。