夢路のドライブ 北海道旅行編⑤ ~白水沢の森と地熱発電~



【問い合わせ】層雲峡観光協会会長西〇目様
2013年9月6日 23:33

社団法人 層雲峡観光協会
会長 西〇目信雄 様

用件のみにて失礼いたします。
神奈川県に住む〇山と申します。
上川町層雲峡温泉白水沢地区等地熱研究協議会の
配布資料を読ませていただきました。
環境アセスメントの観点から鑑みて、白沢地区等の地熱発電開発に懸念を感じております。
通産省が作成した資料の「環境影響評価」によれば、
温泉事業への影響は「操業時」と「補充井掘削時」と明確に記されており、(滝上発電所例)
もしも地熱発電が実現されたら、半永久的に、温泉事業への影響が止むことはない、
と考えられます。
また、丸紅の調査と開発の対象地域は、中心が大雪山国立公園の特別地域であり、
環境影響と、それから景観の問題等を含めて、
将来的に、層雲峡の観光業に大きな打撃があることが容易に予測できます。
その辺りをどうお考えなのか、お話を聞かせていただきたく存じますが、
ご検討いただけませんでしょうか。
当方、北海道の大地が今と変わらずいつまでも、大勢から愛される地であることを望んでいます。
また、9月12日から15日まで北海道旅行の予定です。
(大雪山 旭岳~黒岳 を巡るつもりです)
13日か14日の、夕方以降でしたら、観光協会に伺えると存じます。 30分程度で構いません。会長様、もしくは、上川町層雲峡温泉白水沢地区等地熱研究協議会の
ご担当者様にご面会させて頂ければ大変ありがたく存じます。
ご多忙中のところ申し訳ございませんが、ご検討の程どうぞよろしくお願いいたします。


✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩


【意見と相談のご依頼】国立公園・保全整備課様
2013年9月6日 22:31

北海道地方環境事務所 国立公園・保全整備課
ご担当者様

用件のみにて失礼いたします。
神奈川県に住む〇
山と申します。
上川町層雲峡温泉白水沢地区等地熱研究協議会の
第3回会議の配布資料を読ませていただきました。
内容を鑑みて、白沢地区等の地熱発電開発に懸念を感じております。
また、環境省の規制緩和により、開発工事の届出が不要になると聞いており、
こちらも疑問を感じております。
近々、北海道旅行に行く機会がありますが、その際にお話を伺うことはできませんでしょうか。
資料にありました地熱発電の問題点につきまして、教えていただきたいと思っています。
9月12日(木)の11時半~14時の間で、30分程お時間いただけると大変ありがたく存じます。
ご多忙中のところお手数お掛けいたしますが、どうぞご検討の程、よろしくお願いいたします。




白水沢遡行地図



 北海道に旅立つ前に、面会申込みのMAILを2通送った。北海道地方環境事務所と層雲峡観光協会宛である。面会は実現はしなかったが、返事は来た。

 丸紅に対抗できる、唯一反対勢力になれる組織があるとしたら、北海道地方環境事務所と層雲峡観光協会だと思っていた。なので、面会できなかったことはやはり残念だが、届いた返事を何度も読み返して、また返事を送って、次の機会(もしくは段階)へ繋がっていくことを今は信じるしかない。もしくは、こちらの思いが届くことを。
 

 9月14日、朝4時半起床。5時半、旭川市のホテルを出発、上川町へとコルトを走らせる。この上川町までの行きの行程で、北海道旅行で唯一高速道路に乗った。前日の嘉助老人に教えてもらったのである。旭川から層雲峡に行くならば、現在試用運営中の無料の高速道路、愛別上川道路を使うといいということを。
 時間短縮のため利用したが、濡れた道路を100キロ越えで走り続けていたらもう十分満足してしまった。集中力が半端じゃない。トンネルでは中央分離帯のポールコーンをサンドバック、もしくは高速起き上りこぼし状態にキックしてしまったほどである。いくら早くても無料でも帰りは乗る気にならなかった。
 


5時半頃、旭川を出発 あいにくの雨 

時間短縮のため、試験運用中の高速道路、愛別上川道路に乗って
上川町駅付近に到着(高速は行きだけで十分満足・・)


山が煙っている 層雲峡が近づいてきた

柱状節理の断崖が見えてきた!ついに層雲峡だ
工事の作業員らしき人々が気になる

一時的に雨が止んで青空が

右手は石狩川 断崖絶壁の景色が続く

妙な雲?

