「がんばってるぞ、石巻」をチャリンコ散歩 ~3回目の3.11まであと少し、の巻~
【3.11前の石巻散歩】
そろそろ3年目の震災の日ということで、休日の土曜日、石巻の浜辺まで散歩に出かけた。哀悼の思いを捧げに行こう。
【石巻まちなか復興マルシェで自転車を借りて牡蠣を食べる】
とりあえず足を確保しよう。ということで、復興マルシェに向かった。無料のレンタサイクルがあるのを先日マンガッタンの警備員さんに教わった。不思議な日だ。青空なのに、粉雪が降っている。風もめちゃくちゃ強い。自転車に乗ったら、吹き飛ばされそうになって、ハンドルをコントロールできぬまま道路の中心に向かってしまう。車にひかれそうになって、慌てて歩道の方へ戻る、ということを繰り返した。運転手に振り向きざまに睨まれる。いや、そんなこととは知らず、マルシェで自転車を借りた私はいい気分である。
途中で見かけた外国の観光客の方。粉雪舞う風情が良かったのか、写真を撮っていた。
復興マルシェに到着。写真上、フェイスブックページで見かけた構図を真似してみる。
・石巻まちなか復興マルシェ
先日訪れた時より時間が早いせいか人が多い。賑わっているふうが嬉しかった。何やら食べながら談笑している人々とすれ違う。負けずに食べようと、きょろきょろ見回すと、2月に開催した「渡波オイスターズ!牡蠣祭り」の続きか、露店で牡蠣を売っていた。3個で500円なり。さっそく食してみる。
並んでいて20分待ちとのこと、これは前の方がいただいた牡蠣 撮させてもらう |
牡蠣が焼けるのを待つあいだに、牛タン入りつくねを購入。1本でちょっとせこいがこちらは、マンガッタンの警備員さんへ差し入れ。
「全日食きむら」さんで買ったちぎり草もち。
キカイダーの横の牡蠣の露店。一服してしばし待つと、
「お待たせいたしました!」と石巻ナイスガイが牡蠣を持ってきてくれる。
殻付き牡蠣の炭火焼。ポン酢をかけていただきます!!
ぷりっぷりしていて、肉厚の牡蠣、めちゃくちゃ美味しい。磯の香り、というより磯の味がたっぷりしました。
ちなみに、炭火の焼き牡蠣は、蒸し牡蠣とは一味違う香ばしさが自慢だ。焼き網から垂れた汁が墨にあたって燻された状態になり、焼牡蠣にさらなる旨みを加えるらしい。(石巻かき小屋のHPより)
下の写真は中瀬にある石巻かき小屋。震災後に最初にできたかき小屋渡波さん。時間無制限の食べ放題あり。その日に水揚げした新鮮な牡蠣、しかも2年ものの大きな牡蠣を存分に炭火で焼いてべられるので、復興マルシェに牡蠣の露店が出ていないときはすぐ傍の中瀬でどうぞ!
