松島や ああ松島や 松島や ~道なき道の松島訪問編~



【松島はいいところですよ】

 北海道白水沢の藪道を歩いていた時のことだ、ある写真家の先輩の想念が離れなくて困ったことがある。その道は、笹竹が生い茂る小さな沢(※)で、正確には道とは言えない道だった。私は濡れた笹竹をかき分けて、沢登りをしていた。身をかがめて、笹の通せんぼを躱しながら、必死で前へ進んでいた。笹竹は妨げられるばかりでもなかった。滑りやすい濡れた斜面では、掴んでよじ登ることができた。道を下るときは、スキーのようにその上を滑り落ちて、楽に下ることもできた。敵だか味方だかわからぬ、その竹藪に囲まれた、どうしても今の私の実力では行くことができぬ道を行くときに浮かんできたのが、S先輩である。

(※) 竹藪との格闘の詳細はこちらの記事

 私はS氏に宮城への転居の連絡をした。すると、メールの返事が来て、氏が言うのである。東松原市のご出身で、よく知っているらしい。

 「松島はいいですよ。奥松島も素敵ですよ。ぜひ行ってみてくださいね~」

 松島には写真を撮りに行くつもりでいたが、これには何か因縁を感じずにはいられなかった。写真素材には困らないだろう、と氏は言う。私は唸った。これは北海道の再来ではないか。写真素材には困らないが、私にはどうしても撮れぬという暗示ではないか。いや、そういう何か事情が訪れるのかもしれなかった。一瞬、暗い思いがよぎったものの、石巻行きの嬉しさですぐに忘れてしまった。何、考えすぎだろう。

 2月15日、石巻での2度目の休日の日、私は念願の松島観光にいそいそと出かけたのだった。



2月11日の祭日の石巻駅の光景

路線図はこんな感じ

仙石線と石巻線の時刻表 大抵1時間に1本

石巻駅のステンドグラス風の009の絵 天辺には002が

石巻市民憲章 
まもりたいものがある それは 生命のいとなみ 豊かな自然

駅前の観光案内板

こちらが仙石線 仙台方面に向かう電車

電車の中 一人掛けの向い合わせの椅子が目新しく感じる


【赤い橋がいいですよ】

 25日は雪予報だった。
 「明日、松島に行こうと思っていたんですが、雪ですか・・」
 「いやいや、雪の松島なんて滅多に見れないでしょう」

 前日に地元の同僚の方が言った一言で、私はふとS氏の想念を思い出した。道なき道の暗い思い出を前に、ガゼン、「やらねばならぬ」的な、「傑作願望」的な衝動が、むくむくと湧き上がってきた。雪の松島を撮れるのはものすごい貴重かも知れない。そんな無謀なことをするのは、私くらいしかいないかもしれない。暗い思い出のリベンジさながら出かけたものの、いや、あっさりと、因縁と暗示の前にノックアウトされるのであるが。

 その前に、私の石巻行きを実現してくれた派遣会社に伺った話がある。私は横浜支店で面接をしたので、まだ仙台の担当に直接ご挨拶をしていなかった。今日が出勤とのことなので、松島行きの途中に事務所に行ってみることにしたのである。
 この出会いがなかったら、今日松島に向かうこともあり得なかった。仙台まで電車(東北本線経由)で行こうと思ったが、ネットで調べると、高速バスで仙台まで行き、そこから東北本線で松島に下ったほうが便利だということに気がついた。