白水川を通り越してしまいウロウロする

立ち入り規制中の白水沢林道
立ち入り禁止のロープが張ってある

白水川が合流する石狩川

どうしようかな

鹿注意 白水 の標識に感動 ついに来た

石狩川上流の流れをもう一度確認
今日は水量多いか?早いか?など・・

コルトを置いて現地確認

林道に入って森に聞いてみる

全然元気そう

白水川の流れは?

微妙・・

やっぱり行くことに決める


コルトを置いて 白水沢出合前に駐車スペース有り

出発



 白水沢の出合を通り過ぎてしまい、グーグルマップを見ながら国道39号をまた戻った。7時過ぎ頃、ようやく起点の白水橋を見つける。道路規制のロープのまん前にコルトを頭から突っ込んで、ストップ。しばし考える。本当に行っていいものか。やめるなら今である。
 脳裏に北海道のガーデンが浮かんできた。ガーデン街道チケットをまだ使っていない。あの7つのガーデンの他に、今年7月にオープンしたばかりの上川町の大森雪のガーデンにも行ってみたいと思っていた。
 大森雪のガーデンは大雪山連邦とニセイカウシュッペの森に囲まれた、広大な田園が広がる北海道の隠れた名所だそうである。(層雲峡観光協会HPの写真がまた素晴らしくいいのだった)ここまで来たのだから行ってみたい。ゆっくり美しいガーデンを巡るのもいいではないか。
 そういう誰もが認める観光名所に大手を振って行くという選択肢もあるわけだ。なぜ白水沢を登らなくてはいけなかったか。

 初めは層雲峡白水沢地区の地熱発電開発に反発していたからである。
 上川町にとって白水沢地区の地熱発電事業は悲願である。昭和40年代、地熱発電の開発を目的として水蒸気井を掘削したが、対象の白水沢地区が国立公園の特別区域に指定されていたため、開発を断念した。昭和47年、当時の通産省(現・経産省)と環境省の間で「既設の発電所を除き、国立公園内に新たな地熱発電所を建設しない」ことを約する覚書が交わされたため、発電所の新設が認められなかったのだ。しかし、2008年頃から日本政府は方針を転換する。経産省は地熱発電に関する研究会を発足、2011年に入ると環境省も地熱発電開発の障害となっている2つの課題、「国定・国立公園に関わる規制」と「温泉施設に対する影響評価」の見直しを始めた。また、東日本大震災により、原発に変わる(再生)エネルギーの必要性が生じたため、発電所新設を禁じた「覚書」の規制緩和も進んでいる。
 なお、日本における地熱発電の発電量はおよそ530MW、他の総発電量の僅か0.2%に過ぎない。が、日本の地熱発電の技術は高く、富士電機、東芝、三菱重工の日本企業3社が世界の地熱発電の設備容量の70%のプラントを提供している。(2010年時点)