・石巻かき小屋渡波
さて、マルシェで借りた自転車でマンガッタンとかき小屋を通り過ぎて、中瀬の先端に行ってみる。雪は止んで、青空だけになったようだ。
いい眺めだった。
中瀬を引き返して、日和山の下の沿岸へ向かっていく。
【モザイクアートでゴッホ復活】
旧北上川沿いで何やらイベントが行われているようだ。自転車を置いて、受付の女性の方に訊ねると、仮設住宅やこの近くに住んでいる子供たちが集まって(ボランティアの方々と)遊んでいるのだそうだ。幼稚園から小学校くらいの子供たちがじゃんけん大会やクイズを行って楽しそうな声を上げていた。NPO法人にじいろクレヨンさんのプロジェクトだ。この場所はにじいろ広場と呼ばれていて、子供たちが作ったモザイクアートの作品が北上川を背に飾られていた。
熱心に写真を撮っている方々がやけにいるなぁ、と思ったらカメラにミヤギテレビと書いてある。
こちらが子供たちが作ったモザイクアート。ミヤギテレビの方に聞いたところ、元はゴッホの絵、「モンマルトルの風車」らしい。
ちなみに下が本物のゴッホの絵。(写真はこちらよりお借りしました)
1886年、ゴッホがパリに来てまもなくの頃に描いた、ゴッホらしからぬ暗めの絵だ。
何でこの絵を選んだのだろう? と疑問は残るものの、子供たちがモザイクを使って、ゴッホらしからぬ絵をゴッホらしい明るい色の点描の画に描き直してくれていて、それが救われるというか嬉しいというか。大地のオレンジも、明るい空の青もとても良いではないか。
にじいろクレヨンのNPOのスタッフ、ボランティアさんのお写真を撮らせていただいた。子供たちを笑顔にするお仕事、とても素敵だと思う。
自分自身は、ボランティアをしたいしたいと思いながらなかなかできずにいるので、正直、できている方々には頭が下がる思い。尊敬してしまう。
石巻の沿岸の帰り道に同じ広場の前を通ったら、まだイベントが続いていて、ボランティアの方々と子供たちの楽しそうな笑い声が響いていた。
・NPO法人にじいろクレヨン
※にじいろクレヨンのプロジェクトの詳細はこちらへどうぞ。
【仏像と稲荷神社跡】
どんどん進んで、門脇町、南浜町地区へ。元は約1700世帯が住んでいた住宅地だ。この辺りは、石巻に来てすぐに、門脇小学校を訪ねた際に通った。
門脇町、南浜町地区は、大津波に飲まれ、その後起こった火災で今度は火に飲まれた。津波で流された車のガソリンから火が出て、一帯に火の手が回ったのだそうだ。火災は、13日の午後6時まで3日間続いた。
現在は綺麗に片付けられていて、がれきは見えないが、まるで戦後の焼け野原のような荒野が続き、住宅の区画だけがところどころ残され無残に晒されている。ふと仏像を見つけた。
「南無妙法蓮華経 東日本大震災」とあったので、丁重に拝ませていただく。仏像の隣には立ち入り禁止の大きな山が。ただの砂かもしれない、辺りには工事現場の盛土のような砂の山が幾つかあった。だが、これだけシートをかぶっていたので、何とはなしに不穏な心持ちになった。もしかしたら100年分のゴミと言われたがれきがまだ残っていたのだろうか、とか。いや、がれきの処理は終わったはずだから、それとも埋め立て予定の焼却灰だろうか、とか。
このシートの中から、いまだ行方不明の者たちの死体でもずるりと出てきそうな思いがする。そんなわけはないのだが。この地区を歩くのはやはりやるせない。
どこまでも続く更地にひときわ目立つ松。近寄ってみると、石祠がある。どうやら神社跡のようだ。
帰宅してから調べたところ、これは善海田稲荷神社跡。神社の御祭神は倉稲魂命、稲の精霊。スサノオとカムオオイチヒメの間に生まれた農耕の神様だ。
海の神にやられたか。海の傍なんだから、海の神を祀っていれば良かったものを・・ などと思ったが、名前は「善海田」だから何とも言えない。その形状を少しでもとどめられたのは、もしかしたら幸運だったのかもしれないし。こちらも拝ませていただいた。
【そして、海へ】
善海田稲荷神社跡をまっすぐ進むと、海が見えた。
引きで見るとこんな感じ。防波堤に石巻港壁画大作戦(平成17年)と書かれた絵がずっと続いている。
防波堤沿いを歩いてみた。すぐ隣は県道240号石巻女川線、振り向くと旧北上川の河口に架かる日和大橋が見えている。
日和大橋を背にして歩いていくと、防波堤が地面と交わって、背の低い私でも軽くまたげる高さとなった。もともとこうだったのか、まぁ、テトラポッド(消波ブロック)はあるわけだが、それでもこれで大津波が来て役に立ったのか、役に立つ予定だったのか、甚だ心もとない。
また海の少し先には湾上の防波堤があり、新しい色のテトラポッドも積み重なっていた。確実に防波堤は強化されている。と思う。せっかくの海だ、浜辺に降りてみよう、と思う。思いながら、なかなか気が乗らず、防波堤に腰をかけてしばらく海を眺めていた。
ソロソロと防波堤から飛び降りて、浜辺に立つと、小さな波を見て、ぎょっと驚く始末。
津波を思わず連想してしまった!