 ちなみに、石巻から松島に行くには、仙石線で小牛田駅まで出て、小牛田から東北本線で「松島駅」まで下る(※2)のである。

 (※2) 東日本大震災の後、石巻~仙台間の陸前小野駅(東松原市)から高城町駅(松島町)が不通。

 15日は雪の影響で小牛田駅から仙台駅区間の東北本線が大幅に遅れた。行きは高速バス、帰りはミヤコーバス(JR代行バス)と、バスと仙石線を乗り継いで、何とか当日の松島行きを終わらせたものの、帰宅した時の私は、北海道の道なき道に打ちのめされた時同様の情けない様相であった。
 それでも、仙台支店の担当者内田氏に、大幅遅れの東北本線で「松島駅」に行くのではなく、仙石線で「松島海岸駅」に行くことを教えてもらわなかったら、もっと酷い目に遭っていたに違いない。恐らく帰りの松島海岸駅から石巻方面行きのミヤコーバスにもたどり着かず、寒さに震えてくたばっていたかもしれない。それは冗談だが、とにかく、初めての雪の松島はなかなかの思い出となったのである。




2月15日の仙台 結構雪が降っている
前日金メダルを取って話題の羽生選手の故郷にやってきた

宮城の仕事を紹介してくれた派遣会社仙台支店の後藤氏

仙台支店支店長の内田氏
ランチをご馳走してくださるとのことだったが
ダイエット中なので泣く泣くご辞退

 
 で、いろいろ教えてくれた内田支店長だったが、その時、氏がご自身で撮った松島の赤い橋の写真を見せてくれたのである。松島海岸の東から福浦島へと渡る252mの福浦橋だ。ちなみに福浦島は、島全体が県立自然植物園になっていて、松林の中にツバキやカエデ、竹など250種類に及ぶ草木が自生している。

 「この橋を渡るときは、さすがに、感慨深く感じました」
 
 氏はその時のことを思い出すように、しみじみと語った。その言葉を聞いて、よし、ではぜひ福浦橋を渡ってみよう、と決めたのである。朱塗りの福浦橋は、出会い橋と呼ばれているそうだ。出会い橋というからには、ありがちな縁結び的なものなのだろうが(実際縁結びのご利益あり)、私の場合はこれがそうとも限らないから妙である。(縁結びの島根に行った時も、全く別のものと邂逅したのだ) いったい何と出会うのか。まだ見ぬ景色の自然か。神々か。境地か。新たな出会いが、そこにはあるのかもしれないのだった。



仙石線で松島海岸へ 途中東塩釜で乗り換え

松島海岸へ到着

松島海岸から徒歩5分の遊覧船乗り場へ

14時の船で松島湾を一周 一番奥から出航だそうだ

こちらが今日お世話になる第三仁王丸

カモメ(海猫)の絵が可愛い

フェリー乗り場から見た福浦島 湾には海猫がいっぱい浮かんでいた
松島 島巡りコース ここを周ります

フェリーの中 2階は貸切状態

これは何島だったかな・・双子島?

第三仁王丸の甲板からの眺め

すごい~ 島だらけ~


遠くに見えているのが塩釜港

こちらは鐘島
この日は船がよく揺れて途中ダウン


【松島や ああ松島や 松島や】

 松浦海岸駅を降りて、すぐに遊覧船乗り場へ向かった。14時発の松島一周の遊覧船をオンライン予約(※3)していたのである。

 今更言うまでもないが、松島は日本三景の一つ、宮城県松島湾内外にある大小260余りの諸島のことを言う。260の諸島を俯瞰できる4つの名所の四大観に、松島八景の景勝が知られている。また、遊覧船の船上から、かもめ(ウミネコ)にえさやりをするのが名物となっている。

 
 (※3) オンラインで乗船の予約をすると、10%割引になってお得である。復興応援企画もある。松島~松島コースと、松島~塩釜コースがえびせん付きで1260円。2階のグリーン券がプラス600円。
 

 松島海岸の売店でちゃっかりかっぱえびせんを購入していた私だが、運賃を支払うときに松島案内図と一緒に渡されたえびせんを見て、思わずニンマリした。近頃は条例により餌付け禁止になった遊覧船も多いらしい。だが、松島は買わずともかっぱえびせんが付いてくるのだ。鳥好きにはたまらない。(私は鳥好きである)小袋のかっぱえびせん(かもめと遊ぶチケットだ)を大事に抱えて、第三仁王丸に乗り込んだ。