 それで、私はこう考えているのである。「東日本大震災により、安定供給できるエネルギーが足りなくなった。だから地熱発電開発の必要性が高まった。」というのは、インチキではないか。地熱発電は2010年時点で、0.2%の発電量であり、エネルギーとしては微量で不安定で開発コストもかかりすぎる。無駄だということで、2010年には事業仕分けの対象にされた経緯もある。だというのに、その僅か1年後、経産省と環境省と農林水産省は手を組んで、規制を緩和し、省をあげての地熱発電推進を始めている。どうもおかしい。東日本大震災により足りなくなったのはエネルギーではなくて、依存先なのではないだろうか。いや、受注先というべきか? 
 行き詰まっていた原発事業がついに、本格的にヤバイと露呈した。もう進めなくなった。だからこの国の電力政策を含めて、民族大移動の鞍替えが始まった。地熱発電の必要性もその一つでしかない。
 日系企業の技術を、丸紅が売り込む。それを日本政府が後押しする。秋の臨時国会で政府は電気事業法の改正案を再提出することを決めたばかりである。計画によれば2016年より電力の小売価が全面的に自由化し、2018年より発送電は分離される。新規参入事業者が現れて競争が進めば、国民に安い電力を供給できるはずだという触れ込みだが、現在は既存の電力会社や都市ガス会社並みのコストでエネルギーを調達できる新規事業者が国内に存在するのか危ぶまれている。
 丸紅はそのグローバルな競争に参入しようとしている。(この国は東電崩壊とTPP参加とともに、エネルギーの自給自足の道を諦めつつあるのかもしれない)

『現在当社は 「新電力 (PPS : Power Producer & Supplier) 」 事業者として、新規電源の建設及び余剰電力を確保すると共に、東京・中部・中国 電力管内にて、スーパー・オフィスビル・官公庁施設等との 1,000件以上の契約を通じ 600MW規模 (2013年3月31日現在) の電力小売事業を 展開中で、更に拡大中です。 』(丸紅電力総括部の資料より)

 丸紅の電力・インフラ部門は全世界における発、送、変電所の建設プロジェクトを進めており、現在海外で契約履行中の案件は既に30件に及んでいる。2013年4月時点で、全世界発電容量は29,597MW、国内発電容量は65MWである。そのうち、600MWを、現在官公庁施設等に売っているのである。政府が進める発送電分離の2018年には、市場規模7兆円の全電力量の37%(丸紅の2016年の小売実績予測)を遥かに超える電力を海外から集めてきそうな勢いではあるわけだ。
 発送電分離は、電力危機に対して非常に弱いシステムであるという。今でこそ、山地が多い日本の国土事情にとって、エネルギー安全保障の弱体化を招くと危惧されているものの、将来的にはわからない。誰もが好きなエネルギーを買い、もしくは自分でエネルギーを自給自足する時代が来るかも知れない。
 白水沢地区の地熱発電開発は、その過程の試作であり、参入直前のパイプ作り、もしくは強化のためであり、ただの口汚しに過ぎないのではないか。
 原発利権に変わる利権の構造が誕生しつつあるのだと考えてもそう不思議な話ではない。


 話を戻すと、上川町である。平成24年、規制緩和を受けて、丸紅がこの事業に参戦した。上川町は悲願を達成するべく「上川町層雲峡温泉白水沢地区等地熱発電研究協議会」を発足する。環境庁、通産省、農林水産省は平成25年4月に地熱発電シンポジウムを開催。新聞広告を掲載して、知事や議員や有識者を巻き込んで、北海道の地熱発電を大々的に後押しし始めた。地熱発電は環境に優しいという触れ込みである。原発に比べれば、確かに大義名分は存在すると思うが・・しかし・・

 地熱発電所は自然の景観を著しく損傷する。水蒸気井(生産井)や冷却塔の風下に当たる木々は枯死するという実例が報告されている。また、地熱発電は操業後も継続的な坑井の再掘削が必要であり、その都度、新たな敷地の造成が必要である。(イコール自然の景観を損傷する面積が増え続ける)
 原発に比べればそれくらい・・というのだろうか。今回の開発は、昭和の開発時代の続きではない、「白水沢地区等」と謳っているとおり、白水沢地区以外も対象に含まれているのである。国立公園の中核である特別保護地区をも・・

 原発がイケイケのときは規制を作り、怪しくなれば規制を緩和し、原発で自然を破壊しまくっているくせに、そのツケも取れないうちから、また自然を犠牲にすることを考えている。私地熱発電への反発はここから来ているのである。
 そのお前たちが伐採する木々でエネルギーを作ったらいいではないか。オーストリアの木材のペレットを知らないのか。なんてアホらしいのだ。金にならないからやらないのか。利権がないとやらないのか。

