「八甲田山」感想。組織の愚かさと、自然に敬意を払う個人の知恵。
こんにちは!
秋晴れが気持ちいい季節になりましたが、みなさまお元気でお過ごしでしょうか。
週に一度のアマプラ鑑賞会。
今回は、ずっと昔から観たかったのになぜか機会がなくて観れずにいた名作、
「八甲田山」を課金して鑑賞しました。
私自身は冬山は怖くて絶対にやらないので、
厳冬期の八甲田山で寒地訓練の行軍をするなんて、
信じられないほどの無謀な挑戦としか思えません。
観る前はまるで「インパール作戦」のような、
旧日本軍の愚かさや無茶ぶりを具現化する
史上最悪の死の行軍なのだろうと思い込んでいました。
ところが、今回の視聴で「それだけではない」ということがわかったのです。
なんと八甲田雪中行軍には、見事な成功譚もあったのですね・・。
※この先はネタバレを含みます。視聴予定の方はご注意ください。
「八甲田山」(1977)
監督:森谷司郎 原作:新田次郎 撮影:木村大作
出演:高倉健、北大路欣也、緒方拳、三國連太郎、前田吟、秋吉久美子
【あらすじ】
新田次郎の原作『八甲田山死の彷徨』をもとに、大部隊で自然を克服しようとする部隊と小数精鋭部隊で自然にさからわず、折り合いをつけようとする部隊の様子を冬の八甲田山を舞台に描く。
「冬の八甲田山を歩いてみたいと思わないか」と友田旅団長から声をかけられた二人の大尉、青森第五連隊の神田と弘前第三十一連隊の徳島は全身を硬直させた。日露戦争開戦を目前にした明治三十四年末。第四旅団指令部での会議で、露軍と戦うためには、雪、寒さについて寒地訓練が必要であると決り、冬の八甲田山がその場所に選ばれた。二人の大尉は責任の重さに慄然とした。雪中行軍は、双方が青森と弘前から出発、八甲田山ですれ違うという大筋で決った。年が明けて一月二十日。徳島隊は、わずか二十七名の編成部隊で弘前を出発。行軍計画は、徳島の意見が全面的に採用され隊員はみな雪になれている者が選ばれた。出発の日、徳島は神田に手紙を書いた。それは、我が隊が危険な状態な場合はぜひ援助を……というものであった。一方、神田大尉も小数精鋭部隊の編成をもうし出たが、大隊長山田少佐に拒否され二百十名という大部隊で青森を出発。神田の用意した案内人を山田がことわり、いつのまにか随行のはずの山田に隊の実権は移っていた。(映画.comより)
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観る前は単なる惨劇の記録だと思っていた八甲田遭難事件。
しかし実際には、青森第五連隊(神田隊)の神田と弘前第三十一連隊(徳島隊)という、
二つの連隊の異なる物語が存在していました。
映画でも、生死を分けたこの二つの部隊が実に対比的に描かれています。
この構成が実に素晴らしかった。
遭難していく第五連隊の神田大尉(北大路欣也)の視点で過酷な状況を見ていると、
弘前第五連隊の徳島大尉(高倉健)の存在が、
まるで一縷の望みを託した「希望の光」ように輝いて見えてくるのです。
相反する二つの部隊を通して、一つの壮大な物語が完成していました。
まず、死の行軍となった青森第五連隊。
実質的な指揮権が上官である山田少佐へと移ってしまい、
神田大尉は隊を正しく目的地へ導くことすらままならなくなります。
理不尽な組織の在り方や無謀さを象徴する展開の中、
吹雪の八甲田で右往左往し、一気に絶体絶命の状況へ追い込まれていく・・
そこには雪山の知識がなく、自然の恐怖を軽視した組織の慢心がありました。
一方の徳島隊は現地の地形や自然を知り尽くした案内人の農民たちに深い敬意を払い、
神田隊の4倍にも及ぶ長丁場の行程を一日ずつ着実に進んでいきます。
一番の難所の八甲田縦断では5人もの案内人をつけ、
無事に八甲田山を踏破するのです。
この徹底したリスク管理と、自然に対する敬意の払い方は実に見事でした。
余計な階級意識を持つ指導者が現場にいなかったことも幸いしたのでしょう。
初めから死を覚悟し、志願した精鋭だけで編成した判断の正しさを感じます。
また、二つの部隊の対比だけでなく、
二人の指揮官(大尉)同士の固い友情物語としても胸に迫るものがありました。
神田隊とすれ違うためだけに、わざわざ4倍の遠回り行程を組んだ徳島隊。
「八甲田のどこか会おう」という約束を心の支えにして、
過酷な吹雪の中でも決して諦めずに行軍を続けます。
そして、息絶える間際まで(死んでもなお)男同士の約束を
果たそうとする神田大尉の姿。
涙なしには観られませんでした。
日本映画を見てこんなに泣いたのは久しぶりです。
高倉健さんの圧倒的な演技にも何度も泣かされました。
そして、木村大作さんによる映像が本当に美しく、あまりにも迫力に満ちています。
特に、極寒の大吹雪の中で徳島大尉(高倉健)が見る、
青森の春・夏・秋の幻想シーン。
日本の原風景の美しさ、青森の郷土の優しさが、
厳しく冷酷な八甲田の景色と鮮やかに切り替わり、
胸が強く締め付けられました。
物語、映像、そして俳優さんの演技。
そのすべてが素晴らしい、まさに日本映画史に残る傑作だと感じます。
撮影自体も想像を絶する過酷さだったはずですが、
この作品を形にして後世に残してくれたことに、
心から感謝したくなりました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今日も心穏やかな素晴らしい1日となりますように。
願いを込めて。



