孤独な老人と孤独な若者の平行線、「グッド・ネイバー」

 

 こんばんはー

 キングコングの西野さんが吉本をやめてしまいましたね。唐突ですみません。これ、私の中ではかなり大きなニュースです。一芸人が所属事務所のマネジメント契約を終了した、というただの話ではなくて、新しいビジネスモデルと旧体制との調和というのか、歩み寄りというのか、そういうものがすべて失敗に終わった、というかな〜り痛い現実を突きつけられた気がしました。

 一個人の意見ですが、西野さん(ネズミ講とか言われてますが、それよりは新しいと思う)側には歩み寄りの気持ちがあったんですよね、でも吉本がシャットアウトした。

 なんとなくねー、日本の未来は結構困難だな、という予感がしてしまいました。才能のある個人を、もしくは新たなビジネスモデルを、譲歩して受け入れる余裕もなければ準備も全くできていない。このままでいいのかなぁという漠然とした不安も感じます。

 ジャニーズしかり、吉本しかり、またコロナ禍により大手アパレルに外食産業、今まで良しとされてきた様々な業界の業態や体制は今や崩壊寸前です。

 もう少し、今までからすると異形(異形態)なものに、寛容になって共存する道を模索してもいいんじゃないのかなぁ・・・なんて思いますが、皆様どうお感じですか??


 さて、今日のおうちmovieは隣人との歩み寄り・・・いや、新旧の関係性が大失敗に終わって、大きな事件となってしまった「グッド・ネイバー」。

 いや〜 怖いね。人間の闇は。人のプライバシーに土足で踏み込むと、こういう災難が待っている。それ以前に、他人に安易に関わるとえらいことになる時代ですね。



 「グッド・ネイバー」

 カスラ・ファラハニ監督。ジェームズ・カーン、キーア・ギルクリスト、ローガン・ミラー出演。

 【あらすじ】
 ショーンとイーサンは、隣の家の嫌われ者の老人に悪戯をしようと計画した。隠しカメラを設置し、電気製品やドアに細工をして、超常現象を起こし、幽霊を信じさせるというもの。老人が驚いた様子を動画サイトに投稿して、自らは有名人(人気YouTuberのようなもの)になろうという一石二鳥の計画だった。ところが、何をしても老人は冷静で、逆にショーンとイーサンを驚かす「ヤバい」行動を起こすばかり。どんどん深みにはまっていくショーンとイーサン。次第に悪戯では済まなくなり、若者と老人の間に横たわる深い溝が浮き彫りになっていく。




 主人公のショーンは父親の件で、老人にちょっとした恨みがあるんですよね。物語中盤で、老人に悪戯を仕掛けたその動機が明かされますが、それを差し引いても、この映画での描かれ方は今時の若者。自らが動画サイトで有名になるためならば、他人のプライバシーなどほどんとお構いなしというのか。割と自己中心的なんです。
 ところが老人はそんな今時の若者をあざ笑うかのような、恐るべき反応を見せてくれます。




 例えば家のドアをばたんばたん開閉させれば、沈着冷静に斧を持ち出して、しのごの言わずにそのドアをぶち壊してしまう。
 他人の家にカメラを仕掛けて悪戯する方が異常ならば、老人はそれを上回る異常さで返してくる。驚くのは老人ではなくて、若者たちの方というわけなんです。
 そこがちょっと小気味いい。犯罪めいた悪戯になんか負けていません。さすが戦争をかいくぐってきた老人は違うわ。(いや、戦争行ってるか知りませんが・・)もやしっ子の悪戯なんかどこ吹く風。


 撮影と実験を続けるうち、ショーンとイーサンは、老人の家の地下室に秘密があることを知ってしまいます。そこには死んだ奥さんが(老人が殺したと思っています)、隠されているのかもしれない。その秘密を暴きたくてたまらなくなってしまう。

 そこから悲劇が生まれます。地下室に忍び込んだショーンは、古いベルを持ち出して、リビングのテーブルに置いてしまう。幽霊の仕業、というわけです。それを見た老人は、突然拳銃を持ち出して、自らの頭を打ち抜いてしまいます。
 最後まで驚きっぱなしの、何が何だかわからないショーンとイーサン。

 しかしそこには、そのベルにまつわる美しい思い出がありました。





 老人は介護していた(今は亡き)奥さんと約束をしていたんですね。
 「いつでもベルを鳴らしてくれ。すぐに駆けつけるから」と。だからショーンが誤って鳴らしてしまったベルの音を聞き漏らしませんでした。




 すぐに眠りから目を覚まして、リビングのテーブルの上に置かれたベルを見て、奥さんの元へと駆け付けてしまう。自らの命を絶って、あの世に行ってしまうわけです。
 老人の今までの(若者にとって)不可解な行動は、すべて奥さんの記憶と結びついていました。
 最後までそれを理解することなく、人気YouTuberと自らの計画にこだわって、人ひとりの命を奪ってしまったショーンとイーサン。犯罪者として裁判にかけられた二人は、やっと自分たちのしたことのコトの重さを理解・・・・




 いや、これがしないんですねー
 初犯のため保護観察で釈放された二人。最後にショーンは見物人やカメラに囲まれて、有名になった自分に気がついて、徐々に表情が変わります。まるで微笑むような、恍惚とした表情を浮かべてエンドロールなんです。

 そして、老人の方は、悪戯をきっかけに、奥さんの待つ天国に行けたのかというと、自殺だし、どうなんだろうなぁ、という感じですが。もうずっと、奥さんを亡くしてから死んだように生きていたわけです。それをこんなきっかけとはいえ、幕引きできて、しかも奥さんから呼ばれたと思い込んで! 本人からしたら本望という最期を迎えることができました。

 最初から最期まで若者には眼中なし。自分の美しい思い出の中だけで生きている。老人を驚かせたい、秘密を暴きたいと躍起になった若者たちの、最期まで空回りです。

 なんなんでしょうね。この最後の最後まで、決して交わることのない、若者たちと老人の想いというのか、生き様というのか。不毛ですよ。両者にはあまりにも深い溝がありすぎたように思います。事件が終わった後になっても。

 その辺りがなんとなく、最期まで虚しいような、無常さを感じさせられる物語ではありました。

 あれですよね、キングコングの西野さんと吉本にも、これくらいの溝はあるように思いますよね。どちからというと老人目線で物語を見ていましたが、若者たちもかわいそうなような気がしてきましたよ。まぁ、カメラに囲まれて微笑んでる時点で、その同情も帳消しですがね・・


 とうわけで、まとめです!
 B級映画のグッド・ネイバーを見たら、予想外に役者も最高で面白かった!
 隣人に幽霊を信じ込ませて怖がらせようとした若者たちが、逆に隣人から怖がらさせられてしまうあたりが最高! 幽霊より強いのは、人の心なり。隣人にはむやみに関わらないほうが得策という、現代社会の掟の見本のような映画でした!
 ただし、最期の老人の思い出(奥さんとの逸話)にはほろりとさせられます。
 ですが、そこに感動すればするほど、若者との理解しえない平行線の関係性に愕然とさせられます。
 こんなんで、これからの人間社会は大丈夫でしょうかね・・・???


 ほとんどネタバレで全部書いちゃいましたが、もし興味のある方いたら見てみてくださいませ。

 ではでは、素敵な時間を過ごされますよう。
 願いを込めて。





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