 反発の次に、怒りである。上川中部森林管理署には入林許可をもらえなかった。入林許可証を申請したら、ご丁寧にも電話があって、こう言うのだ。

 「白水沢には林道などありません。あそこは作業道です」

 ひどいものだと思ったからである。おそらく新設の発電所は林道辺りに建つのだろう。もしくはもうすこし上(山の中腹)だとしても、「作業道」として辺りは伐採、舗装されてしまうことだろう。白水沢の自然は、今死刑台の上に立たされているのだった。(彼らこそが私たちを救うエネルギー資源となるというのに)

 私は白水沢地区の自然を見たくて、ウズウズしていたのだ。
 初めは反発、次に怒り、そして昨日までは、もう行かなくてはいけない、絶対会いたい、に変わっていたのだった。
 しかし、立ち入り禁止である。今日の天気は雨である。私は沢登りなどしたことがない。近くには美しいガーデンがある。行かないという選択肢もある。
 本当に?

 しばらく考えた末、森に聞いてみることにした。おかしな考えだが、ふと今なら、何かを伝えてくれるような気がしたのである。私はその場にコルトを置いて、進んでいった。カメラを持って、白水橋を渡り、林道に足を踏み入れた。



白水川沿いを歩く
車が来てギョッとする 
運転手は私を見ずに気がつかなかったふりをする

橋があった まだどんどん行く

雨が激しく降ってきた

 
 白水沢の林道の木々たちは、「死刑台の上に立たされている」と私に同情されているにもかかわらず、まったく元気そうだった。相変わらず、私ごときに何も訴えることはないというようなよそよそしさすら感じる。私は胸をなでおろした。このまま大森雪のガーデンに行ってしまっても、おそらく彼らは痛くも痒くもないだろう。損をするのは、私のほうだ。彼らは、私に元気を与えてくれそうな、輝きとエネルギーとに満ち溢れていた。それから穏やかさに。もしその懐に飛び込んだなら。こちらを包み込み、丸ごと癒してくれそうな生命力に。
 心配して飛んできた私だったが、これでは彼らが私を心配して待っていてくれたようではないか。私は神奈川の僻地からわざわざ彼らに励まされに来たようだった。豊かな緑を見回す。林道のはじめこそ木々は細く貧弱だったが、歩けば歩くほど、美しい森に転じていく。フェイスブックに写真を投稿したら、こんなコメントがついた。「トトロの森だ!」。まさに物語のような森だ。隣を流れる沢の音も高く心地よかった。
 一つだけ痛ましい点があるとしたら、林道の道にくっきり刻まれた車の車輪の跡だろうか。普通の山の森ならばこんなハッキリと車の跡はつかないものだ。もっと草や落ち葉に覆われているものである。もしくは、人の足跡に。
 真暗な帰り道、私はこの林道に車の幻を何度も見た。林道に車が連なり止まっているのである。駐車場やガソリンスタンドのように。道を誤ったか。驚き、怯えて、恐る恐る近づくと、ぼやりと浮かび上がっていた車の影はただの木々や草葉の塊だった。道に刻み込まれた両輪の跡がよほど印象的だったようである。(私は虫や草を踏まないように左側の車輪の跡を歩き続けていたのである)

 私はコルトに戻って、白水沢橋の真ん前に突っ込んだ車体をバックさせた。そのままUターンして、林道手前の駐車スペースに止める。黙々と沢登りの準備を始めた。
 どれ、行ってみよう。何もしてあげられそうにないけれど、パワーや生命力を逆に与えてくれそうなあの森を歩いてみよう。幸い雨も止んでいる。

 ストック、雨ガッパ、フルジップジャケット、カメラのレインカバー、グローブ、渓流登り用シューズ、靴下、カラビナ、スリング、ライト、コンパス、地図、救急用薬品に沢を上がった際の着替えを少々、昨夜大雪旭岳源水公園でもらってきた大雪山の源水1リットル、それから行動食とキャラメル。
 それらは私に与えられたアイテム ーゲームで言うところの、大切なアイテム、もしくは武器であるかもしれないー を持ち、ナバリノのザックに入れて、また森へ戻った。