 あいにくの天気もあり、船内は空いていた。特に2階は貸切状態だった。私の他には、宮崎から来たという男性3人組の観光客。それだけである。第三仁王丸がゆっくりと進み始めた。松の木をかぶった小さな島々が次々と現れ灯篭のように流れていく。これが松島か。妙に感慨深いのである。

 松島や ああ松島や 松島や

 そう詠んだという松尾芭蕉、あれは実は間違いだという。本当は、「松島や さて松島や 松島や」 詠んだのは江戸時代後期の狂言師田原坊。それでも、私の心情的には、「さて」より「ああ」のほうが近い。ついに来た。松島に来た。ああ、と思わず感動が漏れるのである。

 東日本大震災の後、私は松島の写真を探した。ネットの中を彷徨った。無事だろうか。美しい景観は壊されていないか。一度も行ったことがないくせに、不思議と松島のことが気になって仕方なかった。今思うと、あれは日本三景への愛着のようなものだったのだろうか。それとも松島のお蔭で津波の被害が少なかったと聞いて、深い畏れを感じたからか。それとも、輪廻的な曰くでもあるのだろうか。船内に響く島々の謂れを説明するアナウンス。いろんな島があるものだ。残念ながら、美しい景観は、雪と霧に煙りよく見えない。ぼんやり霞んでいるのである。



かもめと目が合う

日の丸飛行隊みたい 続々とやってくるかもめたち

餌をめがけて

ゲット

もっとくれよ~

ゲット!

モデルになってくれた方(宮崎から来たそうです かもめさんの餌やりが
上手でした!)とツーショットで

かもめの映像は下記をどうぞ^^


遊覧船の添乗員さん かもめの餌付けは近々(試験的に)禁止になる
のだと教えてくれました とても残念です


 念願の松島の景色を見て、少し船に酔い始めた頃、私はいそいそとかっぱえびせんを持って立ち上がった。かもめ(本当は留年のウミネコ)に餌をあげて、散々遊んだ。かっぱえびせんを見ると、かもめたちは必死で付いて来るのである。船の真横まで来ると、今度はふと羽ばたきをやめる。ふわりと羽を広げて、風に乗る。こちらを見ながらゆっくりと浮かぶのである。その様の可愛いらしいこと、可愛らしいこと。



【出会い橋と五大堂】

 遊覧船で雪の松島を見て、かもめと遊んで満足した私。次は、福浦橋と五大堂へ向かう。
 五大堂は松島の上に建った寺である。この五大堂のある松島が、また小さくて可愛らしいのだ。本州にすぐ近いくせにちゃんと松島である。軍艦のような小さな島で、切り立った岩のような特有の形をしていて、やっぱり「らしく」、松をいっぱい身に付けている。福浦橋を10分の1くらい短くしたようなプチ朱色の橋も架かっている。
 福浦橋が積雪のため通行止めだったので、私は五大堂のプチ赤い橋を渡りたくて仕方がない。この出会いで今日は勘弁してくれと。しみじみと、感慨深く感じて終わりたい。ところが、この赤い橋が傾斜のついた透かし橋で、霙に振られ、つるつると滑るのである。真下に松島湾が見えている。ぷかりぷかりと波が揺れている。いやはや怖い。滑ったら真っ逆さま(実際には太もも辺りで引っかかりそうだが)に落ちそうだ。高所恐怖症には厳しい。

 私はしばらくの間、プチ赤い橋とその向こうの五大堂を見て、写真を撮って、どうしようかと考えていた。ここまで来たのだから、いや、やっぱり渡りたい、と足を延ばすも、滑って退却。だめだ、今日は渡れない。天気が良くなったらまた来よう。かもめにもまた逢いたいし。
 諦めて帰ろうとした時、団体の観光客がぞろぞろとやって来た。今の今まで、雪の中、まるでこの世に存在するのは私一人であるかのように、人っ子一人いなかったのに、上手い具合に援軍のように現れた。私は目を見張って、彼らの様を眺めた。何とも騒がしい。中高年の男女と若い男子が少々、10人程の彼らは、私があれだけ無理だと思ったつるつる滑る赤い橋を難なく超えていくではないか。