(こんな数十センチの小さな波なのに怖かった・・)
それでも、日が傾いていく方向と反対側の海は、青くて綺麗だ。順光になるので、空が綺麗に映っている。こちらは、牡鹿半島や金華山がある方向だ。右手の半島のようになっているのが渡波。あっちは行きたいところがいっぱいある。女川に、雄勝、牡鹿半島に金華山。まだまだ宮城に来てから石巻しか歩いていなかった。
青森に行く前に、宮城を一周したいものだ、などと考えている。
【がんばった石巻】
沿岸を離れると、今度はふらりと「がんばれ、石巻」の看板の前まで来た。
下の写真は、看板横に立っている東日本大震災の津波の水深を表す標示。「津波浸水深6.9m」と書いてある。
た、高い。
見上げて、あらためて驚かされた。あの高さまで海の底だったのだ。
下は3年前の写真。
現在のがんばろう石巻。看板はよくテレビで見ていたが、前の道路に、「復興するぞ」と書いてあったのは知らなかった。
こちらはガイダンス装置。音声と映像で、震災の概要と、被災者の体験談を見聞きすることができる。
こちらは献花台。
地元の木を燃やし種火にした明かりが灯っている。
なんだかいろいろグレードアップしたようだ。3年前の「がんばろう石巻」と見比べる。いや、全く違う。ここ自体が同じ場所とは思えない。
左下が震災1ヶ月後の「がんばろう石巻」 |
辺りは、未だ荒野が続いている。宅地跡だけが残り痛々しい思いがする。それでも、随分変わったものだ。僅か3年であの100年分と言われたがれきや車の山を片付けた。春からは、門脇、南浜の地を慰霊公園にする計画も勧められていると聞いた。がんばろう石巻の看板はぜひ残して欲しいと願うが、それにしても、よくここまで頑張ったものだなぁ。
ちなみに看板の後ろはこんなふうになっている。ソーラーですね。太陽光パネルで発電しているらしく、ケーブルのような太い線がガイダンス装置に続いていた。
こちらは風力。右手のプロペラみたいな羽が意外と大きな音を立てて回っている。ホントに、いや、たまたま風が強い日だったということもあるが、本当に、意外過ぎるほど大きな音で回っている。何だろう、あれは、とよくよく見ると、こちらも同じ電線にたどり着くのだ。
【震災から3年目の3.11】
宮城県は3月11日を「みやぎ鎮魂の日」に定めた。震災で亡くなられた方々を悼むため、震災の記憶を風化させずに後世に語り継いでいくためだ。
来週火曜日の3月11日は初の「みやぎ鎮魂の日」を迎える。沿岸市街の各地で「みやぎ鎮魂の日」の追悼式が行われることになった。
私が住んでいる石巻の式典会場は河北総合センター。追悼献花台と記帳所を設置して、2時46分に全員で黙祷を捧げる。行きたいなぁ、と思ったが、仕事がある。全員での黙祷は難しそうだ。(職場で一人黙祷はするつもりだが)
それで調べたところ、例の震災1ヶ月後にできた「がんばろう石巻」の看板前で「3.11追悼のつどい」というものが行われるらしい。こちらは夜の9時までなので、仕事が終わったあとに是非行ってみようと思う。
・がんばろう石巻会 (詳しくはこちらへ)
【いしのまきの朝】
さて、そろそろ日記も終わりである。自転車を返す前に、ピースボートセンターいしのまきに立ち寄って、「いしのまきの朝」という写真展を見た。
これこれ。
石巻でボランティアをする以前からカメラマンだったという鈴木さん。彼は一眼レフを持たずに石巻にやってきたそうだ。だが、地元の人との会話をきっかけに、石巻の今の景色を撮りたくなった。(がれきの山ではなくて)今の石巻に残されたものを残しておこうと思うようになった。鈴木さんは一眼レフを取りに自分の地元へ戻り、そしてまた石巻にやって来て、それからというもの、石巻の朝を撮り続けたそうだ。