 渓流沿いの林道を歩き始めた。ゴキゲンで進んでいくと、10分も経たないうちに、後ろから車の近付く音が聞こえた。ぎょっとした。隠れるところもないので、知らんふりして歩き続ける。これが森林管理署だったら強制的に追い出されてしまうだろう。
 車は何事もなかったように通り過ぎ、すぐに森に隠された。通り過ぎる瞬間に車を盗み見る。男の人がまっすぐ前を見て運転していた。不思議なことに、相手も知らんふりをしているのである。これだけ傍を通り過ぎているのだから、規制中の林道に妙な登山者(上下雨カッパ姿である)がいることに気が付かないはずはない。なのに、こちらを見向きもしない。人がいることに気が付いたらヤバイのだな、という想像をした。きっとややこしいことになるのだ。あの男の人は森林管理署の巡回ではないらしい。いや、もしかしたら観光者かも知れない。私のように白水沢を登りに来たのではないか。だから、妙な登山者がいても同類なので、驚きもしない。規制を破っている者同士、お互いそっとしておきましょうね、ということなのかもしれない。

 そんなことを考えているうちに2台目の車が通り過ぎる。3台目の車が通り過ぎる。同類の登山者にしては連続し過ぎるようだ。白水沢がそんなに人気のある渓流登りのコースだとも思えない。思い切って3台目の車の中の人物を覗き見た。どんな格好をしているのか?登山者のそれか?

 すると、それは作業着だった。薄いベージュかグリーンのような作業着の上下を着て、メガネをかけた年配の男の人が乗っていたのである。

 丸紅だ。地熱発電の調査に来たのだ。一瞬のうちに悟った。



山肌を撮ったら雨のせいか不思議な光が入ってしまった

大きな傘のような葉の横を歩いていく

林道途中で大雨に降られたが、林道が終わる頃には
雨も落ち着いてきた



林道終点の駐車スペースに
さっき追い越していった3台の車を発見

入林許可証だ (私がもらえなかった例のやつ)

ズームしてみる

丸紅国内インフラ部門のかの国内電力プロジェクト部ではないか

こちらは洸陽電機の入林許可証
「上川地域の地熱資源調査を実施しています」と書かれている

そろそろ入渓ポイント傍のメロンの滝のはずだが・・これがそう?

駐車場を通り越してまた進む

白い蝶がひらひら飛んでいく
カメラを向けると逃げてしまう


この山肌は?
突然道が細くなった

橋が現れる

蝶が2頭止まっているのだが、広角なのでうまく撮れず・・




メロンの滝キターー!


そういえばメロンっぽい?


先に見えている堰堤が林道の終点

林道終点から渓流に向かうところ

靴を変えて準備をする 入渓前から既に雨でずぶ濡れ

わたくし、白水川に立つ


 林道の中くらいまで来たところで突然雨の降りが激しくなった。カメラをレインケースに入れてザックにレインカバーを付けて、雨合羽をのフードを深くかぶって歩いていく。
 歩きと雨合羽で暑くなったので、お気に入りのパタゴニアのフルジップジャケットを脱いで腰に巻いた。これが後で私に痛ましい思いをさせるのである。(大げさだが・・)あの時脱がなければよかった。もしくは、ザックの中に入れるのだった。今でも後悔している重大な過ちなのである。
 
 その話はまた話すとして、林道も終点近くなったところで、さっき通り過ぎた車が3台止まっているではないか。フロントガラスに入林許可証が見えるように置かれていた。覗き込んでよく見ると、後ろの白っぽい車は、丸紅・国内電力事業プロジェクト部が申請しているものだった。前の黒い車は洸陽電機というエネルギー関連の企業である。

 困った。この先でまた出くわしてしまうかもしれない。私は彼らが調査用の施設を、昭和時代の水蒸気井の跡地に持ち、そこに籠ってくれることを願った。あの煙の湧き上がる場所辺りに・・

