百人町のお稲荷さま




 

 新宿をふらふら歩いていたら、とあるビルの前で「出張・例大祭」が行われていた。

 新大久保の皆中稲荷神社だという。こんな遠くまで大変ですねぇ、と感想を漏らしたら、法被を着たお兄さん、「いえいえ、ここも百人町ですから」。

 どうやら私は新宿を北上して、西新宿都百人町のちょうど境までやって来たらしい。

 ちなみに、例大祭とは、その神社の一番大切な祭祀。大抵は御祭神の縁の日にちか、春、秋祭りの時期に行われる。また、新宿「百人町」の名前の由来は、江戸時代に、幕府直轄の「鉄砲組百人隊」が住んでいた町だから。






 百人町は江戸幕府お抱えの鉄砲組百人隊の街だった。関ヶ原の戦いに勝利したのがいくら鉄砲のおかげだと言っても、平和な平和な徳川幕府、鉄砲百人隊が勇姿を振るうのは、神社に奉納する出陣式の時だけだったと伝えられている。

 で、鉄砲百人隊に信仰されたのが、「皆中稲荷神社」。

 文字のとおり、皆(みな)中る(あたる)。稲荷の霊夢によって、へたくそな鉄砲組のある隊士が百発百中の腕前になったことから広まった。




 ふぅん、そうだったのか。新宿って、新興の都市みたいに思い込んでいたのだが、意外と下町だったのね。このあと少々法被のおじさまとお喋りをして、神輿の前で記念写真を撮っていただいた。

 何気なく散歩をして、ちょっとした出会いがあったり、その土地の由来を知ったりする。それもまた楽しい。イングレス様々だ。(この日はイングレス散歩だったので)

 徳川幕府よりも平和な現代、皆中稲荷神社では、今では2年に一度(平成は奇数年)に鉄砲隊の出陣の儀を行っているという。またしても目の当たりにした気分、本当に東京は稲荷の信仰が隅々まで行き渡っている。私のもとにも、夢の中で稲荷が出てきてくれないか。百発百中の霊力をぜひ授かりたいものである。