ピースセンターに入ってすぐ写真を見て驚いたのは、「いしのまきの朝」だけに日の出前の、夜がまだ残る空の色にすべてが統一されているということ。どの写真もブルーだ。日がカンカン照った朝も、太陽がギラギラする眩い朝もない。ただ、静寂の蒼色。美しいブルーだけ。
このブルーに染まった石巻がとても美しく感じられた。
こちらは桜の日和山からの朝の景色。
こちらはかもめ羽ばたく石巻港。
ところで、ビースボートセンターいしのまきは、株式会社ピースボート災害ボランティアセンターが運営するコミュニティスペースだ。鈴木さんの写真展は当分見れるみたいなので、詳細はこちらで確認して欲しい。また、近くに住んでいる人や、旅行に来る予定の方には、是非見ていただきたいと思う。
・ビースボートセンターいしのまき
下はピースボートいしのまきの入口にあるイベント情報。ボランティアも募集中だ。
受付の方(もボランティアかな?)も感じが良かったし、その場に集ってきていたオジサマたちも、がはは、と笑顔で楽しそうだった。
報道だけでは見えてこない復興の現状。ピースボートさんは、そういった石巻の今を学ぶことを目的とした数々のプログラムを作っている。地元の方と触れ合いながら、直に感じることができる本当の石巻の今の姿を知るために。石巻や女川を視察するオーダーメイドのプログラムに、石巻の基幹産業である漁業の復興と凝視の生活支援を後押しするプロジェク等。興味のある方は是非、ピースボートさんへ連絡してみるといいだろう。
【1日ありがとう!と自転車にお別れ】
さて、最後に白松がモナカを買って。
・白松がモナカ本舗
(買う前から、見てただけなのに、梅昆布茶出してくれて、ちょっと感動。めちゃ美味しかった!)
石巻市役所1階のいしのまきカフェを見て、
(石巻の高校生が作っているカフェだ!)
そうそう、これを見るのも忘れずに・・
(言わずもがな 009ね!)
あとは自転車を返すだけ。中瀬傍の復興マルシェまで行かなくても、石巻駅に近いふれあい商店街に返してもいいので、こちらのほうが便利かな。
ちなみに、こちらがいしのまき立町復興ふれあい商店街さんだ。こじゃれた洋服や、ちょっとしたお土産に、海の物産にパンに果物、いろんなものが売っているぞ。一度夜に来てみたが、結構賑わっているようだった。写真隣の列の仮設住宅の並びに、ピザを出したりするバル風の良い雰囲気のバーが2軒並んでいて、若い人たちが後から後から入っていくのだ。楽しそうだった。これは自分も入ってみたいと思ったが、ちょっと一人では入りづらくて断念。今度は是非チャレンジしてみようと思う。
で、レンタサイクルの鍵を返すのはこちらの「パナックていけい」(電気屋さん)へ。一番奥だぞ!
お~い、1日ありがとう! また今度頼むよ。
と、石巻散歩を付き合ってもらった自転車に別れの言葉をかけて。
なかなかかわいい外見でしょ? |
では皆様もお元気で!
【おまけ】
ふれあい商店街の向かいにいる004だが、ちょっと太りすぎじゃないか?
この二重あごっぽいアゴのラインと脇腹のたるみ、お腹の出っ張りなんて、気になって仕方ない。いや、メタボ過ぎだよ。004はもっとスリムないい男だったんだけどな、と昔を愛おしみ、ブツブツ文句を垂れながら、さて、今日もさようなら! また来週!
【おまけ2】
※こちらは余裕のある方(?)だけご覧ください。