 水蒸気井を通過することができれば(恐らくその辺りにいそうだ)、どうにかなるだろう。水蒸気井の煙を超えたら、程なくして大滝に突き当たる。白水沢唯一の、30m程の滝である。
 沢は上に行くほど水量が減るので、大滝まで辿り着けば、あとは源頭までの2時間の道のり、スノーブリッジや雪渓があるとしても、緩やかな細い沢道はそう難しくはないはずだ。大滝に行くことさえできれば、私の白水沢遡行は成功したも同然だった。

 どうにか、大滝まで。
 このしばらく先、支流に入ってますます行き詰った私は、大滝と合流することだけを夢見て進むのだった。どうにか、大滝まで。そこにさえ行ければ。
 しかし、大滝はなかなかその姿を見せてはくれなかったのだけれど。



入渓直後の白水沢。
このへんは穏やかでいいね~ずっとこうだといいね~

ん?

ちょっと激しくなってきた

腰まで浸かりそうだ・・

昭和の地熱発電開発時代の遺跡を発見

激流が怖いので端の岩場を行く

でかい岩も登っていく

高いところを巻いてみた

ストックと両足と4本のうち3点を支点として、
残り1本を慎重に動かして進む



源頭はまだまだ遠い

なんかすごい砕けた石が?

犯人はここ 沢の側面の頭上を見上げる


渓流の右側を巻き中 足跡を発見する

どんどん登っていく

煙が見えた 水蒸気井だ!
と思ったら

前に丸紅を発見 相手に気付かれて笛を吹かれる

支流へと逃げる

藪の先に

あった

ここから登ってみよう


行き詰った


また昭和時代の遺物が


藪漕ぎしながら支流を登り続ける



暗い所もあり・・



水蒸気の真横あたり






水量が減ってしまった

見えなくなった支流を必死で探す
気が付くと泥まみれだった
アイテムは、ストックが折れ、お気に入りのパタゴニアが戦死

 

 水蒸気井跡の煙が立ち昇る様が見えた。沢の音よりも高く、響いているのだ。ごうごうと地下から沸騰した蒸気が湧き上がる音が。特に真横を通ったときは、ひどいものだった。
 私は白水沢を楽しく登っている最中に、前方に丸紅と下請け企業の作業員を発見してしまったのである。彼らは私に気が付いて、高く笛を鳴らした。先ほどは気が付かぬふりをしたくせに、まさかここまで来るとは思わなかったのだろうか。
 私は避けて、しばらく待った後、また前方の様子を見た。また相手に見られてしまった。笛の根が高く鳴り響いた。それで、Uターンして沢を降り、つい5分ほど前に見かけていた支流へと向かった。どうしたら、登れるだろうか、と考えたのである。支流に避けて、そこから登ろうと思ったのである。もしかしたら支流から大滝に戻ることはできないかもしれない。でも、前日、大雪山の広い頂を見たばかりである。支流はそのどこかに必ず繋がっているはずである。そう思って、細い渓流を這うように進み始めた。
 水蒸気のごう音と煙の横を過ぎて、これでもう彼らと会うことはない、と思った時、細い支流の流れが消えてしまったのである。左右に僅かながらに水の流れはある。けれどまるで源頭のように、もう沢の体をなしてはいなかった。
 私は固まった。どうすればいいのだ。いや、大丈夫だ。大滝と山頂の方向を確認した。道が見えなくても、方角さえ合っていれば辿り着けるはずだ。
 藪の中を必死で進んでいくのだった。



 その⑥に続く。




☆参考文献☆

地熱発電
だまされるエネルギー2地熱発電はどうだろうか?
平成24年上川町層雲峡温泉白川地区等地熱研究協議会
国立・国定公園における発電事業の概要
電力・インフラ部門(丸紅株式会社電力インフラ総括部)
『TPP亡国論』著者・中野剛志が緊急提言!【後編】発送電分離はありえない 里山資本主義 革命はここから始まる
実録福島沖巨大風車プロジェクト


コメント

人気の投稿