あの時代は純真だったなぁ・・北アルプスに挑んだ挑戦者たち「黒部の太陽」



 こんばんは!
 
 リニア中央新幹線の27年開通が危ぶまれているそうです。理由は、静岡県知事が反対しているから。南アルプスをトンネルで貫通するなどとんでもない。反対しているわけではないが慎重に事に当たって欲しい、というのが知事の言い分です。

 静岡県は、トンネル工事によって、流域60万人の生活や産業を支える大井川の水資源への影響を懸念しています。(TBSニュース26日より)

 というわけで、現代に先立って約65年前、北アルプスをトンネルで貫通した黒四ダムの実話、「黒部の太陽」というmovieを見ました。




 熊井啓監督。三船敏郎、石原裕次郎主演。
 関西電力は大阪の慢性的な電力不足を解消するため、富山の黒部川上流の秘境に、何度も計画を阻まれていた水力発電ダムを建設する事に決めた。資本金の3倍(最終的に5倍)の総工費で挑んだ、社運を賭けての工事だった。北アルプスの自然は想像以上に過酷で、工事用道路のトンネルを作る事にまず足を取られる。地盤は破砕帯という突破不可能と言われた固い地盤が80メートルも続いていたのであった・・・


 いや、いいですね。戦後初の土木工事の集大成。今なき間組、鹿島建設、熊谷組、佐藤工業に大成建設と有名どころが名を連ねます。オープニングからドキドキしてしまいます。




 み進めるうちに疑問に思ったのは、65年前とはいえトンネル工事が原始的だということ。トンネルを支える支保工というものも、木ですよ。北アルプスを木で支えているんですよ。(一部は鋼材でしたが)あらら、これで北アルプスを貫いたわけ、と驚かされ、そのうち更にすごい地質の破砕帯なるものが現れて(破砕帯も木で支えています)・・やっと最新技術を駆使し始め、薬液注入にシールド工法(現代と同じ工法)とか言い出すものの、シールドが出てこない。妙な鉄の塊・・まさかこれがシールド?? というような原始的なもので、またまた驚かされ(勘違いしていたらすみません)。
 ほとんどがヒューマンパワーですよ。人間が命を犠牲にして作っていたんです。この関電トンネル(工事用道路)のトンネル工事に20年先立って、戦時中に黒三トンネル工事というのを行っていたんですが、こちらもひどい(回想シーンも多々出てきます)。戦時中とはいえ、強制的に、玉砕覚悟で挑んでいたんです。
 北アルプスを貫くってこういうことなんだなぁ、と妙に納得してしまいました。





 破砕帯(フォッサマグナ)を貫こうとして自然に阻まれ、山が崩れ、大量の地下水源に襲われるという迫力のあるシーン。あの時代によくこういうシーンが撮れたものだと感心するものの・・・ 黒三とは時代が違う! もう誰も犠牲にしない! と誓いながら、人がゴロゴロ死んでいく、命が軽く扱われる様が映し出され、結構ショッキングというか。
 「土木工事」も「戦時中の強制労働」もほとんど変わらなく見えてしまったヒューマンパワー。
 人間が自然に挑むことの厳しさを教えられました。
 それでも、高度経済成長にどうしても欠かせなかった土木工事。




 ラストに、土木工事の責任者の娘がトンネル貫通と同日に原因不明の病で命を落とすというシーンが描かれるんですが、それがまたね・・・ アマゾンのレビューに、
 「こういう特殊な土木工事においてある意味非常にリアリティーがあると言えるかもしれない。」
 と書かれている方がいて、トンネル貫通と不治の病の死が重なるということには、どう考えても、論理的な説明がつかないのですが、それがリアリティだという表現に納得してしまう自分がいて。
 この娘を亡くすエピソードは、高度成長経済時代の日本人の生き方(娘の病気より仕事を優先させるという・・)だけを象徴的に描いたわけでは決してないと思うんですよね。
 つまり、この「黒部の太陽」映画の時代には、こういう非論理的なもの、迷信的なものを、よしとする文化がまだ残っていたと思うんですよ。自然信仰との戦いというかね。その罰を受け入れるというような・・・それが非論理的な娘の死というエピソードで描かれている。今の現代日本映画だったら、こんなエピソードは入れませんよね、絶対。

 北アルプスに、トンネルを掘らせていただくということが、どういう意味のことなのか、当時の方々はよくわかっていたように思えてなりません。その畏怖や尊さが。
 それが非論理的なエピソードによく表れていると思うのです。

 約60年前の映画ですが、まだ日本人は純粋だったなぁ・・・なんて。


 で、今のリニアの南アルプス貫通の話なんですけど。
 JR(東海?)にそこまでの覚悟があるのかなぁ、と聞かれると、ちょっと疑問というか・・・そもそも、黒四ダムの時代は関電は人の命も社運も賭けて作らざるをえなかったけれど(作らなかったら潰れていた)、JRにそこまでの作る必要があるのか理解できませんし。日本のためにも、あの関電トンネルと黒四ダムは必要欠くべからざるものでしたが、リニアがそこまでの作る必要があるものか理解できませんし。日本の大動脈だとか?? いやいや、リニアがどうして。嘘でしょ。


 いや、ぶっちゃけ、リニアいらないでしょ。誰が乗ります??? 怖いよね。


 南アルプスを貫いて作る必要があるんですか? って話ですよね。


 現代の罪深い人間の欲望・・・をこの黒部の太陽を見て、つくづくと感じさせて頂きました。黒四ダムの時代とのこの格差はどうなんだろう。
 はぁ・・・


 というわけで、今日はこの辺で。
 追記ですが、静岡県知事には是非とも頑張っていただきたいです。



 今日も素敵な時間が訪れますよう。
 願いを込めて。