池袋で真理ちゃん映画祭りを見る。
こんにちはー
前に書きましたが、最近、50年ほど前に国民的アイドルだった天地真理さんにハマっています。ファルセットの歌声がいい。あと70年代のファッションがオシャレです。そして何より、全盛期の純真なアイドル時代から、売れなくなってポルノ路線に走ったり、お笑いの醜いキワモノとなったり、頂点から芸能界のドン底まで落ちていった人生の経歴にもとても興味深いものを感じています。昭和の悪しき時代の芸能界に徹底的に痛めつけられ、翻弄された典型的な一人だというのに、あの色褪せない透明な歌声、若き日の純真な笑顔の魅力は、もうマジックとしか思えません。
というわけで、日曜日に天地真理さんの歌手デビュー50周年記念イベントに出かけてきました。その名も「真理ちゃん映画祭り」です。
天地真理さんって、私の子供の頃のアイドルとは少しだけ時代がずれてるんですよね。「真理ちゃん」が冠番組のテレビを見たのをかろうじて覚えていますが。でも映画があったのは知りませんでした。真理ちゃんの映画は現在DVDにもなっていなくて、動画配信サイトにも登場しませんし。
真理ちゃん映画祭りでは、真理ちゃんのその貴重な映画の二本立て。沢田研二さんが共演の「虹をわたって」と、森田健作さんが共演の「愛ってなんだろ」です。共演者にも時代を感じますよね。真理ちゃんの70年代のレトロなファッションもいつも可愛らしいので、映画も楽しめると期待して出かけてきました。
真理ちゃんファンの方は、ファンの集い自体が3年ぶりらしいので、とても嬉しかったでしょうね。楽しい集いになったことと思います。少し羨ましいですが、私は本物の真理ちゃんを一目見れるだけで十分です。今日は映画の前に舞台挨拶をされるそうなので、楽しみにしてきました。
ナベプロさんって、真理ちゃんが全盛期の時のプロダクションで、落ち目になっても、長期休業の後でも、月給の300万を払い続けたそうなんですけど(聞いた話なんで違ったらごめんなさい)、ついには雇いきれなくて、ナベプロ帝国から放り出してしまった。その後真理ちゃんの給料は他のプロダクションで50万円になったと聞きました。
もう限界と思えることがあったと思うんですが・・ 今ではいい関係を築いているんだな、と思ったら何となく嬉しくなりました。まぁ、真理ちゃんがすぐ他のプロダクションに行けたのもナベプロさんといい関係だったからかもしれませんし。この映画祭りの二本の映画を作ったのがナベプロさんだからというだけかもしれませんけれど。
横浜山手のお嬢様マリが、父親が水商売の若い女性と再婚したのに傷ついて、家出をする物語。この映画、ぎょっとしたのは、真理ちゃんの家出先がちょっとヤバいところだったんですよね。社会的底辺の方々がおられるところだった。今はなき、不法係留で知られただるま船の船宿なんです。今は横浜のどこの水辺を見ても、綺麗になってしまいましたが、50年前まではこんなオンボロ船がゴロゴロ留まっていました。その景色が、実物は見た記憶もないんですけれど、妙に懐かしいんです。今まで、殺風景な海辺や道路沿いの川を見て、漠然と奇妙に感じていた違和感が、パズルのピースがピタリと合ったように、納得してしまいました。いかにも「らしい」じゃないですか。欠けていたのはこれだったのか、と。これって、日本の原風景なんじゃないかとさえ思ってしまいました。
だるま船で暮らしている社会的底辺の方々が真理ちゃんと仲良くなる。白雪姫の小人のように真理ちゃんのしもべとなるわけです。いえ、実際は、世間知らずのお嬢様を売り飛ばそうとしていたりするんですけれどね。アイドル映画だからそこはお笑いでオブラードに包んでいる。そして、社会的底辺の彼らが何よりも求めているのは、人並みの暮らしができる素敵なマイホーム。白雪姫がいつか王子様と結ばれて、お礼に小人たちにマイホームをプレゼントしてくれるのではないかという夢ばかり見ています。
自分の家を持つことがステータスだった高度成長期の遺跡のような映画でした。
面白いのは、白雪姫の意地悪なお妃、この映画でいうと水商売の継母なんですけれど、彼女が、だるま船の川で暮らす貧しい者たちの出身者で、小人たちの仲間だったという下りです。だるま船の底辺の生活を知った真理ちゃんは、継母の自らの境遇から抜け出そうと必死にもがいている強かさと哀れさを知ることになるのです。
戦後の日本も、こんな風に、貧しい境遇から抜け出そうと必死だったのか、映画は必死だった時代をちょうど抜けた辺りだったのか?
