あまりにも哀れで、あまりにも美しいーギャツビーという名の悲劇。「グレート・ギャツビー」再読。
西日本各地で梅雨明け宣言です。異例の早さに、異例の短さの梅雨だと言います。
異常気象が怖いほどですね。7月には大災害が訪れるという予言(東日本大震災やコロナ禍を当てた元漫画家の予知夢)もあります。
恐ろしい夏の幕開けですが、みなさん、一緒に頑張りましょうね。
防災用品は一度見直したほうがいいかもしれません。
さて、そんな恐ろしい夏に、暑い夏を描いた小説を読みました。
夏に決定的な悲劇が起きるんですよね。やっぱり夏は何かが起きる。怖かったなぁ・・・
さすが、アメリカ文学最高峰、グレート・ギャツビーです。
グレート・ギャツビー(フィツジェラルド・野崎孝訳)
【あらすじ】
ただ恋を成就させるため、巨万の富を築いた男。
虚栄に満ちた人生の儚さを描く、アメリカ文学の代表的傑作。
豪奢な邸宅に住み、絢爛たる栄華に生きる謎の男ギャツビー。彼の胸にはかつて一途に愛情を捧げ、失った恋人デイズィへの異常な執念が育まれていた……。
第一次世界大戦後のニューヨーク郊外を舞台に、狂おしいまでにひたむきな情熱に駆られた男の悲劇的な生涯を描き、何度も映画化された20世紀文学最大の問題作。滅びゆくものの美しさと、青春の憂愁を華やかに謳いあげる世界文学の最高峰。
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・感想は・・・
儚い・・・。の一言に尽きます。
虚構と幻想の中でもがき続けた男の悲劇とでもいうのか・・・
随分昔に読んだのですが、淡白なお話という印象しかなく、ほとんど記憶に残っていませんでした。今回読み返してみたら、ものすごい劇的な事件の連続で、シェイクスピアにも負けない悲劇であり、結末もドラマチックで、驚かされました。こんな話だったかなぁ・・
それにしてもこういう社交界の虚構の世界のような物語を見せつけられると、勝ち組(いわゆるまともと言われる人たち)の愚かさや残酷さを思い知るような気がします。
作者曰く「不注意な人々」だそうですが・・ 全く、酷かった。
作者が誰からも相手にされなかったギャツビーに、「グレート(華麗なる)」という冠をつけてくれたことに、唯一の救いを感じます。(それがなかったら可哀想すぎるでしょう)
・印象的なところは・・・
とにかく人と人との会話がすごい。退廃的で乱痴気騒ぎのパーティのようなシーンの連続で、昔のアメリカの社交界や人付き合いがこうだったのかは知りませんが、何とも非現実的で、豪華で騒々しく、まるで不思議なサーカスを見せつけられているような気分になります。
さながらフィツジェラルドは猛獣使いでしょうか・・
(これは訳者の野崎さんによるところもあるのかもしれませんが)
その不思議な社交界物語の中心として、胡散臭い成り上がりの、誠実で、情熱的な、まるでピエロのようなギャツビーがいる。
その「ギャツビー」誕生から死までを、ジェットコースター的に語られます。
何だか哀れになる物語でしたね・・・ 作者の為せる技なのでしょうが、始終同情的な気持ちになります。そして、騒々しいパーティ的日常の対比として、最後に、誰も参列者が集まらない寂しい葬式(死)が描かれる。
上手いですよね、この演出が。作者にズキューンとやられましたね。
虚構と幻想に取り憑かれた、ギャツビーの死が哀れすぎて、泣けます。
・最後に、まとめです。
物語の最後に打ち寄せてくるのは、まるで夢から覚めたような、ひどく現実的な静けさです。
誰にも届かなかった情熱。誰にも理解されなかった優しさ。
あまりにも儚い・・。ギャツビーの人生は、虚構と幻想の中にしか生きられなかった。
だけどそれでもなお、彼を「グレート」と読んだ作者の眼差しが、全てを救ってくれます。
ギャツビーは時代の中で孤独に沈んでいったけれど、私たちは知っています。彼はただ、純粋に、愛を信じていたのだと・・
そんなギャツビーの物語が、今もこうして語られ続けていることこそ、彼の人生が「夢ではなかった」という証なのかもしれません。
今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
暑い夏がやってきますが、体調を崩さないようにお気をつけて。
心あたたまるお時間をお過ごしになられますように。
心を込めて。