 「あらやだ、滑るわ~」
 「ハイ、男の人先に行ってちょうだい~」
 「後から付いていけば大丈夫よ~」

 こちらに言っているようである。
 私は団体の彼らのしんがりについて、そろそろと赤い橋を渡った。



江戸時代、松島湾は伊達政宗によって軍港とみなされていた
なので、隠密の松尾芭蕉が訪れたと言われている

がーん 福浦橋通行止め

赤い橋・・ 渡れません!!

一気に疲れる 後ろに見えているのは五大堂

五大堂のプチ赤い橋なら渡れるかと思いきや

こ、こわい 落ちそう・・
これは透かし橋という橋で、すぐ真下に海が見えてる 
板が雪と雨で滑るのなんの・・ 高所恐怖症には恐ろしすぎる

橋の手前の祠だけお参りして帰ろうとすると、運良く旅行者の団体が来た
彼らの後について、やっと透かし橋を渡る


渡ったぞ~! 五大堂からの景色

おお、あっという間にレンズが雪まみれに・・

む~ 景色は綺麗だけど、レンズが限界か・・

福浦島と福浦橋が見える あっちも渡りたかった(次回)

五大堂は松島を代表する建築物

坂上田村麻呂が東征の際に毘沙門堂を作ったのが始まり
って、また坂上田村麻呂か・・ 八幡平の記憶再び


 す、すごい。渡れた。当たり前に渡れた。(かなり怖かったけど)
 伊達正宗の援軍さながらのおじちゃんおばちゃんに大感謝である。一人だったら渡れなかった。絶対諦めて帰っていた。

 私は感動を覚えながら、五大堂からの景色を眺める。雪の松島がそこには広がっていた。

 ところで、五大堂は坂上田村麻呂が東征の際に作ったのだそうだ。東北旅行の際に登った八幡平の由縁と同じである。またか。一瞬げっそりする。(田村麻呂の蝦夷征討が好きではないのだ) この方は自然の景色に神を見るのがとても上手な方である。びびっと感じると、すぐにその場所に寺や神社を建てるのだ。当時は寺や神社など建てなくても自然崇拝が浸透していただろうから、もしかしたら横取り的な徴の意味合いもあったのだろうか。(その辺りもう少し調べてみたいところである)


 五大堂を念入りにお参りして、濡れて冷えた足を引きずって、「松島海岸駅」にたどり着けば、さて、石ノ森先生の萬画列車が立ち往生している。

 私はそれが天候のためだと一瞬気が付かず、009やロボコンの模様の電車を見れたことに喜びを覚えてしまったのだが。いや、よくよく見れば、多くの数の人々が電車に乗ったまま(発車を待ちわびて)困っていたようである。
 彼らを尻目に、石巻へ向かう私は運よく僅か数分後に発車するミヤコ―バス(宮城交通のバス)を捕まえて。暖房の効いたシートに深く座って、雪の松島の、その海岸の道沿いに続く松の並びを、余韻のごとく眺めているのだ。



松島海岸はロボコンや009が描かれた萬画電車が止まっていた

ミヤコーバスに乗り込んで また来るね松島

無事発車する 良かった戻れそう

石巻直通かと思っていたら矢本でバスが止まってしまった
ここからは仙石線で石巻に帰る

矢本は東松原市なのか S先輩の因縁か

矢本駅前のカメラ屋さんで これは?? 石に模様が

猫の絵と迷ってから、カメラの絵のキーホルダーを購入

店のご主人が作ったのだそう
古いカメラもいろいろあります

町の写真屋さんという感じ
何とはなしに、今日はそんな素朴な店が愛おしく感じる



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