どのシーンを見ても、50年前の日本がとても興味深かったです。
それにしても、あのだるま船に住んでいた方々は、今はどこに消えてしまったんでしょうかね。彼らの居場所が、どこか別に与えられていることを願うばかりです。
「愛ってなんだろ」
こちらは、天地真理演ずる真理子がおもちゃ会社のOLでイラストレーターをしています。そこにかっこいい男性社員が途中入社でやってくる。
こちらの映画は日本の会社が今のように(経営者側も雇用者側も)分裂していなくて、家族みたいに一丸となっていた時代のお話でした。みなさん本当に仲が良くて楽しそうに働いていらっしゃる。真理子がイラストレーターというのもイケていた(当時の職業の象徴)のだと思います。そして真理子の実家は、パン屋さんで、家でパンを焼いてケーキを作っているのです。甘い香りが胸をくすぐってくるというのか。心優しい使用人の男の方もいてね、うまくいっている家族経営の典型ですよ。こちらも、日本の商店が全盛期だった頃の古き良き時代の遺跡。今となるともう夢物語みたいな懐かしさです。
先ほどね、天地真理は悪しき昭和の時代の犠牲者のような書き方をしましたけれど、その彼女が、昭和の古き良き時代の一面を、こんなにキラキラと教えてくれる。なんかもう、すごいとしか言えませんよね。
真理ちゃんが大忙しでてんやわんやだった時代に、大急ぎでやっつけで作ったアイドル映画であろうに、何なんでしょうね、いろんなことを考えさせられるというのか・・ 例えば、だるま船の小人たちは、最後に真理ちゃんに会いに行ってお父さんに「もう来ないでください」「マリに二度と会わないでほしい」と言われるんですよね。住む世界が違うことを突きつけられる。どうしようもなく切ない結末なのに、彼らは笑って、自分たちの力でマイホームを建てることを語るわけです。
あと、個人的には、「愛ってなんだろ」のタイトルが本当に「そのまんま」で、愛が何かを考えさせられたところが、想定外でした、笑
そして、真理ちゃんのファッションも期待通りとってもおしゃれで、見応えがありました!
総じて、とても興味深い良い映画だったと思います。機会があったら、是非見てみてくださいませ。
「虹をわたって」は、来年3月にDVDが発売されるそうです。
私の前の席の方が、荷物がなくなったと大騒ぎしていました。映画が始まる前ですけれど、ここに置いておいたのに・・・(グッズを買いに行っている間になくなったようです)とずっと探されていて、まさか誰も取らないと思うんで、席を間違えてるのでは、と思ったんですが、本人はチケットと席を見比べていますし、どうしたことやらと思っていたら、スタップの方と一緒に確認に来られて、やっぱり席が違っていたようでした。最初に荷物を置いた席と違うところを探していらしたのですね。
「どうもすみませんでした!」と犯人扱いしてしまった別のファンの方に謝られていました。真理ちゃんも歳をとったけれど、ファンも年をとりますよね。そんなこともあるある、と思わされてしまいました。
「ごめんなさい、最近ちょっともうろくしちゃってて」
真理ちゃんの舞台挨拶の時の言葉です。真理ちゃんは「虹をわたって」だけではなくて、「愛ってなんだろ」もDVD化されると思っていたようなんですよね。それを進行の方に指摘されて、笑いながら、そう言ったんです。「最近ちょっと、もうろくしちゃって」
こんなこと、笑って言える、真理ちゃんがとても愛おしいです。
ファンの方も、頑張って集まりましたよね。
時代がどのように変貌を遂げても、変わらぬ笑顔で元気を与えてくれる真理ちゃん。本当にありがとう。また55周年記念、60周記念と、こういう機会があることを切に願います。
ではでは、最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。
素敵な時間を過ごされますよう。
願いを込めて。