逃げ続けたポール・マッカートニーの愛の形。「マン・オン・ザ・ラン」

 

 週に一度のアマプラ鑑賞会。

 今日はポール・マッカートニーの「マン・オン・ザ・ラン」を観ました。

 「逃げる男(逃亡中の男)」というタイトルが皮肉に聞こえるほど、

 ビートルズの呪縛から逃れ一歩でも前へ前へともがく、

 ポールの不屈の精神に胸を打たれました。

 こんな人だったんだなぁ、ポール・マッカートニー。

 「保守的でダサい」「思想よりもヒットメーカー」

 そんなイメージで、私はポールよりもジョンに夢中でしたが、

 この映画を観て、初めて、ポールの偉大さに気がついた思いがします。

 

 ※この後はネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。




 「ポール・マッカートニー マン・オン・ザ・ラン」


 監督:モーガン・ネビル

 出演:ポール・マッカートニー、リンダ・マッカートニー、ジョン・レノン

 

 【あらすじ】

 ザ・ビートルズの解散後、妻リンダとともにロックバンド「ウイングス」を結成したポール・マッカートニーが、数々の困難や葛藤に直面しながらも新たな音楽人生を開拓した激動の10年間を振り返る。初公開となるホームビデオや音源、貴重なアーカイブ映像やライブ映像を数多く盛り込みながら、ポール本人や妻リンダ、娘メアリーとステラへのインタビュー、さらにウイングスの元メンバーやショーン・オノ・レノン、ミック・ジャガー、クリッシー・ハインドらの証言を通して、ポールが迎えた大きな転換期と創造的再出発の軌跡をパーソナルかつ親密な視点から丁寧に描き出す。(映画.comより)


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 ・意外にも弱者の論理だった解散劇。

 なぜポールが嫌いなのか。

 それは、ビートルズを解散させた張本人だから。

 しかも、直前までみんなを宥めておいて騙し討ちのようにソロアルバム「マッカートニー」を出して「仲間を裏切った人」という認識だったからです。

 でも、この映画を観て、私は自分が間違っていたことに気がつきました。

 例えば、今のアメリカイスラエルとイランの紛争は、イランが先制攻撃したと言われている(今後言われるだろうと予想されている)そうです。

 そして、日本が「リメンバー・パールハーバー」といまだに憎まれていること、ロシアが先制攻撃を仕掛けてウクライナとの戦争のきっかけを作ったと言われていること。

 それらは、大国からの挑発に対する防衛であったのに、歴史的には、先制攻撃の責任だけが問われています。

 ポールのことも、これらと同じような「経緯を無視された弱者の論理」で責められていたのではないかとふと思ったのです。

 ビートルズの中で、愛情深いポールの立場は実は意外と弱かったのではないでしょうか。

 ジョン・レノンが実質的なリーダーだったのだと、(ポールの嫌いな)マネージャーをジョンが雇った一件でそう思いました。


 ・ウイングスで不屈の精神を見せるも、また歴史は繰り返す。

 契約や権利の問題でビートルズ解散は心に傷をもたらしました。

 けれど、その後のポールがすごい。

 ソロアルバムが失敗に終わっても、ウイングスのアルバムが酷評されても、

 メンバーに逃げられても、不屈の精神で音楽と向き合い続けます。

 本当の根っからのミュージシャンなのだと感心させられました。

 映画は(未公開を含む)映像も素晴らしかったですが、BGMとして挿入される

 ポールの音楽がまた素晴らしかった。聞いたことのある名曲ばかりでした。

 日本来日の後に大麻を辞めたエピソードにも感動しました。

 一週間勾留されて、生まれ変わるなら同じことをしたいかと問い、心を入れ替えた。

 日本という国の厳しさが、彼に良い影響をもたらしたということが少し嬉しく感じました。

 しかし、ビートルズ解散劇もポールのダサさも全て私の認識が間違っていたと心を改めた瞬間に、元ウイングスのメンバーが言うのです。

 「歴史は繰り返す」

 ポールは、ウイングスの活動を放棄して、「マッカートニー2」というソロアルバムを作るのです。

 またしても裏切られた気持ちになりました。

 映画によると、ポールは良いメンバーやリーダーであろうといつも努力していた人でした。

 仲間にとても気を遣っていた。

 その優しさや思いやり、彼の愛が、限界まで来た時に、ソロアルバムの作成という内面への逃げへと繋がってしまったのかもしれません。

 気持ちはわかるものの、やるせない気持ちになるのは否めませんでした。

 しかし、人間は何度も同じ間違いを繰り返すけれど、それでも彼は音楽を諦めなかった。

 その「不屈さ」こそが、不器用な彼の愛の形なのかもしれません。


 そして、ジョンの死ーー。

 神はジョンを選んだ。罰を与えて、ポールは生き残る道を与えた。

 そう思うと本当の勝者はポールなのかもしれません。

 けれども、映画を観て、ロボットのような無表情なポールの顔を見て、

 罰を与えられたのはポールの方ではないか、というような気持ちも感じてしまいました。

 誰が与えた罰かはわかりませんが残酷なことです。

 彼は、ジョンの分まで生き続けるという孤独な使命を神から授かってしまったのかもしれません。


 しかし、このような映画を作ってくれて、歴史認識に間違いのあるファンに

 真実を教えてくれようとする情熱のある方がいてくれて、本当にありがたいと感じました。

 重ね重ね、挿入歌が素晴らしかったです。

 ビートルズと、ポールマッカートニーの偉大さを噛み締めて、筆を置きたいと思います。



 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 今日も心穏やかな一日となりますように。

 願いを込めて。






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